A∩C:デジタルで建設をDXする[066]

 東急建設と野原ホールディングスでは、東急建設の「増築工事におけるBIM モデル活用による生産性向上の検証」において、施工 BIM データからのデジタルツイン活用・連携による乾式壁に関わる建材の精密プレカット施工とその効果実証を共同実施し、成果を公表した。背景には建設業においても施工現場での一層の生産性向上と共に、積極的なCO2削減、脱炭素化が求められている時代の趨勢がある。

国交省の令和3年 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業に採択

 検証作業は、21年6月から22年3月にかけて港区の東急虎ノ門ビル増築工事作業所(全10階:事業主:東急リアル・エステート投資法人) において実施され、精密プレカット施工の実証については 4・5・8 階を対象とした。
 「乾式壁に関わる BIM プレカット施工による現場の生産性向上及び廃棄物・CO2 削減、現場加工削減等による騒音・労働災害(事故)等の防止効果の検証と目的を明示している。
 検証事業は国土交通省「令和3年度 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(パートナー事業者型)」に採択されている。

従来施工とBIMプレカット施工の廃材量・CO2 排出量+施工数量・工数などの比較検証

 検証作業において東急建設は、検証事業全体の計画・管理・構造設備を統合した施工 BIM モデルの作成を担当した。野原ホールディングスは、精密プレカットBIMモデルの作成と生産・施工現場での活用[軽量鉄骨(LGS)※乾式壁下地材及び石膏ボードのプレカット・各施工フロアへの納材を含む]を担当し、精密プレカットBIMモデルを使ったデジタルツインでの出来高管理も行っている。
 検証内容については、従来施工(2・3・7階)とBIMプレカット施工(4・5・8階)の施工生産性、現場での廃材量・CO2 排出量、安全性の比較に始まり、精密プレカットBIMモデルによる精算数量・工数と施工段階の数量・工数の比較にまで及んでいる。合わせて工場でのプレカットから現場施工に至るワークフロー改革と課題抽出についても検証を行った。
※LGS:Light Gauge Steel:ライト(軽い)ゲージ(規格))スチール(鉄骨)の略。

プレカット施工で作業時間が30〜50%減少+現場廃材量(CO 2重量%)では4.6%削減を実現

 検証結果については従来施工との定量的な比較値を公表している。
 プレカット施工によってLGS の組込や石膏ボードの貼り作業時間が30〜50%減少し、現場施工の効率化を確認しており、BIM の習熟度向上とサプライチェーンの工夫次第では更なる生産性向上が期待できるとの結論を得ている。
 プレカットBIMモデルを採用したことで建材数量を正確に把握でき、適切な数量の建材発注によって削減効果を確認した。具体的には、BIM プレカット施工階と従来施工の比較で発注数量に対する現場廃材量(CO2重量%)において4.6%の削減を実現している。加えてLGS・石膏ボードのプレカット施工によって現場での高速カッター使用回数を4割削減した結果、騒音の未発生、高速カッター・工作用カッターの誤操作による裂傷事故削減などの労働災害の防止効果を確認している。
 今後の展開では、BIM活用を積極的に進める東急建設と内装業界を出自としてBIM を軸に建設DX事業を推進する野原ホールディングスは、共同実証を継続、東急建設が掲げる 3 つの提供価値「脱炭素」「廃 棄物ゼロ」「防災・減災」に向けた取り組みを更に加速化させると共に、野原ホールディングスが立ち上げたBIM設計-生産-施工支援プラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」による建設産業の課題解決を推進していく。

図キャプション
東急建設と野原ホールディングスの協業イメージ

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