A∩C:デジタルで建設をDXする[052]

 高砂熱学工業と米国Autodesk は、建設設備業界の標準化を展望する新しいBIMシステム構築に向けて戦略的提携に関する覚書(MOU)を締結した。設備企業とAutodesk との提携は国内初となる。

BIM の豊富な知見を持つAutodeskと高砂熱学がDX 戦略で提携し業務プロセスの変革推進

 「BIMの課題と可能性121〜3」で建設業界の中ではBIM化が進んでいた設備サブコンとして高砂熱学を取材し、設備BIMの現況を報告したのは16年7月だ。7年を経て、本丸である建設業のDXへとウィングを広げるに至った高砂熱学の現在地を報告する。。
 建設業界においては、労働人口減少や24年度からの時間外労働上限規制適用への対応が急務だ。グローバルな環境意識の高まりから環境に配慮した建物の需要が高まっている。それらの課題に対応するべく高砂熱学では、23年に迎える創立100周年の節目となる中期経営計画(21~23年)において基盤事業のDX 化に取り組んでいる。次の 100 年に向けた新しい社会的価値の創出に向け21年12月にはDX 戦略を策定している。
 DX 戦略の実現には建設業界において設備 BIMへの普及が必須だ。世界的な BIM の普及・活用の知見を持つAutodesk と空調設備業界で豊富な実績を持つ高砂熱学が提携し、DX 戦略の中心に Autodesk のBIM ソフト「Revit」を位置づけ、業務プロセスの変革に取り組んでいく。

施工計画のフロントローディングとオフサイト化を連携し現場の負荷軽減・省資源を推進

 DXの重要施策としてBIMを位置づけ、建物データの利活用を推進する。具体的には、Autodeskがサポートする建設業の主要企業約 105 社が参加するRevit User Group(RUG)の活動とも連携し、建設業界全体の標準化に協力する。特に設備工事におけるBIMデータの標準化に率先して取り組む。
 持続可能な社会の実現に向けてデジタル技術を活用した生産性向上・脱炭素化を推進する。
クラウドプラットフォームの全社導入を行う。※1Autodesk BIM 360のクラウドプラットフォーム※2Autodesk Forge、BIツール等を活用し、データ集約・業務の見える化を行い、データドリブン経営を推進すると共に自動化による業務の効率化、品質の向上を促進する。合わせて情報連携を通じて人財成長を促す仕組みを作り、現場の負荷軽減とエンゲージメント向上に繋げる。
 フロントローディングと施工オフサイト化を実現する。BIM による施工計画のフロントローディングと高砂熱学のプラットフォーム※3T-Baseによる施工のオフサイト化を連携し、現場の負荷軽減、省資源を推進する。
環境クリエイターとしての取り組みを推進する。Autodeskが持つ先進的な海外の事例・技術に関する情報を参考にしながら、顧客の脱炭素化支援を目指して高次元の設備運用を行う。高砂熱学が取り組む環境配慮型不動産ブランド※4HEREにおいてもBIM を活用し、新しい価値を創出する建物のあり方を追求する。
 グローバル戦略を意識した国際事業の強化・推進を行う。国際事業の強化については、Revitと海外でニーズが高い脱炭素化技術を組み合わせることで国際事業の強化に繋げる。
 海外現地法人との連携強化については、グローバルで多くの建築実務者に利用されるRevitを基盤に海外現地法人との連携を図る。
※1Autodesk BIM 360:建設業向けプロジェクト管理のクラウドサービス。
※2Autodesk Forge: 個別のWebサービス API を集約したクラウド開発プラットフォーム。
※3 T-Base: 施工プロセスの変革に向け、これまでの現場における一品生産からオフサイト生産体制へ移行する等の役割を持ったプラットフォーム。
※4HERE高砂熱学グループが展開する不動産ブランドの名称。

図キャプション
オートデスク代表取締役社長織田浩義氏(左)と高砂熱学工業代表取締役社長COO小島和氏(右)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?