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年始に見た映画に出てきた幸田文さんの「木」という本を読んでいる。
と言っても、まだ始まりを少し読みかけたところで、いきなり2つ目の「藤」という随筆にいたく感動した。

ネタバレになるので内容は書かないけど、わたしも父に「これはじゅんこちゃんの木だよ」と、庭に伽羅木の木を植えてもらったことを思い出した。
もしかしたら、木が好きだった父がたまたま格好の良い伽羅木を見つけて植えただけなのかもしれない。それでもなんでも、これはおまえの木だよ、と言われて嬉しかった。

そんなに広くはない庭に小さな川を作るからと山に石を拾いに行ったり、芝生を植えて芝刈りをしたり、草むしりや剪定を季節ごとにしたり、子供の頃から庭のことをよく手伝わされた。
それが良くなかったのか中学生になるまでには、絶対にマンションに住みたいと思うようになった。

しかし、結果的にこの年齢になるまで二階以上高いところに住んだことがない。
なんとなく土が近くないと落ち着かないし、木が見えないところに住んだことがない。
今は屋根より高い木が育つ庭がある家に住んでいる。

それは、なんとなく父が大事にしていることを受け継いでいるように感じるのだけど、それが何なのかわからないままだった。
そして、その答えは幸田文さんの「藤」の中にあったように思う。

父にこの話をしたら、「それは7対3でじゅんこちゃんの感性よ」と言われた。
同じ兄妹でもマンションに住んでいる兄姉がいる。みんな同じことをさせてきたけど同じようには育っていないから、お父さんの影響があるとしたら3割程度よ、と。

古いものが好きで骨董品とは名ばかりのガラクタばかり買ってきたけど、父にこの築50年の庭付きの家だけは褒められた。
それは高い買い物だったけど。

オトナになっていろいろなことを回収している最中だ。それは、突然宝物のように現れて記憶を呼び起こし心を温めてくれる。
わたしもこどもたちに蒔いた種がいつか育ってくれることを、期待はしていないけど楽しみに年老いていきたい。







#木
#幸田文
#伽羅木


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