健康情報を使いこなすためのヘルスリテラシー続編
ヘルスリテラシー記事第1弾の振り返り
ヘルスリテラシーとは、健康情報を獲得し、正しく活用するスキルであり健康を維持・促進する能力のことでした(参考文献・参考資料①)。
本記事では、前回ご紹介した基本的な読み書き能力である機能的ヘルスリテラシーを基盤に、より高いスキルである伝達的・批判的ヘルスリテラシーについて分かりやすくご紹介します。
また、ウィズコロナ時代における信頼できる医療情報の集め方についてもご参考になれば幸いです。
伝達的・批判的ヘルスリテラシーとウィズコロナ
伝達的ヘルスリテラシーは、さまざまな形のコミュニケーション(例:メディア、専門家)から情報を抽出して、状況に情報を適用するためのスキルとされています。
批判的ヘルスリテラシーは、情報を批判的に分析・利用して生活上の出来事をコントロールするためのスキルとされています。
この2つのスキルは健康を維持するために重要であると考えられており、研究が進められています。
例えば、わが国における1度目の緊急事態宣言中において、伝達的ヘルスリテラシーが高い高齢者は、そうではない高齢者に比べて運動を実施している方が多かったことが明らかになっています(参考文献・参考資料②)。
これは、新型コロナウイルス感染症に罹患する危険と運動を実施する利益を様々な情報を利活用する中で運動を実施することを選択していたと考えられます。
ウィズコロナにおける正しい健康情報
正しい健康情報を収集し、利活用するためには量と質いずれにもこだわらなければいけないかもしれません。
新型コロナウイルス感染症に関わらず、科学的に全く根拠のない健康情報は多く存在しています。
根拠のない情報に騙されないためには、行政や学術団体が公的に発信している情報や本サイトのように複数の専門家が協議した上で発信している「質の高い」情報に「多く」触れることが対策として挙げられます。
この「多く」が重要です。
その理由は、新型コロナウイルス感染症に関する学術論文としてNew England Journal of Medicineという医学系最高峰の雑誌に掲載された論文に不正があり、掲載を撤回されたという事件があったからです(参考文献・参考資料③)。
この出来事は、医療業界に衝撃を与えたとともに単一の情報だけで判断することが危険なことであると再認識させてくれました。
さて、新型コロナウイルスワクチンの安全性や有効性はどうでしょうか。
現在、世界各国で新型コロナウイルスワクチンの接種が開始されています。その中でもイスラエルはかなり先行しており、質の高い結果を報告しています(参考文献・参考資料④)。
イスラエルにて2回接種が終了した約60万人を解析し、接種していない60万人に比べ発症率が90%以上低下していたことが報告されています。
また、日本感染症学会では、分かりやすく新型コロナウイルスワクチンに関する情報を「提言」として定期的にアップデートしながら公開しています(参考文献・参考資料⑤)。
日本人を対象とした研究はまだ十分とは言えませんが、順天堂大学を中心とした医療従事者の先行接種の結果が順次公開されています。(参考文献・参考資料⑥)
これらの情報をもとに皆さんも慎重に判断してください。日本がワクチン後発国なのは、ヘルスリテラシーが先進国の中で低いことが原因かもしれません(参考文献・参考資料⑦)。
最後になりますが、厚生労働省が運営している「eJIM」というサイトにもヘルスリテラシーに関する記載がございますので、そちらも併せてご参照していただくと理解が深まるかと思います(参考文献・参考資料⑧)。
【Point 1.】伝達的リテラシーとは、コミュニケーションから情報を抽出し、変化する状況に適応させる能力のこと
【Point 2.】批判的リテラシーとは、情報を批判的に利用することで生活をコントロールする能力のこと
【Point 3.】情報を集める際は、「量と質」どちらにも気を配ることが重要
参考文献・参考資料
1.Nutbeam D. Health literacy as a public health goal: a challenge for contemporary health education and communication strategies into the 21st century. Health Promotion International 2000; 15: 259–67.
2.Shiratsuchi D, et al. Association of Health Literacy with the Implementation of Exercise during the Declaration of COVID-19 State of Emergency among Japanese Community-Dwelling Old-Old Adults. IJERPH 2021; 18: 2100.
3.Mehra MR, et al. Cardiovascular Disease, Drug Therapy, and Mortality in Covid-19. N Engl J Med 2020; 382: e102.
4.Dagan N, et al. BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting. New England Journal of Medicine 2021; 0: null.
5.ワクチン委員会一般社団法人日本感染症学会. COVID-19ワクチンに関する提言(第2版).
6.順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床研究・治験センター. 新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)について
7.Nakayama K, et al. Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy. BMC Public Health 2015; 15: 505.
8.厚生労働省. eJIM.
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