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薔薇色曹達水

 吹く風がふわりとあたたかく、甘やかな花の香気を含む季節。

 紅茶店『マーシュマロウ』で、昨秋から働き始めたマリは、一番下の妹と、硝子でできたドリンクサーバーをテーブルに運ぶ。

 冷やした鉱泉水と氷、それから薔薇の花が踊る、淡いピンクの曹達水。
 注いだグラスにも、ひとひらの花弁が浮かべられ、淡い香りを漂わせていた。

「おじいちゃんの薔薇、今年も綺麗に咲かせたね」
 曹達水の中で揺れる花を眺める妹に声を掛けると、はにかむような笑みが返ってくる。

 この日のために妹が、植物学者だった祖父から受け継いで、丹精して咲かせた特別な薔薇。
 マリはこの春初めて母から、薬草魔女だった祖母の、薔薇シロップのレシピを教えてもらったのだ。

「おばあちゃんの曹達水と同じくらい美味しい」

 グラスを手に、微笑む妹の髪をそっと撫でて、マリも嬉しく笑うのだった。

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