読者感想文(211)ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(上)』(柴田裕之訳)

はじめに

こんばんは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

先日、今年100冊読むという目標を達成しましたが、そこに甘んじず年の瀬までできるかぎりの読書を続けたいと思っています。

今回読んだのは、超有名なビジネス書(?)です。
結構前に買っていたのですが、最近友人が読みたいと言っていて思い出したので読みました。

感想

面白かったです。
色々とあるのですが、一番印象に残っているのは農業革命が人を不幸に導いたという話です。
より楽な暮らしを求めた結果、大きな苦難を呼び込むというところだけを聞けば、資本主義もまさに同じように思います。
いつかこれを根底から覆すものが生まれ、そうして現代も歴史として語られるようになるんだろうなと思います。
資本主義といえば、そういった想像上の秩序が人々を導くという考え方が、森岡毅『苦しかったときの話をしようか』における「本質→構造→現象」という流れと少し違っていて面白いと思いました。
この場合の本質は欲という本能なわけですが、そもそも「本能」とは何なのか、とても難しいです。多くの人は「本能だから」と言われると、そういうものかと思ってしまうのではないでしょうか。
当然、それは何らかの研究に基づいていることが多いのでしょうが、生物学的に言えることなのか、文化学も含めて言えることなのかは大切だと思います。実際、ほんの少し前までは「黒人は白人に比べて劣っている」という研究結果が受け入れられていたのですから。

あと、人間が虚構を信じることが出来るようになったことで、生物的進化の制約を飛び越えられるようになったというのも印象的でした。
基本的に動物の行動が変化する要因が遺伝子の突然変異であるのに対して、人間は神話を変えれば行動を変えられるということです。
これについては、思い当たる節が多すぎるくらい(例えば広告、所得倍増計画、ニュース)ですが、為政者がこれを理解した上で行動していると考えれば、なかなか恐ろしいことです。
逆に、自分にどのような神話を信じさせるか、というのがマインドセットなのだろうと思います。輪ゴムの法則、思考は現実化する等はこれに包含されます。
そういえば、学校で習うことにも信じるに足る確固たる根拠って無いよなぁと昔考えたことがあったことも思い出しました。

あとはロマン主義的消費主義の話、これは経験に価値を置くというものです(例えば海外旅行で価値観を広げる)。
これもそれが良いという一つの神話だとされていました。
私はまさにこれに当てはまるのでギクリとしました。
確かにそのような面も一理あると思うのですが、私はやはり様々なことを知るのは大切ではないかと思います。なぜなら、人が虚構によって遺伝子の制約無しに進化できるなら、その材料を沢山持っている方が良いと思うからです。
しかしそのような主張をするには、「良い」とは何か、進化は「良い」ことなのか、といった点を考える必要があります。
実際、現代の人々の多くは狩猟採集時代よりもある意味で悪い生活を送っているわけです。
こういったことを考えると、やはり人類はどこへ向かうのか、という哲学的な問いがいかに大切かを思い知らされます。
しかし、そこで出た結論はやはり本当にそれで「良い」のかわからないのです。
私自身、勿論わからないのですが、ただ一つ大切だと信じているのは、変化することです。変化無くして向上はあり得ません。また、変化が有れば堕落もまた一つ楽し、と捉えることもできます。様々な変化を起こすことによって、虚構による進化においても歴史に残る突然変異が生まれる確率が高まるのではないでしょうか。そして、その時、また自分達或いはその他の生命を苦しめないようにするために、倫理学・哲学が大切だと思います。

結構長くなっていますが、最後にもう一つ。
現代に残る人類の文化的業績は、帝国主義等による残酷な行為(被征服民の搾取)の上に成り立っているという話が印象に残りました。搾取による余剰・余暇が文化の発展に寄与しているのです。
これは正直今まで殆ど考えたことがありませんでしたが、すぐに「いただきます」と同じだと思いました。
私は美術館に絵画を見に行ったりすることが結構好きなのですが、これからは「いただきます」の気持ちで感謝しながら鑑賞しようと思いました。
でも美術館で「いただきます」って言ったら怪盗みたいですね(笑)

おわりに

その他諸々、内容がかなり濃かったのですが、まだ下巻が残っています。
今年中に読み切れるかわかりませんが、楽しもうと思います。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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