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終戦の日に思い出す表と裏の遺書~(続)全国の地域版にみる戦争を語り継ぐ人々

 新聞記者生活が長かったせいか、節目ごとに記事を書くのが習い性になっています。8月15日の終戦の日は特にその意識が高まります。埋もれている事実を掘り起こして、伝えていきたいからです。
 現役時代の話です。戦争を語り継ぐ記事で、私自身が記憶に残っているのが2013年8月に書いた経済コラムです。製薬大手のエーザイが運営する内藤記念くすり博物館(岐阜県各務原市)を取材したときの話です。
 薬にまつわる資料群のなかに異色の展示品を見つけました。神風特別攻撃隊員として終戦を迎え、後に2代目社長になる内藤祐次氏が遺書がわりに書いた父への手紙です。
 旧日本海軍の赤い罫線の入った便せんには、「神風は興るべきに非ず、興すべきなり」と勇ましいことばがありました。
 驚いたのは、その便せんの裏に書かれた走り書きでした。
 「オヤジヨ オレハ『ジョニイウオーカー』ヲノミタイガ モウイナイカラ」
 創業者の父、豊次氏に宛てたもうひとつの「遺書」でした。
 2013年は超円高や欧州危機で企業経営が厳しくなった年。ただ、死を覚悟しなければならなかった先人たちの思いに比べれば、2013年当時の苦境はいかほどのものか。
 「(日本企業が)モウイナイカラ」ということはありえません。
 敗戦という最大の危機を乗り越え、戦後復興してきた日本経済を思い出してほしいとの思いで書いたのが、このコラムでした。
 さて、14日付のnoteに引き続き、15日付の読売新聞地域版を一覧してみます。(記事・見出しに著作権があるため、項目のみの紹介です)
【北海道】沖縄で北海道出身の軍人に命を救ってもらった83歳男性が軍人の肖像画を遺族に返還
【青森】沖縄で戦没者の遺骨収集を続ける県内のジャーナリスト夫妻が伝える戦争の悲惨さ
【秋田】秋田市の「土崎空襲」(1945年8月14日夜間から15日)追悼式
【茨城】ニューギニア島で37歳で戦死した笠間市の画家が2歳の長女(現81歳)にあてた絵手紙(「残されたもの」連載4回目)
【群馬】瀬戸内海停泊中に爆発・沈没した戦艦「陸奥」の部材が使われている渋川市の寺の梵鐘。1970年に引き揚げられた陸奥の鋼材は「陸奥鉄」と呼ばれ、精密機械などに再利用された逸話も(「陸奥の記憶」連載上)
【東京】国立市で著名人のイラストや文章で戦争体験を紹介するパネル展「私の八月十五日」、17日まで。
【新潟】91歳男性の満蒙開拓団と終戦後13年間、中国の炭鉱で強制労働
【富山】富山大空襲(1945年8月1~2日)を語り継ぐ会の37歳女性、語り部めざして活動
【岐阜】96歳男性、シベリア抑留体験語る
【静岡】模擬原爆「パンプキン」が投下された島田空襲(1945年7月26日)。島田工業高校生制作のドキュメンタリー動画が、平和祈念式典で披露
【三重】鳥羽市の特攻艇基地跡が消滅の危機。敵艦に体当たり攻撃した特攻艇「震洋」は、250㌔爆弾を備えたベニヤ板製の小型モーターボート
【滋賀】戦災遺児の82歳男性。県遺族会会長として平和学習に尽力(「未来へつなぐ」連載4回目)
【京都】学徒勤労動員(1944年)で旧制宮津中生徒の残した「学徒報国隊日誌」
【奈良】神戸大空襲(1945年6月5日)など戦争体験語る奈良市の87歳女性
【鳥取】88歳男性が語る旧満州国のソ連軍侵攻、引き揚げ
【島根】全国追悼式参列の県遺族会事務局長、33歳で南方戦線で戦死した父の思い出
【岡山】岡山空襲(1945年6月29日)、82歳女性の語り部
【広島】核廃棄廃絶訴える「ヒロシマ・アピールズ」。26作目のポスターはアートディレクター佐藤可士和さん制作
【徳島】満洲引き揚げの88歳男性が講演
【香川】台湾から引き揚げた90歳女性。「苦労は日本に帰ってから」
【愛媛】大洲市の長浜大橋は現存する国内最古の道路可動橋。いまも残る米軍機の機銃掃射の跡を調べる84歳男性
【高知】78歳が遺族会の講話会で初の語り部。徳島大空襲(1945年7月4日)で被災。父はフィリピンで戦死(14日徳島版でも)
【山口】岩国空襲(1945年8月14日)の戦没者慰霊祭
【熊本】86歳女性、命がけの朝鮮半島からの引き揚げ語る
【大分】大分空襲(1945年3月18日から)語り継ぐ朗読劇
【宮崎】戦後、宮崎管弦楽団の定期演奏会を開いた作曲家・園山民平。満洲国の国歌作曲にも携わったとされる(「文人と戦争」連載中)
【鹿児島】満蒙開拓団の引き揚げ者が再入植した薩摩川内市。93歳女性の歩み(「開拓魂」連載中)
(2022年8月15日)
 表紙の写真は、2022年7月22日からKITTE名古屋(名古屋駅隣接)で始まった「色彩」をテーマにしたアートイベント。作者はフランス人の建築家・アーティスト・デザイナーのエマニュエル・ムホーさん。100色で構成した空間が東海地方に初登場した初日です。「自分へ・人へ・世界へ一層優しい気持ちになれることを願い…」。平和の虹を見つけたいものです。

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