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コロナ禍の農業の歩み~4年間の新聞切り抜き記事に見えたもの(4)2024年

 新聞の切り抜きのなかから、農政の記事の棚卸をしながら新型コロナウイルスの「戦中と戦後」をまとめた最終回の4回目です。リニア中央新幹線の先行開業を想定した二地域居住の私論も付記しています。
■2024年は元日発災
 4月を迎えたばかりですが、元日に発災した能登半島沖地震は農林水産業にいまだ打撃を与え続けています。
 日本農業新聞の24年1月1日の紙面では、世界農業遺産に認定されている石川県の「能登の里山里海」のリポートが掲載されていました。記事によると、2011年に国内初の世界農業遺産として新潟県・佐渡とともに認定されました。日本海に向かって1004枚の田んぼが連なる「白米(しろよね)千枚田」には2022年度に451万人が訪れ、農家民宿群「春蘭の里」は国内外から1万2000人が宿泊したとありました。
■一般紙の報道優先順位 
 発災後の報道は、当然ながら安否確認や被害住宅などの状況、避難場所や食料などの支援物資について優先されます。電気(停電)や上下水道、道路の破損といった社会基盤の現状も知りたいニュースです。
 その後、ホテルなど観光面にスポットがあたり、漁港が隆起した異常事態も報道されました。ただ、一般紙には農業への影響や白米千枚田が崩れていることについて、なかなか報じられませんでした。白米千枚田が読売新聞に登場したのは3月になってからでした。
■白米千枚田は「再現」しなくてよい?
 気になることはまだあります。農業新聞には農水省のある部会で政府の規制改革推進会議メンバーでもある委員が棚田の再現には首をかしげてしまうという趣旨の発言をしたことが紹介されていました。詳しくは農水省の議事録にあります。
 大規模化の進む国内の農地で、千枚田は真逆ですが、伝統的な農業の姿です。地元の有志や全国の応援の声もあり、棚田再生に向けて動き出したという報道を見聞きするにつけ、日本も捨てたものではないとホットしています。
 東京23区の食料自給率はほぼゼロです。北陸など各地のおいしい米産地には、先人が苦労して積み上げてきた棚田が広がっているところが多いです。「棚田再現」が、お米をいただける幸せに感謝しながら、経済効率優先の考え方を見直すきかけになることを期待しています。
■農地維持と二地域居住の促進
 東京に人が集中しすぎることを不安に思っています。直下型地震、富士山噴火などで都市機能がマヒする懸念がありますが、地方への移住人口はまだまだ少ないです。
 国土交通省は1月9日、地方への移住と都市との「二地域居住」を促す対策の方向性を中間報告として取りまとめています。私見です。東京の人口を減らし、危機管理を進めるには、二地域居住が最適かもしれません。言い方を変えれば、震災時の疎開先を平時から準備しておくことです。
 このときに受け入れ自治体は、ワーケーションの一つとして仕事場や専業農家の手伝いなど「食と農」にかかわる仕事を用意しておくことを勧めます。子育て世代に収穫と産直の味を知ってもらい、都会を離れて自然に親しんでもらえる好機です。
 地産地消への関心を高め、農業の人手不足を少しでも補えれば一石二鳥です。
■リニア使って信州と名古屋生活へ
 私事ですが、実家がリニア中央新幹線長野県駅(飯田市)の近くにあります。名古屋から25分。信州と名古屋での二地域居住の準備中です。事業主体のJR東海は3月末、リニア開業時期が大幅に遅れることを正式に公表しました。じつは、南アルプストンネル工事は静岡県知事の反対がなくとも難所です。
 一方で当初の2027年開業方針に沿って工事を進めている飯田~中津川(岐阜県駅)~名古屋間は、残土問題をクリアしていけば大幅に遅れることはないはずです。 
 巨額の建設資金を投資しているリニア。全線開通まで完成した部分を雨ざらしにしておく手はありません。
 危機管理上も飯田~中津川~名古屋間を東海エリアの二地域居住に活用できるように今から足らない設備の見直しができないでしょうか。中津川には幸い、車両基地が計画されています。
 そして、品川(東京)~相模原(神奈川県駅)~甲府(山梨県駅)間は、首都圏の二地域居住の幹線として…。
 震災時に被災者を受け入れるには自治体側にも準備が必要です。市町村の防災協定だけではなく、日頃から農業など住民同士の交流を続けておくことが、いざというときの円滑な受け入れにつながります。
 信州・飯田は「二地域居住リニアのまち」を掲げたいものです。
(2024年4月3日)
 

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