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レフレフメアメアレナニレハ~ラジオの魅力

 「レフレフメアメアレナニレハ」という呪文が、効果的でした。
 名古屋市東区の東海ラジオ放送で12月10日、第50回高等学校ラジオ作品コンクールの表彰式がありました。番組制作部門(課題ドラマ)で最優秀賞に選ばれたのは、鳥取県立米子工業高校の坂口明日香さんの作品です。
 劇作家で審査委員の鹿目由紀さんが途中まで書いた脚本に、高校生が自由な発想でストーリーを肉付けして10分間のラジオドラマを完成させます。今回初の試みです。
 「レフレフメアメアレナニレハ」は、母親の葬儀から抜け出した少年が、雨にぬれたいからと傘もささず海辺を歩いていると、少女が傘をさしかけて来るのですが、「いらないよ」と断わります。
 すると男の子が道路わきから飛び出してきて、「天国」への道をたずねます。天国というのはメリーゴーランドのある遊園地のことでした。3人で遊びながら、少年は幼い頃に母親に連れて来てもらったことを思い出します。そして少女が唱える「レフレフメアメア」の変な呪文に聞き覚えがあったとつぶやきます。別れ際に少女の名前をたずねると・・・。
 発想力豊かな作品です。童謡「あめふり」(北原白秋作詞、中山晋平作曲)の「あめあめ ふれふれ かあさんが♪」という歌が懐かしくなりました。
 もうひとつ、番組制作部門(自由形式)の最優秀賞も、ジーンときました。静岡大成高校の大竹祥真さんの「村の小さなおべんとうやさん」です。
 舞台はSLの走る大井川鉄道の抜里駅で、無人駅の駅長室を改装した弁当屋さん。そこで働く諸田サヨさんの日常です。いま85歳のサヨさんは、週2日360円の弁当を作っています。天ぷらを揚げる音とともに「天ぷら粉に豆乳を加える」というサヨさんの声が続きます。豆乳を加えるのは、お年寄りたちの栄養を考えてのこと。そして、時間がたっても食べたときにサクサクしているからだといいます。
 駅舎の外で車のエンジン音がしました。サヨさんは山里に住むお年寄りたちのために自ら車を走らせます。外に出ることが少ないお年寄りに季節を感じてもらいたいと花も添えています。
 サヨさんは満州から300キロ近く歩いて家族と一緒に帰って来ました。食べるものもない中で、おにぎりが届いた日のことが忘れられないといいます。「人間を支えてくれるのは三度の食事にあり」。サヨさんは言います。
 音源と男子生徒の朴訥なナレーションだけですが、おべんとうづくりの底流にある思い、そして山間の小さな駅舎の場面が浮かんでくるようでした。
 このコンクールの過去の最優秀作品には、聴いてみたいと番組もあります。例えば、岐阜東高校「春慶ぬりのふるさと」(第2回・1972年)とか、愛知県の新城東高校「知っていますか?飯田線」(第9回・1979年)、長野県の松本美須々ケ丘高校「忘れられた約束」(第25回・1995年)、名古屋市の椙山女学園高校「伝えたい~風船爆弾の記録~」(第43回・2013年)などです。
 様々なメディアが登場している昨今。東海ラジオの田中康之社長は「音声媒体への関心が高まっていて、だれでもパーソナリティーになれる時代が来ていますが、一番大事なのはコンテンツ勝負」と強調していました。
 アナウンス部門も含めた入賞計9作品の放送は、12月25日、26日午後4時から5時まで。高校生の発想の先には、「レフレフメアメアレナニレハ」のような、世の中を明るくする力が、きっとあるはずです。
(2021年12月13日)

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