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今年も葵の御紋の七草粥~でもスズナ、スズシロ以外は見分けられない情けなさ

 信州の山野を歩いた子どもの頃、ハコベは摘んだ記憶があるが、七草のパッケージに入ると見分けが付かないのは情けない。
 2024年1月5日にJAあいち豊田の松平営農センターから出荷された「松平の七草粥セット」が自宅に届きました。松平郷は徳川家康のゆかりの地です。 
 値段は昨年より100円アップして1750円(送料・消費税込)。食味コンテストで愛知県で初めて特Aをとったミネアサヒも入っての値段です。7日朝に早速いただいて、正月料理で疲れ気味の胃をいたわったところです。
 ■七草でふるさとの野山を思う

ブランド米のミネアサヒと七草

 調理の前、辞典と首っ引きで七草の写真を見ながら説明文を読んでいました。セリは水辺や湿地に、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザは道端や路傍に生える身近な草です。都会に住んでいると、道端にしゃがむこともないですから、七草粥の風習は胃をいたわるだけではなく、田舎の野原へ思いを寄せる一日となります。
 ■毎年の「食」への感謝込めて

松平の七草粥の説明文にあった七草の画

 noteで登録していたメールアドレスが年末で使えなくなるため、新しいメールアドレスとアカウントで再スタートしています。自分の過去記事を直したり、追加したり出来なくなりました。
 そこで、フリーになった最初の「七草粥」のコラムを書いた2021年から22年、23年の過去3回分を再録させていただきます。いずれも農や食に携わる人々への感謝を込めて書いたコラムです。
 本年は農政の基本法である「食料・農業・農村基本法」がみなされる年です。現場に出向いて、今年も「農政ジャーナル~長靴をはいた記者」に農業記事を配信していきます。
(2024年1月7日)
 
【2023年七草粥コラム】

2023年正月に届いた七草粥のパッケージ。葵の御紋が松平の郷らしい

七草粥~「どうする家康」の発祥の地からお取り寄せ
 NHK大河ドラマ「どうする家康」にちなんだ七草粥のコラム。徳川家の源流、松平氏発祥の地の愛知県豊田市松平地区で栽培された七草粥セットをお取り寄せしてみました。
 松平地区の七草。そしてお米の食味コンテストで愛知県初の特Aに選ばれたミネアサヒを合わせた「松平の七草粥セット」(1650円、送料・消費税込)です。昨年末に予約したもので、新春5日に届きました。
 出荷作業の場所は松平志賀町にあるJAあいち豊田松平営農センター。3日と4日の2日間で約2万5000パックを出荷したそうです。豊田、名古屋、岡崎の各市場などを通じて「松平の七草粥セット」としてスーパーなど店頭に並んでいます。
 同JAセリ・七草部会の部会員は、5戸の農家が計約1㌶で栽培しています。松平地区はセリの販売が盛んだったことから、1984年から「春の七草」の出荷を始めました。同JA松平営農センターによると、昨年12月の急激な冷え込みで生育が遅れるなど心配されたそうですが、部会員の丁寧な栽培管理で品質良好に仕上がったとのこと。
 正月7日の朝にあわせて、JA職員やアルバイトが2日間それぞれ40人が手作業で丁寧にパック詰めしました。
 店頭では、祈祷済みが流行りのようです。イオンリテール東海カンパニーとJAあいち経済連は、無病息災の祈祷を受けた種で育てた七草がメインです。愛知、三重、和歌山県の計51店舗で「愛知の七草」として販売しています。岐阜県でも関市の善光寺で祈祷を受けたという七草を「岐阜の七草」として売り出し中です。
 それにしても昔は祈祷していなくても、正月7日に七草がゆをいただくのが自然でしたが。裏を返せば、伝統食の風習が薄れてきているということでしょうか。生産者も販売先も七草に付加価値をつけようと躍起です。
 消費者の私も「どうする家康」にちなんだのも、付加価値の一種でしょうか?
 セリ栽培から七草へと広げていった松平地区。葵の御紋のついた「松平の七草粥セット」。それだけでも縁起が良さそうです。(2023年1月6日)
 
【2022年七草粥コラム】

2022年1月4日の出荷風景(JAあいち豊田提供)

正月の七草を日々食卓へ~ブランド支える愛知の七草ラッパー
 正月7日の「人日の節句」の朝は、この1年の無病息災を祈って七草がゆをいただくのが習わしとなっています。静粛なイメージがありますが、今年は「NANAXXA RAP」(ナナクサラップ)の軽快なリズムに驚かされました。
 JAあいち豊田セリ・七草部会の安藤源さんは、愛知県豊田市松平地区にある8棟のハウスで七草を栽培して13年目になります。1月7日に合わせて、「松平の七草粥(がゆ)セット」を出荷しました。
 松平地区は、徳川家康ゆかりの地。1984年から七草の栽培を始め、正月明けから短期決戦で今年は3,4日の2日間で2万5000パックを出荷しました。地元の豊田市や名古屋市のスーパーの店頭に並んでいます。
 JAあいち豊田の話では、安藤さんが栽培を始めた当初は発芽の条件も方法も全く分からず、先輩農家や他産地の農家を訪問して教えてもらいながら試行錯誤を繰り返してきたそうです。いまでは地区の8割を占める約2万パックを出荷していますから、「松平の七草粥」というブランドを支えているひとりといえるでしょう。
 しかし、生産者の高齢化で七草の産地の継承が危うくなっています。安藤さんは「先輩農家が築き上げた『松平の七草』のブランドを継承し、産地を守りたい」として、SNSでの情報発信のほか、「NANAXXA RAP」と題した七草をPRするラップ調の歌も作詞作曲しています。
 QRコードでアクセスすると、音楽ストリーミングサービスで配信中のラップのさわりの部分を聞くことができます。耳がラップのテンポに追いつかないのですが、「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」は聞こえました。七草がゆの作り方も歌詞に入っています。
 安藤さんはSNSや七草ラッパーとして七草の魅力を発信していくことで、新しい生産者仲間を呼び込むきっかけにしたいそうです。
 また、七草を正月だけの季節行事の伝統食だけではなく、消費者に農産物として通年で味わってもらいたいと考えているそうです。
 「セリ・七草部会」の農家は5軒。手間がかかる仕事にもかかわらず、正月行事を絶やさないように生産量を維持しています。特A米の地元産ミネアサヒと合わせた「七草粥(かゆ)セット」(1500円、送料込み)は毎年、年末に予約を受け付けています。
 今年は無病息災と延命長寿を願いつつ、胃腸を整えるために「いつでも七草」の食習慣も広げていきたいものです。(2022年1月6日)
 
【2021年七草粥コラム】

2021年正月の七草(JAあいち豊田提供)

コラム 正月の食卓を支える農業~七草粥をいただきながら
 お粥の白さと野菜の緑が食欲をそそります。1月7日の人日の節句の朝は、この1年の無病息災を祈って七草粥をいただくのが習わしとなっています。
 春の七草は、芹、薺、御行、繁縷、仏の座、菘、蘿蔔です。植物学者の牧野富太郎著「植物一日一題」(昭和1953年、東洋書館)に、「日本の草や木の名は一切カナで書けばそれでなんら差し支えなく、今日ではそうすることがかえって合理的でかつ便利でかつ時勢にも適している」とありました。セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロです。ただ、〝時勢〟としては、鬼滅の刃ブームで小学生も竈門炭治郎などの難しい漢字を書いています。漢字で書いてみると、七草粥の歴史が感じられる気がします。

名古屋市の知人、川田きし江さんが描いた松平郷のスケッチ画

 さて、食卓で気軽に七草粥を味わえるのも、農家のおかげです。愛知県では徳川家康ゆかりの豊田市松平地区の農家が約1ヘクタールの専用の畑で1984年から七草を栽培しています。正月明けから短期決戦で2万7000パックを用意しました。地域や名古屋市のスーパーに出荷されています。JAあいち豊田(豊田市)の松平営農センター担当者によると、「セリ・七草部会」の農家は5軒。手間がかかる仕事にもかかわらず、正月行事を絶やさないように生産を維持していると言います。

JA愛知東(新城市)の鳳来営農センターが地元旅館の正月のお膳用にと毎年手作りする(提供)

 正月を彩る農家の方々の仕事は多彩です。写真は、縁起物の松竹梅をあしらった「箸置き飾り」です。五穀豊穣の象徴の稲穂も加えて、おめでたい水引で彩りを添えています。長さは10センチほど。JA愛知東(新城市)の鳳来営農センターが地元旅館の正月のお膳用にと毎年手作りしており、今年も370個を組んで提供したそうです。
 昨年は春先の感染拡大で高級料理店などからの注文が落ち込み、オオバや緑モミジ、葉ツバキなどの「つまもの」の需要が大幅に減りました。その後、回復傾向で、昨年12月から盛り返しています。
 日本農業新聞の元旦1面にTOKIOのリーダー、城島茂さんのインタビューが載っていました。感染拡大の影響で飲食店の需要が減り、出荷する農家が大変な苦労をしてきたことを気遣った内容です。「テレビ番組を通じてお会いした全国の農家さんの顔が浮かび、『大丈夫かな。どうしているだろう』と思う。人ごとじゃない」。城島さんは「消費者の方々は農家さんに思いをはせながら買い物をしていただきたい」とありました。
 文化庁はいま、「我が家のお正月料理」フォトコンテストの作品を募集しています。インスタグラムにお正月料理の特徴や思い出を100字程度のメッセージにして投稿します。締め切りは1月22日。入賞作品は2月13日に開かれるオンライン食文化シンポジウムでも紹介されるそうです。「農家さんに思いをはせながら・・・」の投稿を期待しています。(2021年1月7日)
 

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