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キャベツ収獲の中腰作業をアシスト~ジェイテクトと愛知県農試が開発~荒玉note改訂

 この記事は2022年12月にnoteに提稿した記事です。JA豊橋管内では、鉄のコンテナ「てつコン」を使ったキャベツの効率的な出荷も行われています。マガジン「農政ジャーナル~長靴をはいた記者」にも収録されています。

 トヨタグループの部品メーカー、ジェイテクト(愛知県刈谷市)は農業用パワーアシストスーツを愛知県農業総合試験場と共同開発しました。県内での試験販売開始を受けて12月21日、愛知県知事公館を表敬訪問し、開発の狙いについて説明しました。

実物大のキャベツの前でアシストスーツを体験する大村知事(写真左)と、農作業の省力化をアピールするジェイテクトの開発者のみなさん(写真右)=愛知県公館で©aratamakimihide

 愛知県が出荷量トップのキャベツなど重い野菜の収穫は、狭い畝に中腰になって包丁で一個ずつ刈る作業を繰り返しています。連続した過酷な作業負担を軽減させるための商品です。
 百聞は一見にしかず。大村秀章知事は説明を聞いた後、まず通常のキャベツの収穫作業を疑似体験しました。実物大の重さ1㎏のキャベツ(模型)を刈り取って、あぜ道に置く作業を繰り返します。
 次にパワーアシストスーツを着用。アクティブ型という人の動きに合わせて、モーターでベルトを巻き上げ、中腰などの作業を制御するタイプです。作動スピードをモーター(3段階)で制御してアシストする仕組みです。フレームがなく、動きやすいのが特徴といいます。本体重量も業界最軽量クラスの約2㎏で価格は約3万円。
 大村知事は模型のキャベツを六つやっただけでしたが、「農家の人は1時間とか2時間、慣れているといっても体にきますね。本当に機械が復元をアシストしてくれるんで、格段に負荷が違う」と感想を述べていました。
 このパワーアシストスーツの名称は「JーPAS Aguri」。開発したジェイテクトの林田一徳・研究開発本部副本部長は「ジェイパスアグリは農業専用。農業試験場、JAあいち経済連と協力して社会実装をめざしていく」と言います。
 愛知県のキャベツ畑は北海道と違って狭いので、収穫場面での機械化が課題となっていました。
 同JAの河野宏和常務理事(営農担当)は「今回開発したアシストスーツは中腰での連続作業に特化させているのが特徴。収穫作業の負担軽減になり、農家の営農継続と生産基盤の維持につながれば」と期待しています。
 ジェイテクトはすでに介護用にアシストスーツを開発しています。今回、もうひとつの大きな市場である農業に着目したきっかけは、愛知県が2021年度から進めている「あいち農業イノベーションプロジェクト」です。キャベツなど土地利用型作物のスマートモデルの実現という部門で同社の技術提案が採用されました。
 このプロジェクトには全国から143件の応募があり、農業イノベーションに取り組む企業や個人ら18件が選ばれています。
 以前、noteで紹介した宇宙で野菜を育てるという夢の一歩として、高機能ソイル(微生物と有機質肥料を付加してつくった人工土壌)を用いた宙苗(そらなえ)の開発をしているTOWING(名古屋市南区)も選ばれています。
 さて、県農試は11月下旬から安城市内で大豆農家にJーPASAguriを着用してもらい大豆の選別作業のデータを収集しています。
 大村知事も「ジェイテクトはトヨタグループなので、常にカイゼンで進化していくので、定期的に使っていただいたデータを追っかけて、改良型をどんどん出してほしい」と要望しました。
 愛知は製造業が集積するモノづくりの県であるとともに、農業出荷額も全国8位の農業県でもあります。農工連携が加速するきっかけになりそうです。
(2022年12月23日)

 

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