ゲーム感想(さいきょー☆えんじぇる ザラキエル!)※R-18

作品名:さいきょー☆えんじぇる ザラキエル!
サークル:くじらぼ。
ジャンル:RPG
総合評価:B

 教会の調査に訪れた天使ザラキエルは敗北し、凌辱され、その力を失ってしまう。力を取り戻し、聖女に報復するため、ザラキエルは浮き出た淫紋を抱えながら、再び教会に挑むのだった――
というのが冒頭ストーリー。タイトルとキャラ絵から生意気な小娘がひどい目にあうコメディ系の話かと思いきや、主人公ザラキエルは生意気っぽい言動をとることもあるが、とても良い娘。そしてシナリオは大真面目。副題がラストエンブリオ2となっていたが、そちらのタイトルの方が内容には合っている。おそらくは、シリーズものの続編というイメージを嫌ってこのタイトルにしたのだろうと推測する。

 ザラキエルというキャラクターは、先に書いたがとても好感を覚えるキャラクターをしており、その言動や態度は見ていて気持ちが良い。また、このゲームでは町の人などとの会話ごと、ザラキエルの反応がポップアップで出てくる仕様になっており、これがかなり楽しかった。素晴らしいと思ったのは、この反応の表示をセリフウィンドウではなく、画面上部でポップアップにしたという点だ。全てのセリフにウィンドウで反応を返す様にしてしまうと、操作できない時間が長くなり、わずらわしさが生まれるが、会話後のポップアップでそれをやることでスムーズなプレイを実現している。一部ウィンドウでの会話になるところもあるが、逆に、その会話が特別な感じもして、そちらにも利が出ていた。

 イラストのレベルがとても高い。エロゲという分野において、かなり重要な要素でもある。エロシーンにはシチュエーションとして町での依頼によるシーンと敗北によるものがあり、町での依頼は、最初の町にシーンが集中しているため、戦闘で負けることがなければ後半はほぼエロシーンがないという状況になる。バランスを考えるとちょっと悪い気もするが、エロ要素が本編シナリオの邪魔になることを嫌ったのではないかと思う。自分は特にエロ目的でゲームを買っていないため、気にはならなかった。

 物語のシナリオについてだが、かなりの駆け足。あらすじを読んでいるようだ――とまで言うと少し言い過ぎになるが、キャラクターの感情を追えない程度に早すぎる。シナリオのプロットに対し、明らかに尺が足りていない。長いシナリオになるとついていけるプレイヤーが限られてくるという心配はあるだろうが、さりとて、色々端折りすぎると、キャラクターの感情の発露の説得力が足りなくなってくる。最終決戦、駆けつけてくる仲間たち、という熱い展開における熱さは、積み上げた時間と振り返った道程の長さと乗り越えた障害の数を燃料としている。そこが足りなければ不完全燃焼でくすぶった感じにしかならない。更には後半あたり、敵のキャラクターが、まるで崖に追い詰められた犯人のごとく、必然性もないのにペラペラと説明を開始して物語をたたみにかかる展開は、プレイヤーの熱をことごとく奪い去っていく。実を言えば、本編終了時点での総合評価はB-としていた。
自分はラストエンブリオの過去作をプレイしていないため、正確には理解できていないと思うが、本編後の楽園のアルテミス+での、より大きな物語の予感・期待感はすごくよかった。おまけシナリオまで含めた場合で、評価Bである。

 その他、ちょっとしたところで、あまりにも丁寧がすぎる部分があり、そこは気になった。教会のフロアを一つクリアするごとに、「一端戻ろう」となるのは物語との整合性がとれない。また魔大陸についた時に「~~しよう」といった指示が出てきたのは減点。過剰なTipsは、ことRPGの分野では冒険感を損なう。ゲーム開始して最初に「回想シーンを全開放しますか」を出してきたのも、これからゲームをやる気になっているプレイヤーの気勢を削ぐ。その機能があってもいいが、アピールしすぎはちょっといただけない。

 OP曲、激しくアップテンポな曲調で、おそらく「さいきょー☆えんじぇる ザラキエル!」というタイトルイメージに合わせたものだと思われるが、中身が「ラストエンブリオⅡ」なので、シナリオイメージとやや離れているのも少しだけ気にはなった。ギャップを狙った、ということかもしれないし、大きな問題ではないが。

 最終的に「未完作品」という評価。シリーズとして大きな展開を見据えた上で、その中の章の一つとしての区切りではあるが、エンディングの後に残った問題が大きいため、これで完結という気にはならなかった。むしろシナリオ的には、エフィーとザラキエルの出会い、旅をする理由を描いたものであるため、全体的な視点からすると、序章部分にしか過ぎないのではなかろうか。シリーズのリリースを積み重ね、物語を描き切ることができた時、その一部として生きてくる、そういった印象を受けた。この先の物語への期待感をこめて、評価B。

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