ゲーム感想(Fate/Samurai Remnant)

作品名:Fate/Samurai Remnant
メーカー:コーエーテクモゲームス
ジャンル:アクションRPG
総合評価:B+~A-

まず、最初にメーカーさんに感謝を。
Fateシリーズの世界に正面から向き合って、この作品を完成させてくれたこと、その事にタイプムーンの一ファンとして、謝辞を述べたい。
他のFateシリーズをプレイする中で、知ってはいたけれど見えていなかったことを体験できたような、よりFateの世界に深く触れることができたように思わせてくれる作品でした。
ここから、ゲームをプレイした中で不満に思ったことなども挙げるけれど、先にこれだけは伝えておきたい。この作品、買ってよかった、と自分は思っています。
以下、感じたこと、思ったことなど。

まず、アクション部分について。
この点については、自分はあまり語らない方がいいのでは、と思わなくもない。
というのも自分はあまりアクションに慣れていない人間であり、どのくらいかといえば、プレイ開始直後に3D酔いを起こして数時間ぶっ倒れていたレベル。細かなアイテムを探しながら視点をぐりぐり動かして町を走り回っていたあたりでやられたみたいです。
しばらくプレイしてたら酔うことはなくなったけれど。
そんな感じだったので、操作に慣れるまでがかなり長かった。□と△の攻撃派生については最後まで正確には把握できなかったし、適当にガチャガチャやる程度のプレイしかできなかった。
最初に覚えることが多く、それを自分の中で整理できるまではかなり大変な印象。自分と同じレベルの初心者にお勧めできるかといえば、ちょっと悩む。慣れてしまえば、言うほど複雑な操作でもないとは思うのだけれども。

アクションについて書いた関係で、続けて戦闘システムについて。
一部の強敵には外殻ゲージが設定してあり、これを削り切らなければダメージが極小でしか入らない。そして外殻は削り切ってもしばらくすると復活させてくる。外殻ゲージを削るためには特定の攻撃(カウンター)や相手を気絶させるなど、テクニックが必要になる。
これ、レベルが低い内はすごく大変だった。せっかくゲージを削っても、充分なダメージが入る前に外殻復活。繰り返し。このため、戦闘時間がすごく長くなってしまう。
ただ、これが一概にマイナス要素かというと、相手の強さ表現、戦闘の駆け引き要素による緊迫感など、演出面などでプラスに働く部分も多く、物語や設定的にもサーヴァントや怪異に対しては攻撃が入りにくいという再現の面があり、また、アイテムなどを買い込んでおけば力業で突破できなくもないため、明らかなマイナス要素とは言い切れない。ちょくちょく入る雑魚戦でも外殻ゲージ持ちが頻出するので、そこはもう少し頻度下げた方が煩わしくないのでは、とは思った。
まあ、逆に、外殻ゲージがないとレベルが上がった後半あたり、敵に物足りなさを感じる気もするので、この点については良し悪し。
戦闘について演出面での話をするならば、サーヴァントの強さを悲鳴が出るレベルで強く設定したのはすごく良かったと思う。Fateの世界観として、サーヴァントは通常の人間が抗せる存在ではない、というのが、しっかりと伝わってきた。この点は、このゲームで特に素晴らしい部分だと感じました。

時間がかかる、といえば、町中の移動。ミッションの多くがおつかい系だったり、瓦版集めなどの要素で路地裏の隅まで調べて回るため、この町中の移動量がすごい。等身大で江戸の大きな町を走り回れる、という利点があるものの、移動だけで相当の時間がかかるあたり、スムーズなプレイの妨げになっている感がある。江戸の町の雰囲気などを感じるのには良いとは思うのだけれど、要所要所へのジャンプ機能が欲しいと何度か思った。
移動中の予期しないイベントの発生を演出するためにその機能を入れられなかったのではないか、とも憶測するが。

時間がかかる、で、もう一件。とにかくこのゲーム、ロード時間が長くて、多い。
町の中にバトルエリアがある関係だと思うのだが、町から町に移動する度に1分弱のロードが入る。あちこちの町をとびまわり、ミッションをこなすにあたって、このロード時間がバカにならない。体感、プレイ時間の5分の一くらいはロード待ちだったのではないかと思う。このロード時間中にあらすじやキャラのプロフィールなどを読める仕様にしたのは良かったとは思うけれど。

キャラクターについて。
登場人物、助之進とかも含めて、すごく魅力的だったと思う。敵対する相手についても、その背景、立場には説得力があり、ノベルゲームほどの掘り下げではないもの、アクションゲームという媒体にしてはすごくよく描かれていた。
物足りない、とおもったのは、オトタチバナヒメとかカヤあたりか。結局、どういうつもりでそこにいたのか、彼女自身の想いなどについての描写が弱かったように思う。メインキャラに近い立ち位置であるため、そこはもう少し語ってほしかった。
また、紅玉についてだけはかなり世界から浮いている印象があった。Fateシリーズ全体を見てみれば、空を飛んで、かつ襲ってくるような魔本の類は出てきているし、世界観としては存在していてもおかしくはないものだとは思ったが、やはり、江戸時代のあの世界に、空飛ぶ魔本がそこにあって、かつ喋り、主人公たちがすでにそれを受け入れているという状況がプレイヤー視点からは納得しにくい。すごく便利機能を持っているし、魔術師の家系でもない伊織を一端の魔術が使える人間に育ててしまえているし、その存在が破格であるから、その背景設定が深く語られていない状況では、ご都合主義で用意された存在というイメージは拭えない。実際シナリオやシステムの都合で用意したキャラクターであっても、それを世界になじませないと、世界そのものの説得力の低下につながると自分は思う。

シナリオについて。
初回プレイの序章~1章あたりまで、かなり会話に不自然さを感じていて、シナリオの出来に懐疑的だった。序盤は特に、なぜ今その話が出て、唐突に出たその話に対して、なぜ主人公やその周りはかみ合わない会話に疑問を持たないのだろうか、という違和感が拭えず、高尾太夫が出たあたりからの場面の転換も戸惑うばかりで、会話からその人物の感情を読み取れず、受け入れ難かったように思う。違和感がなくなったのは2章冒頭あたりから。鄭成功との会話はすごくわかりやすく、ここからは不自然さは感じなくなった。
初回プレイの、と書いたのは、2週目に序盤から見返してみたら、実はそれほどおかしな会話をしていたわけではなかった、ということである。
ではなぜそう感じたのか。これはおそらく、プレイヤーがゲーム開始時点で覚えるべき知識の多さ故だと思う。操作も覚えなければいけない、世界について覚えなければいけない、物語の基礎知識も頭に入れなければならない。あまつさえ、紅玉というありえない魔本が唐突に出てきたりもする。だから、物語の流れとしておかしくない会話であっても、プレイヤーが聞きたいのはそこではない、というプレイヤーとの齟齬が違和感となるのだろう。
この時の感覚と、同じような感覚になったことがある。映画を観ているときにこの感覚になりやすい。細かく、時間を使って説明ができるノベルゲームと違い、限られた枠の中にシナリオを納めなければならない作品では、これは払拭し難い部分なのだと思う。
これは映画なのだ、という感覚で観た時に、シナリオについては純粋に楽しめるようになった。
各章の冒頭に挟まれる語りなどの雰囲気はとても素晴らしく、物語の盛り上がりを高めてくれている。敵味方が二転三転する群像劇としてもしっかり描かれており、各キャラクターの声優の熱演も光る。宮本伊織の抱える病巣、その精神の内側にあるものは言葉の端々からも見て取れて、途中の会話の一つ一つが味わい深い。更にはあの一騎打ち。名乗り上げからの決着で出されたあの技。もうあのシーンは興奮せずにはいられなかった。すごく、すごく惹かれる部分が多い物語だったと思う。
ただ、あと一歩。エンディングに、もう少しが欲しかった。
例えば、伊織とカヤのその後の様子はどうなったのか、とか。
生き残ったドロテアと、その後伊織と接点はあったのかとか。
あるいは、あの2週目以降に追加されるあの終わりとは違った、もしもの世界のエンディングをもう一つとか。
美しい物語の終わりではあったのかもしれないけれど、物語の締めにどれも幸福感が足りないため、寂寥感が残ってしまい、諸手をあげて喝采とはいかなかった。しんみりと終る、それも一つの形だとは思うけれど、やはり、ゲームとして、主人公を操作して、主人公と共に進んで、主人公を好きになって、そして迎えるエンディングであるのなら、ハッピーエンドを感じたい。少なくとも、希望のあるエンディングを迎えたい。
だから、あと一歩。もう一つ、何かが欲しかったと思います。

Fateの世界をしっかり取り入れて描いたこと、サーヴァントの強さ・凄さをこれ以上なく表現できていたこと、キャラクターの魅力、声優の演技力、演出の上手さ、雰囲気作りの上手さ。それらの部分は自分の中でかなりの高評価ではあるものの、ゲームとして見た時のロード時間の長さ・多さ、そして劇終における「あと一歩」。
それらを踏まえ、総合評価としては「B+~A-」。
もう一度やりたいか、次のゲームも欲しいと思うか、という観点で、Aは「次も欲しいと思う」のランク。
もし他のエンディングが見られるなら見たいし、物語を追いたい気持ちはあるけれど、億劫なところも感じるし、更に出てくるのが悲劇ならこれ以上は見たくはないし、宮本伊織以外の主人公の物語を追いたいという気持ちは薄い、ということから、消極的な-。あるいは、「次のものを買ってもいい」の範囲であるBランクであれば、積極的検討の+。

宮本伊織はすごく好きになれる主人公でした。その内に病巣を抱えていたとしても。
良い物語をありがとうございました。

蛇足1。
サーヴァントの数、逸れがいると事前情報で聞いた時には、DLCで追加するのかな、とか思っていたら、人数を確定してストーリーにしっかり組み込んでたのがすごく驚いたし、好感を覚えました。逸れがいることで、誰が落ちるかわからない、残るかわからない、複数が残っている可能性ができる、という点で、物語的に上手いと思いました。

蛇足2。
逸れ:兄貴 アリア 吉原狂 義仲さま アルジュナ 殺処分先生 大魔女 若旦那 カヤの中の人
……9人いる。
順当にいけば若旦那が予定外なのだと思う。あの人だけエクストラだし。
ただ、ここであえて別の説を挙げたい。
「武蔵ちゃん乱入で本来の狂が逸れに弾き出された説」。
あの武蔵ちゃんがどの時点の武蔵ちゃんかわからないけど、他と違って世界を渡り歩いてるのであれば、もしかすると召喚されたのではないのではないか、と。
即ち。
オトタチバナヒメ、狂説。

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