ゲーム感想(Sky And Earth)

作品名:Sky And Earth
製作:まむ
ジャンル:RPG
総合評価:B+~A-

フリーゲームとして発表され、ランキングで高い評価を得た人気作。実際プレイしてみて、なるほどの評価だと思いました。
凄いと思ったのは、世界の構築。ゲームの時間軸である現在につながる、滅ぼされた過去の世界の歴史が綿密に組み上げてあり、おおよそ、そこに破綻が見られない。独自要素を含めた世界をこの量で組み上げた上でのシナリオ製作は、非常に感心しました。

システムとしてはオーソドックスなコマンド選択式ターン戦闘……と見せかけて、中盤~後半にかけて増えてくる要素あり。特にそれを使わなければならないわけではないものの、使いこなせば非常に有利に戦闘を進められるあたり、面白い部分になっていたように思います。
ボス戦でのTP0スタートに加え、根源技を使用するためのゲージが戦闘毎に0スタートであるため、慣れるまではなかなか使用できず、やりづらくも感じましたが、慣れさえすれば使用方法は難しいわけではなく、使用を前提として戦法を組むこともできる、いいバランスになっていたのではないかとも思います。

システム上での不満点では、まず、敵からのドロップにおいて、マッドネスエネミーが落とすものが、名前から武器なのか防具なのか、はたまたアイテムなのかわからないことがあり、都度、アイテム欄を確認しにいかなければならなかったところが少しストレスでした。
また、後半になるにつれ店舗で作成できるメモリースキルが増えた際に、効果ごとに並んでいるわけでもなく、一覧がとても見づらかったです。

プレイ印象ですが、序盤あたりの行動制限が非常に厳しく、ちょっとした脇道によることも制止されるので、RPGとしての冒険感や世界を知りたいという欲求に対して良いとは言い難いです。行動制限を厳しくしていくと、やらされている感が出るというか。どこまでも自由に行動させろとまではいいませんし、物語の設定上、行動制限は絶対に必要になりますが、RPGとして操作をプレイヤーにゆだねるのであれば、たとえそれが無意味な探索であったとしても、探索自体を封じるのは悪手であると考えます。後半に大陸移動が可能になれば、だいぶ自由度が上がるため、そこからは序盤にあった不満は感じませんでしたが。
また、序盤のマップは敵の数や置いてある宝箱などに対し、MAPが広すぎる感じはしました。閑散としているというか、何もないのに広いところを移動していくのは疲労を感じます。
良かったのは、高レベルダンジョンに序盤から入れるようにしてあったところ。ああいう、どう考えても今行くべきでないレベルの場所に、その時点の全力で挑んでみるというのは楽しいです。

シナリオについての印象は、一言で表せば「定規で引いた直線で構成された物語」の様な印象でした。面白いかどうかとは別の話で、とても理屈に寄っていて、例えば、ある組織が人をさらっていたエピソードの後に、その組織が仲間になると、さらわれた人々は「元の暮らしより良い暮らしだったから感謝しています」という流れになったりします。理屈でいけば元より良くなっているのだからいいじゃないか、みたいなことになりますが、突然誘拐された人間の感情が、全てそれで片付くのだろうか、と。これはただの一例で、全てにおいて理屈が優先され、キャラクターの感情に共感しにくさが生まれているように思いました。また、そういった理屈で行動しているように描かれているキャラクターが、ある時ひどい憎しみをあらわに、突然暴言を吐き始めます。感情の吐露というのはあるべきですが、そこまでの流れで理屈ばかりが表に出ているため、あまりにもそれが唐突で、感情を共にしづらい。例えるなら、道を歩いていたら突然前を普通に歩いていた人間が叫びだした、みたいな印象です。前兆の描写、そこに至る道筋から、その反応を想像しにくい。共感よりは狂人を見ている感覚になります。
一つ、勘違いしてほしくないのが、理屈をつけるのは悪いことではなく、“なぜそうなったのか”に道理を通すのは必要なことではあります。ただ、それを前面に出し過ぎると、色々なことが受け入れ難くなる、ということです。

逆に、シナリオで良かった部分ですが、主人公パーティだけでなく、サブキャラクターにも人間関係やエピソードを描いていったのは物語への深みを与えていて良かったです。この辺も、世界全体をしっかり作り込んでいたからできたことでしょう。群像劇的な楽しさがありました。また、エピローグ後のアフターストーリーを、あのボリュームで用意したところも満足度が高かったです。欲を言えば、セナレーノやイノセートのリクディオとのあれこれを見たい気はしましたが、そこは想像の余地として受け取ります。

その他。
キャラボイス、声をあててあるのはとても豪華ではありました。ただ、フリーゲームにこれを言うのは酷なのですが、長文の読み上げあたりに難があるように思えます。技名の読み上げだけなら、そこまで気になるものではなかったのですが。少なくとも聞き取りにくくはなかったので、著しく悪いわけでもないのですが……。
バトル中のセリフ、というので、もう一点。しょうがない部分はありますが、何が起こったのか、なんでそうなったのか、を長文説明セリフでこれからそれをくらう相手に読み上げられると、若干、盛り下がるというか、いや、敵キャラに限らず説明セリフの多用は一歩引いてしまうというか。キャラのセリフではなく、地文とかならまだ、あれなのですが。
 物語の中で気になったこと。ディストピアにて、幽遠なるものが作った世界をそこから弾かれたリクディオが見ていき、逆らい難い、相手の正義をいかに退けて我を通すか、という話の中で、老衰で死亡した人の扱いをああしたのは、正直余計だったかな、と。欠点のない完全な善を相手にどうするか、というところで、反抗しやすくわかりやすい欠点をつくってしまったのは残念ではありました。
 敵キャラの散り際。キャラによっては、やや、あっさりしすぎているかと。それなりにシナリオ上で関わった相手の最期がやけにさらっと終わって、ちょっと拍子抜けした感が。断末魔というか、最後の最後に何を口にして逝くのか。その瞬間にそのキャラの物語の結論が見たかった思いはちょっとあります。もちろん、ちゃんと描けていたキャラもいましたが。
 キャラクターについて。魅力的なキャラが多かったです。自分はイノセートが一番好きです。リクディオへの執着が楽しかった。後半、いろいろ思い出してからは執着がなくなってしまったのがちょっと寂しかったり。

総合。
これだけのボリューム、これだけの世界観を作り上げたのはお見事。RPGとしてバトルに独自性を組み込んだ点も評価。
序盤~中盤の不自由さ、冒険の物足りなさや、少し物語が理屈っぽく、やや主人公に共感しづらかった点などから、もう一度プレイしたいか、という点において躊躇いがある。
ゆえに自己評価B+(次回作プレイを積極的に検討したい)~A-(次回作を気が向けばプレイしてもいい)。

※なお、自分は評価に価格をふくめないため、「フリーゲームであること」は考慮していません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?