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将棋の未来: 「ほぼ解決」の可能性とは?

谷合廣紀さん、プロ棋士でありながら東京大学大学院電子情報学専攻博士課程に在籍する異色の経歴を持つ方が、将棋が「ほぼ解決される日」について考察した記事を執筆しました。その記事は、将棋AIや生成AIを仕事で活用する私たちにとって非常に興味深いものです。




「ほぼ解決」とは何か?

2023年、オセロゲームが「弱解決」されたという論文が発表されました。これは、双方が最善を尽くした場合の結果が厳密に導出されることを意味し、オセロではそれが引き分けになるとされています。では、将棋においてもいずれ同様の「弱解決」が見られるのでしょうか?

2024年2月4日に行われた棋王戦第一局では、藤井聡太棋王と伊藤匠さんの対局が持将棋、つまり引き分けに終わりました。この事例を考えると、将棋が弱解決されると、引き分けが頻出する未来が想像されます。しかし、オセロと将棋とでは複雑さが大きく異なります。


ゲームの複雑さと将棋

谷合さんによれば、ゲームの複雑さを示す一つの尺度は「探索空間」の大きさで、オセロは10の60乗程度、将棋はそれが10の220乗程度とされています。この巨大な差は、少なくとも現在の技術では、オセロのようなアプローチで将棋を弱解決することは不可能であることを示唆しています。

将棋AIの性能を向上させる一つの方法は、「モデルサイズ」の増加です。一般に、モデルサイズが大きければ大きいほどAIの性能は向上する傾向にあります。これは最近の生成AIの成功が証明しています。しかし、現在の将棋AIのモデルサイズは、最先端の生成AIと比較するとかなり小さいです。たとえば、チャットGPTのような先進的なモデルではパラメーター数が約1兆に達しますが、一般的な将棋AIのパラメーター数は数千万程度にとどまり、実験的には数億のパラメーターを持つモデルが試される程度です。


将来への展望

将棋の「ほぼ解決」には、現在の技術を大きく超える進化が必要であるというのが谷合さんの見解です。しかしながら、技術の進歩は予測不能な速度で進むもの。将棋の複雑さが、いずれ技術によって解明される日が来るかもしれません。それまで、私たちはこの古典的なゲームが提供する無限の可能性と、その中で生まれる創造性や戦略の美を楽しむことができます。

将棋が「ほぼ解決」される日が来るかもしれないという考えは、私たちにとって不思議な魅力と同時に、ある種の挑戦でもあります。技術の進化とともに、将棋の深い世界をさらに探求していくことが、これからの私たちの大きな楽しみの一つとなるでしょう。

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