ヴァル研を卒業し旅立ちます
2005年の11月から約14年。お世話になったヴァル研究所を2月末で卒業する。
社内からは「そうだと思った」とか「ちょっと早かった」というレスをもらうので、一部の人には想定内の出来事らしい。
「よっしゃー、これ幸いに恨みを存分に書いてやろう!」という退職エントリーじゃー!!!!という訳ではない。
これまでの私の社内外での発信や「消すことのできない言葉」で傷ついたり、被害を受けた人もいるだろう。だから「告ぐなう」ことの方が多いのかもしれない。
なによりも、私自身が恨み辛みとか思っていないので、そもそも書けない。
卒業とは
ある段階や時期を通り過ぎること
https://kotobank.jp/word/卒業-554609
「卒業」とは、まぁ簡単に言ってしまえば「退職」のことである。
だが、ちょっとだけニュアンスが異なるのだ。
上記の卒業の定義にあるように「段階を通り過ぎる」のだ。なんの段階かというと働き方だ。
社員として働く雇用形態ではなくなるのだ。フリーランス契約となり月に2日ほど、お手伝いしに出社することになったのだ。
アジャイルやらカイゼンやら1on1やらメンターやら、多分いろんなことをする。
この働き方に合わせて名刺の肩書きも変わる。肩書きを乗り換える。「駅すぱあと」の会社だけに。我ながら、かなりつまらないダジャレだ。
まぁ、下記のような肩書きになる。
「部長兼カイゼンエバンジェリスト」から「アジャイル・カイゼンアドバイザー」
他部署の社員からすると、これまでも「カイゼン・エバンジェリスト」として全社対象に「スクラムマスター業」をしていたから、そんなに大きく変化することはないかもしれない。これまで同様にカイゼンするお手伝いで関わらせていただければと思う。
やることや見た目は変わらなくとも、1つ大きな変化がある。
新たなキャリアが、複業やらパラレルキャリアやら働き方改革やらの1つの実装例になるのだ。社員には転職以外の選択肢が1つできたことになる。
もしかしたら、これまでのヴァル研の歴史のなかでは異例なのかもしれない。
定年後の嘱託社員契約ではないので、会社側からは、いろんな考慮をしていただいた結果なんだと思う。
「二度と会社の敷居は跨がせないぞ!」と言われるかもしれないと思っていたので、この案はいろんな意味で嬉しい驚きだった。
きっと経営陣の考え方も、時代に合わせて変わってきているんだろう。
これまで退職していった優秀なエンジニアの方々の恩恵を私が受けているのかもしれない。
本当にいい会社だと思う。
そして、今後もメディア等に露出する際にヴァル研の肩書きを使ってサービスや企業ブランドを宣伝したり、イベントで登壇して採用に繋げたり、陰ながらエバンジェリストとしても行動していくことになるだろう。
14年間をふりかえってみる
ふりかえってみると、まぁ、いろんな仕事をしてきた。14年もあれば誰しも様々な事を経験するだろう。
プログラマーとしてIPv6マルチキャストのMLDv1・MLDv2パケットをRFCを読みながらバイトコードをコツコツ積み上げたりする研究開発、緊急地震速報アプリ開発、駅すぱあとミドルエンジンのhttpサーバー開発、REST風なRPC-XMLのWebサービス開発などをやってきたり...
プロジェクトマネジメント、ミッション・ビジョン・バリュー制作仮想CEO、ラインの管理職、開発部門長、メンター業、ゴミ拾い業、勝手に制度作っちゃう業、勝手に文化作っちゃう業、講師を勝手に呼んできて社内研修やっちゃう業、エバンジェリスト業、なんにも解決しない1on1やるよ業、etcetc。まぁいろんな事をしてきた。
そして、下記のようなイベントなどで登壇させていただいた。それを聞いてくださった皆様もいらっしゃるだろう。エンジニア界隈で「ヴァル研究所」や「駅すぱあと」の名前を知ってもらうことができたんじゃないだろうか。良いのか悪いのかわからないけど、同じ場を共有した皆様ありがとう。呼んでくださった運営の皆様、本当に感謝です。
デブサミ、夏サミ、デブサミ関西、AgileJapan、RegionalScrumGathering Tokyo、XP祭り、ScrumFestOsaka、DevOpsDaysTokyo、レッツゴーデベロッパー、ジュンク堂池袋本店出版イベント、AgileSamuraiBaseCamp、BPStudy、アジャイル札幌、アジャイルの輪栃木、DevLOVE関西、DevLOVEなどなど
「DevelopersSummit 2018 ベストスピーカー賞総合3位」や「ITエンジニア本大賞2019技術書部門トップ3」も頂戴できたんだっだ。ほんと、皆様のおかげ。ありがとうございます!
もしかしたら、社外的には、この3つの接点の方がメジャーかもしれない。
・書籍 カイゼン・ジャーニー
・見える化・カンバン・カイゼンの会社見学ツアー(見える化大作戦)
・アジャイルや認定スクラム研修会場スタッフ
こんな働き方ができたのは、社内での複業1人目ってのもあるだろう。会社が私の複業をOKしてくれたおかげで、仕事や露出の幅が格段に広がった。その代替に自分の時間は極端に減った。
複業で起業をして、営業・請求事務・総務・法務・税務署業・経理・コンサルティング業・自身がコンテンツとして働くと、いろんな視座や視野で業務をやらざるを得なくなった。
こういった仕事をこなすなかで、必然とヴァル研では手に入れられなかった視座を経験できた。他部署の視点だったり、経営から現場までの異なる視座を手に入れられたというわけだ。
他者の見解を持てると「こういう仕組みだからこういうマインドになるのか!」など、「なぜこういう言動になるのか」を実感できた。これは大きな成長だと思っている。
会社を経営・運営することをほんの少し体験したことで、エンジニア以外の観点で必要なスキルや視点を獲得できたのは本当に大きな学びだった。
退職の理由
さて、本題の退職の理由を述べてなかった。
ずっと取り組んできた「会社の文化を変えよう」という勝手に作った個人ミッションがある一定レベルまで達したことが大きな理由だ。
ヴァル研の「見える化・カイゼン・アジャイル文化」は、社内と社外での評価は異なるけど、社外から見た時に、相当のレベルまで到達していると勝手に思っている。
もし、アジャイル界隈の人たちに「アジャイルな会社は?」という質問を投げかければ、たぶん上位にノミネートされる会社ではないだろうか。
総務、インフラ、プロモ、開発、コンテンツ制作、監査まで、全社組織で見える化やカイゼンやバリューストリームマッピングが浸透していてる。(詳細は仲間と書いたWEB+DB PRESS Vol.111 特集見える化大作戦)
たとえば、総務の社員から「スプリント」や「WIP」(Work in progress:仕掛中の仕事の数)や「ベロシティー」などの発言が普通に出てくる。朝10時になると、そんじょそこらで朝会が始まっていたり、いたるところで「問題 vs われわれ」の構図(『あなた vs 私の』 構図ではなくて)がホワイトボードの前にできあがっていたりする。
そんな会社はきっとレアケースだろう。私がお膳立てしたとはもちろん言っていない。もう自走しているのだ。まぁ結構はじめの頃から。
「全社でスクラムが実践できているか?」と、問われれば、そんなことはない。しかし、アジャイルの1つの答えがあると思っている。書籍アジャイルサムライ(p.14)のように「やり方がたった1つなんてことはないんだ!」。「僕ら自身が編み出したやり方!」でいいんだ。我々のアジャイルで良いんだ。
「会社の文化を変える」というのは「売上増やコスト減」とか「新規事業を立ち上げる」などと比較するものでもないけれど、それなりに大きな企て・大きなミッションだと思っている。それなりにチカラを注ぎ込んできたし、それをやり遂げたというか、一定の成果が出たということが嘘偽りのない「卒業する理由」だ。
スクラムマスターとしては、離れる時期だし、私がいたスペースは開けないといけないのである。
まぁ、ちゃんとお給金は支払われるし、カイゼンマインドも浸透しているし、優秀な若手もいるし、心あるミドルもベテランもいるし、尖ったエンジニアもいる。そして何よりも、全社員を隔てなくコミュニケーションできるマザーテレサのような女神がいたり、どんな仕事も前向きにフロント開発から広報から秘書業務からイベント設計などがフルスタックでできる広報プリンセスがいる。外部から光は当たっていないがヴァル研はそんな人材の宝庫なのだ。なんだかんだ会社から問題はなくならないけれど、それはどの会社にも当てはまるし、彼ら彼女らがもっともっと活躍できるようにバトンタッチをしていかないといけないのだ。
そして、カイゼン・ジャーニーという書籍のおかげで、執筆者への仕事の依頼がバイネームでチラホラあったりする。
そんな人たちを勇気づけたり、自己効力をアップさせたり、チームで働くことの価値を一緒に考えたり、そんな時間の使い方をしていきたいと考えるようになった。
ヴァル研が成長するときの経営課題や現場の課題がそれなりにある中で、本当に申し訳ないという思いでいっぱいである。
でも、社員としての働き方では制約が多いし時間が足りないし、そんなのが色々絡み合って出した「退職」という結論なのである。
個人的なワガママな意思決定で、関係者からしたら迷惑な話ですよ。でもそれを受け入れてくれた会社。本当にいい会社だ(2回目)。
周囲の方々への感謝の言葉
新たな働き方を応援してくれる経営陣、これまで一緒に仕事をしてきた仲間、講演で来社くださった著名な皆様、コミュニティーで切磋琢磨してくれた同志、プロデュースしてくれたり、勇気づけてくれる人たち、会うと元気をもらえる人たち、年齢性別問わずこちらが勝手に内緒でメンターとして指導を受けている人とか、もう感謝の言葉しかない。
社内で苦楽を一緒に共にしてきたこれまでの部署のメンバー、関わったメンバー、アジャイル推進員会のメンバー、無茶振りを受け入れてくれたメンバー、本当にありがとう。
勉強会コミュニティーで、アジャイルのことを相談したり現場の悩みを共感した仲間がいたからこそ頑張れた。勉強会で一緒に企てだったりお酒を飲んだりした仲間の人たち、本当にありがとう。
そして、会社の文化を変えるために、講演やワークショップに、社内の誰の承認も得ずにお呼びした方々、今の会社や私があるのも先達のおかげです。
その時々の社内の問題にフォーカスを当てて、新たな知識のインストールや共通言語化や課題解決など、ご支援いただいた皆様ありがとうございます。
サムライ西村直人さん、DevLOVE市谷さん・上野さん、学習する組織の小田理一郎先生、KPT天野勝さん、DDD増田さん、FearlessChange角さん、アトラクタ原田騎郎さん・吉羽さん、マイクロソフトの牛尾さん・安納さん、永和システムの平鍋さん・木下さん、Kyonさん、元サイバーエージェント横道さん、元楽天の及部さん、直近では他者と働くの宇田川先生、認定スクラム研修のアギレルゴの川口さんetcetc
こんなにも講演やワークショップを実施できてしまうんだから、会社の懐の広さはやっぱりすごい。いい会社だ。大事なことなので3回言いました。
うーん。
「このままヴァル研にお世話になり続けた方が、気心知れているし楽だろうなぁー」「給与も安定するよなー」「仕事自体も悪くないよなー」「MaaSのニーズすごいよなー」と脳裏によぎる。良い事ずくめではないか!辞めるという決断をしたこと自体が「かなりアホなんじゃないか」とすら思い始めてきたw
でも、やっぱり違う。
居心地が良すぎるというのは何かを失っているんだ。停滞しているんだ。まだまだ世の中に貢献することを軸にして、自身も同時に成長していかなくてはいけないんだ。
今後やっていくだろうこと
今後、生計を立てていかなくてはならないわけだけど、これまでアジャイルで教わってきたことや実践してきたことをベースに、いろんな会社さんをご支援していくことになるだろう。
下記のように「会社組織の文化づくり」から「個人の自己効力をアップさせる1on1メンター」まで、様々な立場の現場に向き合うことになるだろう。
きっと、これまでの経験や私の行動特性が活きる仕事というのがあるだろう(希望的観測)。
カイゼン・ジャーニーの「カイゼンさん」としてのお仕事をたくさんしていくことになるだろう。シンプルにいうと、業務改善や見える化やアジャイルやスクラム支援などを生業にしていくわけだ。
ヴァル研で継続する支援も第3者視点の立ち場になるので、メリットもあると思っている。社員からすると、上長や上位職者や評価者ではなくなるし、部署の垣根がなくなるので心理的安全性のもと仕事がしやすくなったりするだろう。
どうしたって社員からすれば基本給や賞与に影響するであろう役職者には本音を言えなかったり、損得勘定が頭をよぎるのは致し方ない。それが少なくなる関係性が良い方に傾くと楽観的に思っている。
経営陣でも現場でも中間管理職でもない立場。学校にいる「保健室のお姉さん」や「用務員のおじさん」のような存在である。気軽に話せる相手になれるといいなと思っている。そういう関係性の中で現場の課題を一緒に解決していくわけだ。うーんでも楽観的すぎるかもね。
そして、これまで複業だった会社のエナジャイル(https://enagile.jp)の活動がもっともっともっと活発になるだろう。
カイゼン・ジャーニーの共著者でありCEOの市谷さんにはお世話になりっぱなしになる。
また、DevLOVEコミュニティーの仲間の皆様ともいろんなイベントを企てていくことになるだろう。越境する仲間のみんな、これからもよろしくね。
つらつらととめどもなく書きなぐってしまった。14年間いろんなことがあった。いろんな出会いがあった。いろんな別れもあった。
これからも、いろんな出会いと別れが待っているだろう。今日はどんな出会いがあるのだろうか。じゃーねー(Journey)
ご連絡は
ヴァル研究所へのMaaSや公共交通のお仕事や転職希望のご連絡も大歓迎です。
新たな業務支援のご連絡などは、株式会社エナジャイル(https://enagile.jp)でも、個人宛でもOKです。
とりあえずfacebook(araratakeshi)やtwitter(@araratakeshi)へご連絡をいただければと。
2020年2月のポエム
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