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E-sports は本当にスポーツと呼べるのか

1. 目的
全世界のプレイヤー人口は,1億3000万人もいるとされ,急速な発展を遂げるE-sportsの世界.海外ではアジアオリンピックの種目に選ばれるなど,「スポーツ」として扱われてきているが,日本では「スポーツ」ではなく「ゲーム」として見られがちなのが現状である.では根本的にスポーツの定義は何なのだろうか,そしてE-sportsは本当にスポーツと呼べるのだろうか.その根本的な疑問を抱いたので,本テーマについてE-sportsの歴史やE-sportsの市場規模など様々な角度から調べ,考察を行った.

2. 方法
主にインターネット,関連書籍を用いて調べた.

3. 結果
3.1 スポーツの定義について
そもそもスポーツの定義とは何かを定義する必要があるが,そもそも明確に定義されているわけではない為,調べた結果からここでは以下のように定義する.
1. 「一定のルールに則って勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする身体運動.」
2. 「娯楽,楽しみ,気晴らし,レクレーションに値するもの.」
3. 「競技の結果が、本質的に、機械的な推進力に依存する競技、種別もしくは種目でないもの.」
以上のように定義し,以下でE-sportsの歴史や現状からスポーツと呼べるかどうか考察する.
 

3.2 E-sportsの歴史
 そもそもE-sportsとはElectronic sportsの略で,コンピュータゲームを用いた競技のことを指す.あえてマインドスポーツやモータスポーツになぞらえて定義するなら,ゲームの中の公平で公正なルールに基づき,プレイヤーだけでなく観戦者も交えて,技術や駆け引きを競って争うスポーツである.  
 E-sportsの歴史で文献に残っている最初のゲームを用いた全国規模の競技大会自体は,「セガTV機全国コンテスト」である.そしてそれ以降もゲームの発展・普及に伴い,ゲームの競技性を主軸に置いた大会が増えていった.特に1990年代後半からはPCの普及が進んだため,PCゲームのプレイヤーが増加し,それに伴い開催される大会の数も徐々に増えていった.そして世界中でE-sports関連の公的機関が誕生し,世界中の企業や公的機関がE-sportsに注目し始める.また,企業が注目し始めることにより「プロゲーマ」が誕生する.
 プロゲーマとは野球やサッカーと同様に,知名度やスキルの高いゲームプレイヤーがコンピュータゲームをプレイすることによってスポンサーや大会賞金などで生計を立てるプレイヤーのことを指す.現在では梅原大吾をはじめ,120人程度が日本からも誕生している.
 そのような歴史を踏まえて,日本では約3000万人のプレイヤー人口,世界で見ると1億3000万人のプレイヤー人口(テニスを超え1位バスケットボール,2位サッカー,3位クリケットに次ぐ4位)を抱える大きな競技種目の一つにまで成長した.

3.3 海外と日本におけるE-sportsの位置づけ
  海外のE-sports事情を国ごとに紹介し,日本と比較する.

・韓国
韓国は世界初のE-sportsのプロリーグを立ち上げてから,以降国を挙げてこのコンテンツ産業を大きく成長させた.大きくコンテンツを発展させた背景には,主に3つの背景がある.まず一つ目は,「PCバン」というゲーム専用のネットカフェビジネスが急速に発展し,ピーク時は全国で2万ヵ所以上が24時間営業しており,誰もが気軽にPCゲームに触れ,プレイできる環境が整ったこと.そして2つ目が韓国内にE-sportsが浸透する前から世界初のE-sports専用チャンネル「On Game Net(OGN)」がケーブルテレビ上で開始されたこと.3つ目は,国内のE-Sportsプロリーグが発足されたことでプロチームがたくさん登場し,多くの国内外問わず大企業のスポンサー獲得に成功したことでE-sportsのコンテンツを一気に拡大させた.
以上の背景から発展し,国内で有数のトップコンテンツにまで成長したことより,様々な大学で「e-sports専門学科」が設立され,e-sportsの人材育成をするカリキュラムを提供する教育機関が増えるなど,国も一体となってコンテンツを成長させている.

・中国
 中国では韓国ほどコンテンツとして成長はしていないが,Alibabaが大規模なE-sportsの大会,イベントに投資を,当時米国の企業であったRiot Game(プレイヤー数9000万人,リーグオブレジェンドの開発元)を中国No1のゲーム会社Tencentが買収するなど確実にE-sportsのコンテンツを成長させている.

・アメリカ
 スポーツのビジネス市場規模1位のアメリカではもちろんE-sportsも盛んである.昨今ではリアルスポーツのプロリーグと同時並行でE-sportsのプロリーグを実施する例が多いが,まさにアメリカではそのスタイルで運営されている.例えばNBAやNFLなどの国民的スポーツとともにプロリーグが開催されている.また,全米のプロスポーツ専門チャンネルESPNでもE-sportsのプロリーグを放送するなどアメリカでも韓国のようなモデルでコンテンツが成長している.

 海外では上記の様に「スポーツ」としてコンテンツが形成されている.なお日本におけるE-sportsコンテンツは,海外と比べて遅れているといわれているが,その原因としてかのような理由が挙げられる.
1. 日本では主にコンシューマ機でのゲームが普及しており,PCでゲームをする認識が低い為.
2. 賭博法や景品表示法,風営法の関係からE-sports大会において高額な賞金を設けることができず,大会が開催しにくいこと.
3. E-sports選手の発掘が遅れ,優秀な人材が集まりにくいから.
4. ゲームは「娯楽」,「遊び」という意識が根強く,「スポーツ」としての認識が低いため.
 以上のような理由から日本は他国と比べて,コンテンツの成長が遅れているといわれている.しかしながらゲームをする文化は他国にも劣らず存在するので,今後の国内でのE-sportsの認知度の向上や国の対策次第ではこの日本のゲーム文化の「ガラパゴス化」を解消し,コンテンツとしての成長を期待できるとされている.

3.4 E-sportsの市場規模
 本項目は文化論的な側面は薄いが,スポーツとしての比較材料として記す.
2019年度は全世界で10億ドルを超えると見込まれていて,E-sports界にとって大きな節目になると予想されている.2018年度での推定市場規模はすでに8億6500万ドルに達していて,その8割がメディアや,広告費,スポンサー料によるブランド投資によるものである.またそれ以外の賞金面では,2018年度最も高額であった大会では総額1億5000万ドルを突破している.この数字はスポーツの市場規模としては十分といえる数字なのではないだろうか.
 
4.考察
 「E-sportsは本当にスポーツと呼べるのか」その問いに対して,「十分スポーツとして成り立つ」と言える.その根拠として,まずスポーツの定義より,「娯楽,楽しみ,気晴らし,レクレーションに値するもの,一定のルールに則って勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする身体運動」この点に関してはE-sportsでも同じことが言え,十分にスポーツの要素を満たしていると言える.他にもE-sportsの歴史が浅いとは言え,しっかり歴史もあり市場規模的にも十分な数字が出ている.よって以上のことからE-sportsはスポーツとして成立すると言える.ただし,スポーツとして成り立たせる上での重要なポイントがあり,それはスポーツの定義の部分にもあったが「競技の結果が、本質的に、機械的な推進力に依存する競技、種別もしくは種目でないもの.」の部分である.これは競技シーンにおいては非常に大切であり競技として成立するかどうかを判断するうえで大切なポイントとなってくる.例えば機材トラブル等で人数差が生じたり,状況が変わってしまうことはスポーツとしては極力あってはならないことである.他にも選手の使用する機材に大きな性能差があったり,競技の本質とは別のところで勝敗に影響するようなことがあってはならない.電子機器を用いる以上他のスポーツと比べイレギュラーなことが起きやすいことは事実であるが,競技と成立させるためにもこのような状況を生まないように運営側は細心の注意を払う必要があると考える.

5.参考文献

[1]閲覧日9/27日【グローバル市場から見るe-Sports最新動向】いまeSportsの世界で起きている6つのこと
   URL: http://jp.gamesindustry.biz/article/1907/19071702/

[2]閲覧日 9/26日 eスポーツとはどんなスポーツ?話題のオリンピック新種目「eスポーツ」を丸裸!
URL: https://www.bauhutte.jp/bauhutte-life/e-sports/

[3]閲覧日 9/28 5分でわかるeスポーツ!その歴史から市場規模まで【総務省資料サマリー】
URL: https://shibuya-game.com/archives/25056
主に使用したサイトを記載させていただきました.他にもたくさん引用させていただいています.