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第一印象

男性陣
「じゃあこの中で一番彼女いない歴が長そうなのは何番ですか~?」
女性陣
「んー3番かなー」
「ありえるー」
「私もそう思うー」
「やっぱそうかなーじゃあ私も3番かな」

「ふーん、そうみえるんだー、へー」

これはあるゲームでの男性陣と女性陣の会話の一部である。
ちなみにこの3番は俺である。 平静を装っていたが、心の中は揺れていた。俺はそんな風に見られているのか・・・

今回は4対4。
幹事は俺ではなく、過去何回か飲んでいるjmさん。 そして前回同様jmさんの会社の同僚のichiさんと、2人の共通の後輩のトゥさんの4人。

今回、突然メンバーの1人にドタキャンが出たらしく急遽呼ばれたのである。 最近いろいろ忙しくなってきて俺自身は全然やっていなかったのだが、他ならぬjmさんからの助っ人要請、いつもお世話になっているし快くお呼ばれさせていただいた。

待ち合わせは原宿駅。 原宿なんていつ以来だろう。 意外といろんな世代がいる。 田舎もんの俺にとってはわかりやすい街だ。
お店に行く前に事前集合というのは久々だった。
なんかドキがムネムネしながら集まってみると女性陣の皆さん若い感じだったが、前回のjmさんの飲み会の時とはまた一風違った感じである。

お店の場所は表参道。入ってみると俺の生活には出てこないような高い天井と謎のシャンデリア。 さすがjmさんシャレオツだ。
大人の社会人気取りで、こじゃれたメニュー見てるふりしながら。心の中では落ち着かない。料理も大きな皿の真ん中にパスタ(スパゲティとは言わない)が 密やかながら己を主張する感じで小盛りになっている。もちろんフォークとナイフ。
他のお客の小さな話し声とフォークとナイフのあたる音しかしない。
昔行ったフォークランド紛争の時のフォークランド諸島最前線のような緊迫感を彷彿とさせる雰囲気の中、今回の合戦が始まった。

物静かな雰囲気の中、まずは自己紹介がスタート。
聞けば女性陣はこの春社会人になった人が幹事含めて3人。
短大をでて、社会人3年目の人の4人で全員22歳。前回のギャルと違って明らかに育ちが良さそうでお金持ち風。
きっと学校の帰りにみかんをもぎ取ったり、家で飼ってたニワトリをイタチに持って行かれたり、中学校の帰りにイノシシに遭遇したりしたことはないんだろうな。
以前の俺ならその若さに驚くが、jmさんということで既に免疫ができている。しかしjmさん、こういう方々とどこで知り合うんだろ・・・ 

当たり障りのない大人の会話に終始して開始1時間半ぐらいをすぎたところで この状況を打破すべくichiさんがゲームを始めようと提案した。

このゲーム、通称「ファーストインプレッションゲーム」 と呼ばれているらしい。 ルールはこうだ。

  1. 男性陣だけで話し合って相手の女性陣それぞれに番号を付与

  2. 女性陣だけで話し合って相手の男性陣それぞれに番号を付与

  3. お互い、自分が何番を付与されてるのかは分からない

  4. たとえば男性陣が 「この中で一番優しそうなのは何番?」 と聞くと女性陣が 「んー2番かなー」 と自ら男性陣に付与した番号を答える

  5. でも男性陣はその2番が誰に付与されてるかは分からない

  6. これを男性陣女性陣交互にいろんな質問で繰り返す

  7. そのうち誰が何番かお互いなんとなく分かってきて、 何となくムフフ、そしてエヘへとなる

しかし今回はさらに暗黙の了解があった。
男性陣女性陣の幹事同士がお互い合意していて、男性陣のみ自分が何番を振られたのか事前に分かっていた。
男性陣は jmさんが1番、ichiさんが2番、俺が3番、トゥさんが4番

最初の方はお互い軽めな感じで
「一番優しそうなのは?」
「上司と仲が良さそうなのは?」
「親を大事にしてそうなのは?」
という質問だった。ここまでは良かった。

このゲーム、3周ぐらいしたときに気づいたのだが、否定的な質問をするとみんな不幸になる可能性が高い。
例えば女性陣に
「この中で一番料理できなさそうなのは?」
と聞かれたとき、男性陣がそれぞれ 1,2,3,4番と結果的に答えてしまい、全員不幸になる恐れがある。
なのでこの場合 は
「このなかで一番料理ができそうなのは?」
と聞いていただけると比較的幸せなのである。

時間がたつにつれ、内容はだんだん過激な方向にエスカレートしていった。 男性陣は自分が何番なのかを知っているため、一喜一憂する。
文頭の質問もかなりへこんだが、他にも俺が該当する質問でへこんだものはたくさんあった。

<へこんだ質問その1>
男性陣
「じゃあこの中で仕事ができなさそうなのは?」
女性陣
「4だよねー」
「3か4かなー」
「だねー」
「3は逆にだめなんじゃない?」
「逆」とは・・・

<へこんだ質問その2>
男性陣
「じゃあこの中でエッチが下手くそそうなのは?」
女性陣
「3だよねー」
「わかるー1は上手そう」
「たしかにー」 
「3はなんかある意味下手くそそうだよね」
「ある意味」とは・・・

<へこんだ質問その3>
男性陣
「じゃあこの中で今度2人で会ってもいい人は?」
女性陣
「1かなー」 
「私は2」
「3と4はないね」
「ないない」(一同頷く)
ですよね

他にも「足が遅そう」 「プライドが高そう」「せこせこ貯金してそう」 とかたくさんあった。 好意的な印象は1のjmさんに集中していた。

はっきり言って中盤以降はかなり動揺していて平静を装うので精一杯。
デザートを普通に食べながら
「えー3はだれなんだろー俺が3じゃないことだけを祈るっ!」
なんておちゃらけて言いながらながら参加していたが、

デザートの味なんて全く覚えてないし、
気づけばフォークとナイフを左右逆にもってたりしたし、
普段絶対食べない嫌いなサクランボをいつの間にか食べてたし、
テーブルの下で足が生後間もない子鹿のようにワナワナしていたし。

その後、2次会でダーツバーに行って解散したが、ダーツの結果も、そこで何を話したかも覚えていない。相手の連絡先ももちろん聞いてないし聞かれもしなかった。あのゲームがずっと気になっていた。

家に帰って、少し落ち着いていつまでもイジイジ気にしている俺を客観的に見て、自分の打たれ弱さ、器の小ささを改めて感じた。 俺の器はきっとおちょこの裏ぐらいしかない。
俺は女性からどう見られているのか。
自分でもそんなに良いように見られてはいないだろうと思っているし、自分に自信があるわけでもない。分かってる。愛嬌だけで乗り切ってきたってことぐらい。
が、今回ばかりはそんな風に見られているのかと愕然とした。
でも、もしかしたら今まで自分がそれを知る機会がなかっただけで、相手には同じような印象を持たれていたのかもしれない。

自分を客観的にみることってなかなか難しい。
そういう意味ではこのゲーム 自分の第一印象を知るにはいいのかもしれない。 正直、辛かったが自分にとって良い機会だったと思う(ようにしている)

ichiさんが帰り際に
「あのゲームはあくまで第一印象で当てになりませんから。前の合コンであのゲームでjmさんをいいって言った女性と結局俺が付き合ったんですよ。」 と慰めてくれた。

ありがとうichiさん。
でもあんた、
結局付き合ってんじゃん!

第一印象は当てにならない、と思いたい。

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