三度目の正直

一度目の本上映を普通に見逃し、二度目(目黒シネマだったかな)も気付いたら既に終了、三度目日付と時間を何度も確認してようやく観に行ってきた。
「セトウツミ」

75分間の無駄話。ざっくりとした内容だけで、何じゃそれ観てみたい!と公開前から気になっていた作品。
内容だけでも気にはなっていたけれど、もう一つの決めては大森監督の作品という点。
デビュー作を観て以来、ずっと気になる監督。「ゲルマニウムの夜」はあまりにも衝撃的だったな。
親子三人のトークショーを目当てにいそいそと出掛けてみたら、その映画の内容にカウンターパンチをまともにくらった。
ああいうヘビーなものがお得意なのかしら?と思い、これまでの作品をチェックしてみたら(全部は観てません)どこか重めな内容のものが多い印象を受けた。
微妙に距離感のある関係性や、ローテンションなやり取り。分かりそうで分かりにくい人間性など。
ちょっとヒリッとする表現をいくつも感じた。

そんな今までの作品を受けてのこの「セトウツミ」
全然予備知識もなく観てみたら、本当に主人公二人の無駄話。
高校生二人の何でもない一日のほんの一コマ。
それを池松くんと菅田くんが二人芝居のように延々演じる。という話なのだけれど、やはりここでも独特の間が展開されていた。
ハイテンションの瀬戸とローテンションの内海。お互い相容れているのか、ふと訪れる微妙な間にシュールさが滲み出ていた。ただ他の作品のようにひりつく感じがないところは救い。

全編ひたすら二人の喋り。時折エピソードを絡めたり珍入者も登場するけれど、ずっと二人の姿を追ってその光景をただひたすら観るというのは、なかなかに新しい試み。
何かが起こるわけでも、起こすわけでもなく日がな一日淡々と。まあ、それが普通の日常なんだけどね。
こんな映画の形もあるもんなんだな。
これは大森監督の挑戦ともいえる作品だと思う。目の付け所が面白い。
あとはもう主演二人の魅せ方に限るかな。喋りだけでひたすら引っ張っていくというシンプルすぎる設定。それだけなのに、ぐいぐい引っ張られていきましたよ。
上手いというか、惹き付けられるというか。

かなり久し振りに観た映画。
面白かったぁ!というよりは、うん、なんか良かったよと振り返るような作品。
三度目の正直で観に行けて良かった。
新文芸坐、再上映してくれてありがとう。