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すき間にある得体の知れない、

仮想の詩集を編むのに時間を使っています。
現実に形になるあてはありません。
詩を置いておきます。

すき間にある得体の知れない、
               

どこにもいない
見つからない消されても
陽にあたれば人影ができる
からだ、葉のようだ

影と陽ざし
うたげのなかで
小さなメトロの輪をかいて
歩く旅につかれてねむる
そとまわり生まれ
うちまわり死なれ
キッチンで皺をきざむ
紙相撲にさえつかれて
線になる

鉛筆でうすく
塗りつぶした駅は
よのなかの小野が、夜中
よこぎる野川に水が足りなく
めくれた土にうつらない
影をみていた、ちるちら
おそらく葉のようだ

明け方
めくれた土を歩いて
うすい鉛筆をひげに結わえたまま
消えそうな川をなめている
トローチの浮き輪で
川に沈む指を
泳ぐ
するする言葉をひげから伸ばして
次の駅へとめくれていく
このよのひとりいっぴきが
めぐる駅の名
小野も猫も(お弁当も)
あるのでしょうね、と
ねじりだした歌の
シャウトのすき間
駅と駅のあいだに
小さな箱がある
その箱に入って
どこにもいない
見つからない消されても
聞こえる音がある
野中
つぎは、枯れた野川の彼岸花
つぎは、つけ麺屋の四角いテレビ
新宿のかわりに商店街
目黒のかわりに公園で花火
うたげのなかでそれは
細くメトロの輪をかいて

  二、

樽と樽
シャウトとシャウト
風とからだブレーカー
すき間に箱を置いて
そこに入ると
音は色に変わり
色はミサイル声(せい)に
ゴムチューブ製のラジオが鳴っている
たまに自分も鳴らしてみるのだ
(つまった打球・・)
声はひもにほころび
ほろびが微笑むまばたき
ああ まぼろしのまほろばよ
おふろばでかにを洗う水夫
かにくを洗う水夫たちよ、と
ヨーヨー遊びのふくらまない下駄をはいて
タクラマカン砂漠でぼくはデッドボールを浴びる
距離、七千キロ
ひと箱

砂の一塁ベースをめざす

ざらざらした専用バスに乗り
砂漠公路を経由して
箱からはみ出し
たまに箱に入り
干からびたみかんをちぎりながら
ミサイル声に乗って

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