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ラリーランド

ラリーランド

指でハンコつきゃよォ、洗えないチノ、指紋にんしょが、まさるばあちゃんとおなじゆびと歌いながら午前2時少年がチャリンコ時間走っていた。
メロディを忘れた―錆びた階段を昇りかけて郵便受けに引き返す。封筒をくわえる。封の先を口で押えて、噛みちぎる、と
お寺が楽しい季節になってきました
誤字からはじまる中ほどに
ほうき星という言葉があった
血走った体が冷まされていく感覚。今日は部屋の鍵を閉めずに寝よう。泥棒が入るかも知れない、部活のように。ほうき星―障子も開けたままにして布団に入る。ほうき星
それはいないようだった

次の休日に電車に乗った
ひろい場所へ
手紙を返せるくらいひろい郵便受けをみつけに行った
遠い卓球の記憶
また始めよう、か
途中でやめたラリーの続きを

(はいっ、)

たまに行くから多摩なのかな
たまにしずまるのがわかるからしんたま
きさま、と言わなくなった電車に揺られて
(はいっ、)
曲がるみどりの景色を見るのがすきだった
どこにいる?
川下りをしている写真
半分口をあけている人、人、人
まだ生きてる笑え
たしかめる六百六十円也、はいっ、

みんなひとりでどんな雑談をしているのだろう
胸、胸、胸

とぎれとぎれの雑談を
いない人と
自分ではじめたり
野菜にさわる
ブロッコリー

階段をのぼると
あんなにうるさかった蝉の声が
止んでいる
ここ数年で蝉をうるさいと言う人が増えたんだよ
だから昨日までうるさかった
次の虫も鳴かない
静かすぎる時間
ほうき星(はいっ、)
許可もなく通過していく電車(もう息が切れた、電車打ち返せない
どこにいる?
川、川、川、ただ揺られて
曲がっていくみどりの先に
郵便受けが景色になって流れていく
B面があるんじゃないか
裏返すとブロッコリーが水に浸かっている
もう
生き延びることだけをしている日があって
それがいやになっても
いいんだからね と見えない少年が老いてもチャリンコ時間走っていく
ブロッコリーの傘をさして

灯台もとくらし
の灯台は三十代(はいっ、)

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