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トキ野生復帰は不要では?と思ってる方に知って頂きたい3つの事

今年も、佐渡でトキの放鳥が行われました。1999年に中国からトキのつがいが贈られて以来、順調に数を増やし続け、2008年から野性環境下への放鳥が始まりました。現在では100羽を超えるトキが、日本の野性環境下に生息しています。

反面、『トキの繁殖なんて不要だ』というご意見をお持ちの方も多いかと思います。 そんな方にぜひ知って頂きたい事を書いてみます。

トキの繁殖及び野生復帰の目的

これは単にトキという品種を保護するためだけにやっているわけではありません。

トキを単に保護するのではなく、トキを野生に戻す(正直「野生復帰」という表現が妥当なのかは個人的にも疑問がありますが)という事は、トキだけでなく生態系の復元や保全も行わなければなりません。

トキはもともとドンくさい鳥です。加えて人里近くに生息します。そのトキが自然環境化で生息できるようにするには、「人間」と「トキが生息できる自然環境」が共存する環境を作ることが必須になります。

トキは単なる神輿で、破壊された自然環境を取り戻し、かつ人間と共存できる仕組みづくりという大きな目標があります。

中国産のトキ

「あれは中国産のトキだ、日本のトキでは無い」と思っている方も多いと思います。たしかのそれは事実です。事実ですが、では「中国産」「日本産」の違いは何でしょうか?

佐渡で最後の野性下のトキ5羽が保護された1981年、中国・洋県でトキが発見されました。(それ以前は中国のトキは絶滅したと考えられていました)中国に生息していたトキと、日本に生息していたトキのDNAを調査したところ「亜種と呼べるほどの相違も無かった」とされています。

つまり中国のトキは、生物学的には日本のトキと全く同じであり、「中国のトキ」と言っても、それは人間の引いた国境線の違いでしかありません。

また、洋県でトキの保護・人工飼育を始めた際、それまでの日本でのトキ人工繁殖のノウハウが導入されました。

中国・洋県のトキも決して安定した個体数を維持できているわけではありません。日中両国で協力してトキの保護を行っているのが実態であり、決して「中国に“すがって”日本のトキを復活させようとしている」とは言い切れません。

トキがいかに大切な鳥か

三種の神器ひとつ「草薙の剣」これを奉っている熱田神宮で使用される宝剣に、実はトキの羽が使われています。この宝剣は20年毎の式年遷宮の際に作り直さなくてはなりません。

皇室にとって、日本国にとってとても大切な熱田神宮なのですが、トキが日本国からいなくなると皇族に縁の深い熱田神宮の神事に重大な支障が生じてしまうのです。

※考えてみてください。「なんでトキだけそんな特別扱いして必死に守ろうとするのか?」  その答えが実はココにあるようなのです。

それだけに、中国から日本に最初のトキのつがいが贈られたときは、中国の総書記から天皇陛下への贈り物、とされました。

そのトキのつがいを天皇陛下が国民に賜られ、佐渡トキ保護センターで人工繁殖が行われています。

現在佐渡にいるトキ達は、その天皇陛下から賜ったトキの子孫という事になります。(※全部じゃないですが)

つまり、トキは熱田神宮や皇族にとってだけでなく、日本人にとっても、とても大切な鳥なのです。

もし日本から完全にトキがいなくなってしまったら、トキの羽を必要になるたびに中国にお願いして譲ってもらわねばならなくなります。それはとても不安定な事で、避けたいところです。

だからそこ、安定したトキの数を確保していくためにも、単に数羽を飼育するのではなく、野生復帰くらいの規模で取り組まないとならないのです。

(次回は、“最後の日本トキ”キンちゃんのお話を書きます)

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