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最新戦法の事情【振り飛車編】(2021年2・3月合併号 豪華版)

どうも、あらきっぺです。

タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋の最新型を解説したいと思います。

なお、当記事の注意事項は、こちらをご覧くださいませ。

前回の内容は、こちらをどうぞ。


最新戦法の事情 振り飛車編
(2021.1/1~2/28)


調査対象局は132局。それでは、戦型ごとに掘り下げて行きましょう。


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◆先手中飛車◆
~急戦には対抗できる!~


17局出現。出現率は前回と比較しても大きな変化はなく、(11.1%→12.9%)一定の支持を得られている戦法と言えます。

先手中飛車は、後手超速にどう対抗するのかが死活問題です。基本的には、▲6六銀型で立ち向かうのが一番安定感がありますね。

そして、このとき振り飛車は▲3九玉型に組むことに一時、こだわっていました。ただ、最近の傾向としては、従来のように▲3八玉→▲2八玉→▲3八銀と組むケースが殆どです。具体的には、以下のような組み方ですね。(基本図)

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この指し方が主流である背景には、急戦にはこれで特に不都合なく戦えることが分かってきたからという理由があるからです。

まず、この戦型はお互いに目指したい形があります。初めにそれを押さえておきましょう。

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大前提として、居飛車は[△4四銀・△5二金右・△7三桂]の三手が指したい手です。けれども、何の工夫もなくそれを指していると、面白くないことになってしまいます。つまり、△4四銀▲4六歩△5二金右▲4七銀△7三桂▲5六銀という進行ですね。(X図)

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このように、銀を二枚並べて△6五桂からの仕掛けを阻止するのが振り飛車の理想形です。こうなると居飛車は手出しできないので、作戦の趣旨と異なる将棋になってしまいます。振り飛車は、こうなれば楽な序盤戦ですね。


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なので、居飛車側は少し工夫が必要です。具体案として、△4四銀▲4六歩のときに△8六歩▲同歩△7三桂と指す手が挙げられます。(第1図)

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桂跳ねを優先すれば、▲4七銀に△6五銀という打開ができますね。なお、8筋の突き捨てを入れたのは、△6五銀のときに▲9五角を消した意味があります。

ちなみに、△8六歩に▲同角は△5五銀左▲同銀△同角で5五の位を取られてしまうので、△8六歩の突き捨ては歩で取るよりありません。

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さて、こうなると振り飛車は、X図のように銀のスクラムで受け止める形が間に合わないですね。

代案として、▲5四歩△同歩▲同飛が考えられます。これは受けではなく、攻めに活路を求めた策ですが、△5二金右で中央を固められると面白くないことになります。(Y図)

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次に△5五歩を打たれると飛車の命が危ういですね。しかし、▲5九飛と引くと、△5六歩▲同飛△6五銀と攻め掛かられて非勢に陥ります。この形になると、▲9五角と飛び出る手が使えないので、振り飛車は角を目標にされやすいことが辛いのです。

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Y図になれば、居飛車は基本図から指したかった[△4四銀・△5二金右・△7三桂]の三手を指せていますし、▲9五角の筋も消せたので△6五桂も跳びやすい格好です。居飛車は、これが基本図から作りたい形なのですね。


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話を整理すると、基本図から振り飛車はX図を、居飛車はY図を目指して駒組みを進めています。裏を返せば、互いに相手の理想図を許さないために、その手前の段階でいろいろと試行錯誤することになります。これを踏まえて、話をさらに発展していきましょう。

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