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熊本のマチナカに、イベントスペースをつくろう!上乃裏CIRCUS開業日記①


繋がりが生まれる場所を作りたい!


こんにちは!  “あらきん”こと荒木です。

気がつけば、前回の記事から半年あまりが経ちました。2022年12月に開催した「クリスマスマーケット熊本2022」は、おかげさまで目標来場数を上回る71万人の方々にお越しいただき、大成功にて閉幕。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました! 

クリスマスマーケット熊本2022 花畑広場会場のにぎわい


そんなわけで、しばらく放心状態…いや、ホッとひと息ついたとき。ずっとくすぶっていた「ある思い」が再燃し始めました。

それは「新しいことにチャレンジしたい!」ってこと。

僕はこれまで様々なまちづくりに関わってきました。冬の風物詩となった「クリスマスマーケット熊本」の他にも、秋の風物詩「熊本暮らし人まつり みずあかり」や、中心街の空きテナントで市民大学を開講する「マチナカレッジ」、全国で震災が発生した時の民間支援団体「熊本支援チーム」など。

そして、これらのまちづくりの活動とは他に、2008年に創業をした『株式会社ディカーナ』という僕自身の本業の会社があります。イベント企画運営やイベント使う無線機の全国レンタル事業、ライブ配信事業などを行っています。

これらの事業に加えて新しい何かを始めたい気持ちはあったものの、なかなかしっくりくるものが見つからない。そんなときに襲われたのが、あの新型コロナウイルスです。皆さんもご承知の通り、外出自粛期間中は人が集まるイベントがことごとく中止となり、僕がなりわいとするイベント業界も大きな打撃を受けました。

この3年あまりの間、ずっと気掛かりだったのが、人と接する機会が減ってしまって孤独感が増している人が多いんじゃないか?ということ。僕自身、そう感じていましたから。それがようやくマスク着用の制限が緩和され、人と人とのリアルな交流が戻り始めてきた。

そんなタイミングでふと思い出したのが、僕にとって現在の活動の原点ともいえる『UP!FIELD(アップフィールド)』の存在でした。

熊本市の河原町繊維問屋街にあった「アップフィールド」

『アップフィールド』のような居場所を再び


『アップフィールド』とは、かつて熊本市の河原町繊維問屋街にあった、知る人ぞ知る伝説のイベントスペース&バーです。

イベントに特化した空間としてトークライブや交流会といったイベントが毎晩のように繰り広げられ、僕も頻繁に参加していました。2008年当時の僕はと言えば、東京の一部上場企業を27歳で退職して熊本に帰省したばかり。浦島太郎状態だった僕が『アップフィールド』で出会ったのが、いまや国内外で活躍している竹あかりユニット「CHIKAKEN」のチカオとミシロくんです。これまで一緒に「クリスマスマーケット熊本」をはじめとするまちづくりをやってきた彼ら。その出会いのキッカケを作ってくれたのが、まさにあの空間だったのです。そして、現在の多彩な活動を共にする仲間たちとも、このアップフールドで出会いました。

『アップフィールド』のように繋がりがうまれる空間が欲しい。アフターコロナが見えつつある今のタイミングだからこそ、リアルに繋がれる、絆を再構築できる場所を必要としている人たちがいるんじゃないか。

そうした渇望は、僕自身が「大人になってしまった」ことも理由としてあります。『アップフィールド』に通っていた頃から10年以上の月日が経ち、僕も40代になりました。ここ数年感じていたのは、大学生や20代の若者たちと距離が出来てしまったこと。僕自身、若者たちが集まるイベントをやらなくなったこともありますが、新型コロナの外出制限も重なって、新しい仲間と出会う機会がめっきり少なくなりました。

昔はイベントを一緒に作り上げるなかで「荒木さん、そんなことも知らないんですか? ワタシが教えてあげますよぉ〜」みたいなノリで、若い子たちと気軽な交流があり、彼らから得られる情報が新鮮でした。ところが今の僕は社長室にこもっていることもあって、何の情報も入って来ませんし、ましてや楽しくもありません。

このnoteに書き綴ってきた「クリスマスマーケット熊本」では300人ほどの大学生たちをアルバイトで雇用しますから、若者たちとの接点は確かにあります。しかし、以前とは明らかに立場が違う。僕が彼らに近づいた瞬間、ピーンと張り詰めた空気になってしまうのです。イベントを運営する組織があまりにも大きくなり過ぎてしまい、僕はもっと近い距離で仲良くしたいけれど、年齢的なギャップもあってそれが難しくなってきています。

『アップフィールド』で出会った面々は今、さまざまなジャンルで活躍しています。あの場所がキッカケとなって羽ばたいた人たちがたくさんいます。あんな空間を、また作りたい。そんな衝動に突き動かされ、また40歳という節目の新たなチャレンジとして、今年1月から拠点となる場所探しを動き始めました。


「運命の空間との出会い」に興奮!



車がなくても集まりやすい場所が良いだろうと熊本の中心街の空き物件を探してみましたが、なかなか見つかりません。不動産屋さんのホームページで気になった物件に足を運んでみても、どうもしっくりこない。理想としては立地が良くて隠れ家的なイメージですが、そんな好条件だと家賃も高い。しかし予算を絞ればそのぶん敷地も狭くなり、僕がやりたいことは出来そうにありません。欲しいのは、あくまでも数十人が集えるような、いろんなイベントができる広さの空間です。利用する人たちが足を運びたい、何かやりたいと思えるような場所でないといけません。こうして中心街の物件を探し回るなかで、とくに惹かれるエリアがありました。「上乃裏(かみのうら)通り」です。


車1台が通れるほどの細い通りに、リノベーションされた飲食店や洋服屋さん、カフェにバーといった、小さいけれどハイセンスなお店が軒を連ねています。若者たちが独立して自分の店を持つ。チャレンジする街といった空気感も好き。上乃裏通りって最高だな。でもきっと家賃も高いだろうな……。そんなとき、この通りで空きテナントを見つけました。上乃裏独特の古民家店舗に囲まる中、ひときわ目立つ近代的なオシャレな建物、とても素敵。だけど明らかに高そう。ダメもとで不動産屋さんに案内してもらうことにしました。

ガラス張りの建物の内に入ってみると、なかなかオシャレ。ただ、残念ながら厨房がありません。僕がイメージしているのは、飲食が提供できる交流会やパーティーができる空間です。飲食を提供するための厨房はマストで必要ですから、新設するとなるとその費用まで余計にかかります。それに、目抜き通りに面しているとあって1カ月の家賃はそれなりの金額・・・。

やっぱ難しいか……と諦めかけたとき。「じつは、地下にもご案内できる物件があるんです」と不動産屋さん。聞けば、今契約されている方から「次の借り手が見つかったらお譲りします」という話が出ているそう。

地下かぁ。正直、迷いました。地下だと暗いイメージだし、閉塞的になってしまうんじゃないか。条件には合わないかもしれないけれど、せっかくだから見てみるか。

ところが、僕が懸念していた予想は大きく裏切られました。地下の屋外テラスに沿う形で設けられた階段を降りると、全面ガラス張りに覆われた空間が姿を現しました。

一体なんだここは!? 上乃裏通りにこんな場所があったなんて!!!

中に入ってみると、胸が高鳴りました。コンクリート打ちっぱなしの壁と高い天井。屋外テラスを通して地上の太陽光が差し込み、扉を開放すれば心地良い空気が入り込みます。円形の敷地は、屋外テラスを含めて約50坪。立食であれば70名ほど収容できそう。地下空間でありつつ開放感があって、プライベートな安心感も保たれています。さらにきわめつけは、厨房でした。ガラス張りのオープンキッチンはかっこ良くてオシャレ。すべてが理想通りです。

うおーーーっ! めちゃくちゃイイ! 内装もこんな風にしたかったんだよね。

運命の出会い、なんてありきたりな表現かもしれないけれど、まさにそれです。落雷に打たれたような衝撃、立ちくらみするほどの高揚感。それほど理想の場所が突如、目の前に現れたのです。

もうココしかない、この空間が絶対に欲しい!

2年間で1200万。どうやって維持するか?問題


そして気になる家賃は、水道光熱費も含めると1ヵ月あたり50万円。この申し分ない立地を考えると妥当な金額です。しかし僕にとっては、やはり高額物件。2年契約ですから、維持するだけでも1,200万円かかります。さて、毎月50万円をどう捻出するか!?

まず思いついたのが、カフェなどの飲食店です。しかし、材料を仕入れてスタッフを2、3人配置するとなると、どう考えても採算が合わない。そもそも飲食業の経験もない僕が参入したところで、周辺の飲食店に太刀打ちできるはずもありません。やっぱ無理だぁ、と早々に諦めました。

それに、僕のやりたいことはそもそも飲食店ではありません。僕がやりたいことって何だっけ?そうだ、人の交流がうまれる場所だ。僕の人生に大きな影響を与えた『アップフィールド』のような空間が欲しかったんだ。

こうして原点に立ち返ろうとしていたとき。オリエンタルラジオの中田敦彦さんの『YouTube大学』をたまたま見ていると、迷える僕にこんな救いの言葉をくれました。

「トップを走る人の背中を追いかけても一番にはなれないけれど、そこから90度右折して進めば、自分だけの道が切り開ける」。確かそういった内容でした。

そうだ、その通りだ。今さら僕が飲食店を目指したところで追いつけるわけがない。だったら僕の特性を活かそう。それは、「イベントやお祭り大好き人間!」。それなりの実績とノウハウも熊本で培ってきたつもりだ。

結局、僕が欲しいのは新しい「出会い」と「刺激」、「ワクワク」であり、『アップフィールド』のような場所です。であれば、「出会いを通じて新しい未来を創造する空間を提供する」というコンセプトで振り切ってしまおう。それこそがオンリーワンとなり、熊本にこれまでになかった新しい価値になるのではないか!

プレッシャーが「本気」を引き出す


こうして方向性は決まったものの、やっぱり足がすくみます。1カ月の家賃・固定費が10万とか20万であれば何とかやっていけるものの、これが月50万円、2年契約で1200万円となると、かなり本気モードになってやっていく必要があります。

物件の申し込みもしないといけない中で「やめるなら今だよな」とか、「印鑑はまだついてないし、諦められるかぁ」とか。

そんな堂々巡りの中、ふと思い浮かんだのが「クリスマスマーケット熊本」を立ち上げるときの状況でした。あのときも「これをポシャったら何千万円もの借金を背負うな。いろんな人たちを巻き込むから結構ヤバイよな」「初開催を1年後に先送りしようかな?」「止めるんだったら、今だよな?」と不安だらけで相当、追い込まれました。

今って、あのときと同じ状況じゃん。

ただ、当時と違うのは、今の僕には「クリスマスマーケット熊本」の成功体験があることです。あのときのプレッシャーを乗り越えてきたからこそ、今ではあのイベントも5年目を迎えることができ、71万人もの来場者を動員する冬の一大風物詩へと成長させることが出来ました。

今だってそう。このまま引き下がって、この先4年も5年も悶々とした気持ちを持ち続けるか。あるいは思いきって一歩を踏み出すか。それに、プレッシャーがあるからこそ、本気が芽生えます。

えーい、あれこれ考えるよりも借りちゃえ!ということで、この物件で出会ってすぐ2週間後には、賃貸契約書に判を押しました。

伝説のアップフィールド・元オーナーの上野さんにも大応援頂けることに!



よし、これで決まった。僕の人生に大きな影響を与えた『アップフィールド』のような空間、世代を超えた新たな出会いが生まれ、未来へと繋がる種が育っていくような場所を、ここで作り上げていく。こうして僕の新たな挑戦が始まりました。

ちなみにこの空間には『上乃裏サーカス』と名付けました。ネーミングに込めた思いや、どんなことをやっていきたいか? 

続きは、下記リンクから!!


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