隠れ家バーが口コミグルメサイトに登録され、削除を請求した事件(大阪地裁H27.2.23)〈著作権判例紹介〉
秘密性を演出している飲食店(いわゆる「隠れ家バー」)の店舗情報が、口コミグルメサイトのユーザーによってサイトに掲載されました。店舗側はグルメサイトに削除を要求しましたが、サイト側は応じませんでした。営業権及び情報コントロール権を根拠に、損害賠償と削除を請求しました。
裁判所は、範囲が不明確な情報コントロール権を不法行為や差止めの根拠とすることは相当ではないとし、店舗側がホームページである程度の情報を公開していたことなどを理由に、サイト側の行為は悪質とまではいえないとして、請求を棄却しました。
概要
原告: 大阪市で飲食店を経営。
被告: 口コミグルメサイトAを運営。
Aのユーザーが原告の店舗情報を新規登録し、口コミと写真を投稿。原告が情報の削除を要求したが、被告は応じなかった。
営業権及び情報コントロール権を侵害されたとして、損害賠償と情報削除を請求。
争点
被告が情報削除義務を負うか:
原告の主張:
店舗情報の公開方法を慎重に検討して価値を創出していたが、Aからの大規模なアクセス数により経営戦略が阻害された。
事前承諾なしに店舗情報を掲載し、収益を上げているため、削除要請に応じる義務がある。
被告の主張:
飲食店の情報は一般的に公開されるものであり、法的に保護される利益に該当しない。
原告自身が店舗情報を公開しているため、Aでの情報掲載は権利侵害にはならない。
自己情報コントロール権は未確定の概念であり、店舗情報のコントロール権として認められない。
原告の損害およびその金額:
原告の主張:
被告の行為により営業戦略が阻害され、長期間放置されたため、損害は少なくとも300万円。
裁判所の判断
認定事実
店舗
大阪市の繁華街ではない場所に立地。
看板を設置せず、入口には鉄扉があり、来店者はインターホンを鳴らして入店。
秘密性のあるバーラウンジとして演出されている。
店内には口コミサイトへの投稿禁止の告示を掲示。
紹介客が主な客層で、会員制ではないが、そのように扱われている。
店舗のホームページを作成し、店内の写真やメニュー、住所、地図等を公開している。
A
ユーザーが投稿した飲食店の口コミをインターネット上に公開するグルメサイト。
全国約69万件のレストラン情報を掲載し、ユーザーの評価を基にした点数付けを行っている。
投稿された口コミは、ユーザーが無償で被告に利用を許諾したものとされ、被告はガイドラインに基づき削除する権限を有する。
店舗情報を一般公開している店舗を全て掲載する方針。
削除要求
2012年11月、Aのユーザー会員が本件店舗を新規登録し、口コミと写真を投稿。
Aに掲載された後、紹介者がない顧客が来店し、トラブルが発生したケースもあった。
2013年9月、原告は被告に店舗情報の削除を要求。
被告は、一般的に公開されている情報を利用することは適法であり、削除に応じないと回答。
争点について
情報コントロール権
情報コントロール権は、自らの情報に関して支配する権利と解されるが、その内容や範囲は明確でない。
個人情報についてはプライバシー権が認められるが、すべての情報の公開を許さないわけではない。
情報コントロール権を不法行為や差止めの根拠とすることは相当ではない。
営業権及び業務遂行権
営業の自由、職業活動の自由は憲法22条で保障されている。
原告は自己の情報を公開するかどうかを選択する権利を有する。
被告の行為の態様
被告は、原告からの申入れに対し、一般に公開されている情報を利用することは適法であり、削除に応じないと回答。
Aはユーザー会員が情報を投稿し、被告が管理するサイトであり、情報の提供はユーザー会員が行う。
被告はガイドラインに基づき、削除権限を有しているが、情報の操作を行わない方針で運営している。
結論
被告が原告の申入れに応じなかったことは、侵害行為の態様として違法と評価されるほど悪質ではない。
請求棄却。
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