赤色にトンボが飛んでいるカバーと共に
留学に行く前に、友達から「サラバ!」ともらった本。
別に題名にバイバイの意味を掛けたわけではなく、その子が好きな本から選んでくれたらしい。
本もブックカバーもすごく悩んで考えてくれたと聞いて、嬉しくてこのまんま海の外へ持っていった。
なんとなく、すぐに読む気にはなれなくて。
けど一度、どうしても眠れない夜に読み始めてしまった。
書き方の皮肉っぷりが面白くて、ページをめくる手が止まらなかったんだけど、なんだかそれは自分の世界に逃げこんでいる気がして。これ以上読むのはやめようと思ったんだ。
それから1年以上たって、ふとまた読み始めた。
上中下あるだけあってすごく長くて。この本はいったい何が言いたいんだろう、「サラバ」ってなんなんだろう、早く真相に迫りたいって気持ちで集中して読んだ。
読了後、ちくっと痛い感じだったのは、歩が「自分のことが嫌い、大嫌い」と言う瞬間が、自分のそれとよく重なるからだった。
いつも誰かと比べて、だいたいの場合見下して、それでしか生きられない。揺らがない、自分だけの信じるものなんてなくて。
努力しないで待つばかりで。それでもなんとかなっちゃうから、より一層受け身でいることを覚えてしまって。
でも、自分から動き出さなくても生きていける時代は、必ず終わりが来る。
ちょうど留学に行く前、そして多分今も、誰かに影響されるのではない、自分の軸がほしいって思ってた。
この本をくれたその人は、私のそれを見透かしていたのだろうか。私の人間関係の危うさを、薄っぺらさを、冷たさを。
そう思うと、ぞくっと恥ずかしくなった。
西加奈子(2014)『サラバ』小学館。
2020.10.10
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