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ぐるぐる

父の本コーナーにあって、ずっと目には入っていたもの。

たまたま何かの雑誌で、誰かがこの本を昨年1だったと言っていて、ふと読んでみることにした。

私が本を読むきっかけなんて、そんなもん。内側から湧き上がる何かより、他者からのすすめとかに影響されまくる。

タイトルから、何か重い生と死の話とかかと思っていた。

もっと爽快で闊達で、明るいものだった。

本の内容で1番勉強になったのは、役割の固定化の話。例えば病人と健康な人、患者とカウンセラー。正解っぽいコミュニケーションにとらわれて、身動きがとれなくなってしまう。

私は話聞くのうまいねって言われることがあって、それはどっかで聞いたカウンセラー的話の聞き方(まず受け入れる、繰り返す、とか)みたいなのを頭に入れているだけであって。自分が取りたくてその反応をしているわけじゃなくて。そんなの友達関係じゃないのかもしれない。

これって、彼氏と彼女、でも同じなんじゃないか。その役を演じているだけというか。彼氏だからこう言わなきゃいけないとか、彼女だから会わなきゃいけないとか、そんなのばっかりだと本当にしたいこととかわからなくなっちゃうんだ。

本の中身からは離れるけど、あと書きたいことが2つある。

この本を読んでいて、勉強しているからこそ楽しめる世界というのを少し感じた。

著者のふたりはどちらも哲学者と人類学者という学者同士で、言葉を武器にしているひとたちだ。1通1通、文字数よりもっと深いところに意味があるような、頭何回転もさせないとわからないような手紙たちを、ほんの1週間くらいで受け止めて返せる彼女たちの脳内すごすぎる。

それに触れてちょっとでも面白みを感じることができるかどうかは、私の考える頭があるかないかにかかっているんだなと思った。

話されている内容そのものが理解できないとき、その人の話し方の癖とか別の思考に逃げちゃうことってあるよな〜。そういうわけで、もう1つは喜びの話。

最近ステイホームの影響で本を読むことが増えた。すると、前読んだ本や主人公と、今読んでいる本がリンクするような、現実の世界と本の世界が一体になるような、そんな瞬間が来ることがある。子どものころ、もっと夢中になって本を読んでいたときも、こんな感覚があったかもしれないと、懐かしいような新しいような、嬉しくて誇らしい気分になった。

宮野真生子・磯野真穂(2019)『急に具合が悪くなる』晶文社。

2021.2.4

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