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パイロットの転職

こんにちは、あらいぐま機長です!
今日はパイロットの転職についてお話しします。

早速ですけど、みなさん転職って興味ありませんか?
僕は興味あります。って言ってもいますぐ他の会社に転職したいってわけじゃないんですけど、常に転職の選択肢は頭の片隅にでもおいといた方がいいと思うんですよ。

流石に今更パイロット以外の道を探すのは厳しいですけど、よりよい待遇を求めてとか、新たな自分を探してとか、より居心地のいい場所を探してとか。
アニマル航空はとても居心地がいい会社なので今のところ転職する予定はないですけどね。

ちなみに世間一般のサラリーマンがどれくらい転職してるか知ってますか?
厚生労働省が公開している雇用動向調査によると令和2年では14%くらいの人が転職をしています。
およそ年間に7人に1人が転職しているということなので、40年間の職業人生では数字上はほとんどの人が転職をしていることになりますね。

じゃあパイロットはどうなってるんでしょうか?


きっかけはJALの経営破綻とLCCの誕生

早速パイロットの転職事情についてなんですけど、パイロットってもともと転職は少ない職場だったんですよ。
っていうのも、パイロットって訓練に長い時間がかかるじゃないですか?
自社養成だったら副操縦士になるまで4、5年とかかかったりするし、機長になるまで10年とかかかります。
訓練には何百万というお金かかるし、たくさんの教官にお世話になります。そんな恩のある会社から出ていくなんてけしからん!みたいな考え方があったんだと思います。

実際、マナーのないパイロットが会社Aでライセンスを取ってすぐに会社Bに転職しちゃったら、会社Aは数百万円の損害になるし、それを許しちゃったらどこの会社も自社でパイロットの養成なんかしなくなりますよね。
違約金で縛るって手も昔から使われてきたことではあるんですが、この辺は憲法で守られてる職業選択の自由に引っかかる可能性もあって、なかなか難しいんですよね。
だからマナーというか、パイロットの矜持として基本的には恩のある会社で勤めあげる。転職するにしても3年は働いて恩返しする。みたいな暗黙の了解みたいなものがあったと思います。僕も当時はそう思っていました。

でも風向きが変わるきっかけになった事件が2つあります。
2010年のJALの経営破綻と、2012年頃から出現し始めたLCCです。

JALの経営破綻は航空業界に取っては大事件でした。
ずっと赤字だったけど『なんだかんだで潰れないでしょ?』って僕も思ってたんですけど、経営破綻して大規模なリストラが行われました。
パイロットも100人近くが解雇されたんですけど、これはすごい数です。
当然解雇されたパイロットは他の会社に転職活動をしないといけなくなったし、思い知らされました。
いくら会社に奉仕しても、クビを切られる時は切られるんですよね。
当たり前と言えば当たり前なんですけど、でも自分がクビになるなんて思わないじゃないですか。

今となっては思うんですけど、会社と個人は対等であるべきだと思うんですよ。
会社に絶対服従でもなく、敵対するでもなく、フラットな関係として考えるべきなんだと思います。

さらにLCCの出現ですね。
新たな航空会社が生まれるということは、その分パイロットが必要になりますよね。
路線や機材にもよるんですけど、飛行機1機に対して5人のパイロットが必要と言われます。
20機体制で運航するLCCであれば、100人のパイロットをどこかから採用してこないといけないんですよ。

当時はジェットスタージャパン、ピーチ、バニラ、エアアジアジャパン、春秋ジャパンと競うように次々と新たなLCCが誕生しました。

それで新たに航空会社を設立する場合、他の会社よりも給料を高くしないとパイロットって集まらないんですよ。
新しい会社が生き残れるかわからないし、パイロットにとっては転職先で訓練と審査を受けなければなりません。そこでチェックにフェイルしたら、どうしようもなくなってしまいます。
それだけのリスクを犯して転職するからには、それなりのメリットがないと誰も来てくれないですよね。

だから基本的にLCCは他の中堅航空会社、スカイマークやエアドゥ、ソラシドエアより給料がよかったんですよ。
それでこの辺の会社からたくさんのパイロットが応募していきました。

またより大きな飛行機を操縦したいっていうパイロットも少なくありません。
別にパイロットは大きな機材に乗っているから偉い、という話は全くないんですけど、憧れはあるじゃないですか。
それでより小さな、プロペラ機を運航する会社からもパイロットの転職が多くありました。

パイロット大転職時代の幕開けですね。

実際にパイロットにはどういう転職がある?

それでパイロットはどういう転職をしているのかというところなんですけど、まず大手のANAとJALはパイロットの中途採用をやっていないんですよ。
出ていくことはできるんですけど、入ってくることはできません。一方通行なんて言われたりします。

理由はいろいろあると思うんですけど、ANAとJALは出ていく人が少ない分、計画を持ってパイロットを養成できるということと、セニョリティの問題が大きいのかなと思います。
他社から機長をとっちゃうと、自社の副操縦士の機長昇格が遅れちゃうじゃないですか。
だから組合と揉めるんですよ。

だから基本的なパイロットの転職の流れとして一番大きいのは新たなLCCができた時です。
直近ではJALがZIPAIRというLCCを設立しましたが、これはB787を使って中距離国際線を飛ばす会社ということで、魅力に思うパイロットは多いと思います。B767以上の大きさの飛行機を『ワイドボディ』と言いますが、現状ではワイドボディに乗れるのは大手以外ではZIPAIRしかありません。最近ANAがAir Japanという新ブランドを開始しましたが、今後採用は行われるのかな?

他にはスカイマークやエアドゥなどの中堅航空会社からジェットスターなどのLCC、またはLCCから中堅航空会社への転職もよく聞きます。
やっぱり給料だけじゃなくって、住む場所とか生活リズムとかも大事じゃないですか。大阪に住みたいからピーチとか、LCCに転職したもののやっぱり成田はキツいとか、そういうのもあります。

またJACやRAC、ANA WINGSなどでプロペラ機を運航しているパイロットがジェットに乗りたいと転職する例も多いです。
どっちがいいって物ではないんですが、よりハイテクノロジーを体験したいという気持ちは僕にもあります。

また海外のエアラインに転職するパイロットもいます。
最近ではシンガポールのスクート、台湾のスターラックスという新しい航空会社が誕生しましたが、日本人のパイロットが何人か採用されていると思います。

転職の理由にはネガティブなものもある。

あとこれはあんまり多くはないんですけど、ネガティブな理由の転職もあります。
パワハラやセクハラをやってしまって会社にいられなくなって転職とか、仕事で大きなミスをしてしまってその会社にいられなくなってしまう例です。

パイロットの世界って狭くって、だいたい友達の友達くらいまで辿ればどこの会社のパイロットでもつながってしまうくらいなんですよ。

だから悪い噂ってすぐに広まっちゃって、なかなか転職が難しくなったりもするんですけど、恒常的にパイロットが足りない会社とかもあります。

今後もパイロットの転職の流れは大きくなっていくと思います。
過去に一度に大量のパイロットが流出してしまって予定していた便をキャンセルしたエアラインもあったんですけど、より魅力のある会社へ人が流れていくのは仕方がないことですね。

節操なく転職を繰り返すのはどうかと思うんですけど、会社と従業員はもっと対等の関係であっていんじゃないかなと僕は個人的に思います。

今日はここまで、パイロットの転職について話しました!
じゃあまた次回!最後まで読んでいただきありがとうございます!

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