2/5:コインランドリー
お地蔵さん通り商店街はそれなりに歴史のある商店街だが、東京都内だ。それなりに店の新陳代謝はある。
たとえば、以前は花屋だったところがコインランドリーになったりする。
「大きい洗濯機ですね、岳! しぐれがはいれちゃいそうですよ」
お前を丸洗いするくらいなら自宅にある洗濯機でも十分だぞ、とは言わない。
ガス乾燥機のついている大型洗濯機のあるコインランドリーは、大物を洗うのにも向いている。布団も丸洗い可能だ。
「このくらいの大きさでいいんじゃないか」
14キロサイズのマシンの前に立ち、岳は使用前洗浄のボタンを押した。
洗いたいのは小型こたつについてきたふとんだ。
すっかりしぐれのお気に入りになったこたつ布団だが、今朝、コーヒーをこぼしてしまったのだ。
二分間の洗浄が終わった槽内に、岳はふとんを丸めて入れた。
あとは硬貨をいれて、スタートボタンを押せば洗剤も柔軟剤も勝手に投入される便利仕様だ。
しぐれは興味津々な様子で、一生懸命に見上げている。
「いれてみるか、お金」
「はい!」
抱っこを求めた脇の下に手を入れて持ち上げた岳は、しぐれにコインケースを渡した。
「百円を十二枚、千二百円分ですね」
しっかりそう言って、小さな指がコインケースから百円玉をひっぱりだした。
「ひとーつ」
コトン
「ふたーつ」
コトン
「みっつー」
コトン
しぐれがのんびりコインを入れる。
機械ものんびり、コインを飲み込んでいく。
やがて作動ランプがついた。
乾燥完了まで一時間半ある。
コーヒーショップで時間を潰すか、散歩をするか。しぐれに決めさせてやってもいいか。
しぐれは動き出したランドリーマシンのドアに両手をついて、中身を一生懸命に見つめている。
……このまま一時間半、ずっと見るとか言い出しかねないな。
岳はちょっとだけ笑って、しぐれを見守った。
(NK)
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