かわら版7月号「解散風はなぜ吹いたのか。」

岸田首相は、6月21日に会期末を迎えた今通常国会での解散を見送りました。総選挙は今年の秋以降に行われることになりますが、ここからはまさに常在戦場で、高い緊張感をもって準備を進めていかなければいけません。

 今回の「解散風」の原因は、法案審議に絡む岸田首相の国会戦術にありました。「防衛費財源確保法案」や「LGBT理解増進法案」などで、与野党が対決姿勢を強める中、解散をカードに野党を強くけん制したものだったと捉えるべきです。同時に、与党内の反対派にも一定の圧力となったようにも思われます。

 岸田首相としては、野党側が「防衛費財確法」の審議に徹底抗戦し、本会議での採決前に不信任案を出すようなことがあれば、その際には「解散」もありうるという考えだったと、私自身は捉えています。

 ポイントは、6月13日(火)時点での委員会採決の延期と、それに呼応した野党側の解任・問責決議の不提出にありました。この時点で、法案の委員会の通過は決まったわけで、16日(金)の本会議における野党側の不信任の提出の有無が最大の争点になりました。
 
 私自身も「不信任の提出は必要」との立場でしたが、立憲民主党として、本会議での「防衛費財確法」の採決前・後、いずれのタイミングで不信任を出すかの判断に迫られました。
 採決前に出せば、岸田首相は本当に解散するかもしれない。採決後であれば、法案の審議に関わりなく、全体として、今国会の与党の姿勢に対する反対の意を示すことができる。
 
 こうした考慮もあって、採決後の不信任案提出に落ち着いたように思います。複数の立憲民主党幹部が「『不信任』と『解散』はセットではない」という発言を繰り返したのも、こうした状況を念頭に置いたものでした。採決後の不信任は、解散を求めるものではないというメッセージです。

 岸田首相自身もこうした動きを理解しており、立憲民主党の採決後の不信任案提出の意向が決まった段階で、解散の見送りを表明しました。法案審議に絡まない不信任であれば、今回の場合は否決で事足りるとの判断です。首相自身も、このタイミングでの解散を積極的には望んではいなかったと思います。

 総じて、与野党ともに、このタイミングでの解散総選挙は望んでいなかったということに尽きます。ただ、国会審議の緊迫度がさらに高まれば、解散はありうる展開でした。国会の場で、ルールに則った与野党の駆け引きがあったわけで、一定の意義はあったように思います。勝負のタイミングは、今ではなく、財源論議が本格化する秋以降でしょう。

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