オチも何もない話

楽しくない話をします。
たしか一昨年の秋頃だったと思う。

 猫の死体を見た。

 朝、仕事に行く時だった。日中は車も人も全く通らないが、朝と夕方の通勤と退勤の時間は通行量がとてつもなく増える。その日も私は車の多さに減滅しながら歩いていた。
 ふと車道に塊がみえた。最初は石かと思った。それでなければ、トラックの荷台から落ちた何か。だが私が職場に向かって歩くに連れて、その塊が何なのかはっきりと見えてきた。よく見るとその塊の下には赤黒い液体が小さく広がっている。

 そして私はそれが猫だと気付いた。

 私は咄嗟に鞄に手を突っ込んでスマートフォンを取り出した。取り出して、固まった。何をすればいいか分からなかったのだ。私はこのスマートフォンで何をすればいいのだろう。どこに電話を架ければいいのだろう。市役所かそれとも保健所か。はたまた動物園か。検索してみたが出てくるのは県外の自治体の情報ばかり。私は片手に電子機器を持った状態でしばらくの時間じっと立ち尽くしていた。

 何分か経って(体感は1時間くらいだったと思う)私は自分が出勤の途中であることを思い出した。私はスマートフォンで時間を確かめた。このままでは遅刻する。私はスマートフォンを鞄に突っ込んで職場に向かって歩きだした。早く職場に行かねばと気持ちは焦っていたが、私は車道に転がる塊が見えなくなるまで何度も何度も後ろを振り返った。

 もちろんその日の仕事は最悪だった。パソコンの画面を見つめていても、ふっと頭に浮かぶ猫の姿に胸が苦しくなった。ずっと胸の中にモヤモヤとした重苦しい何かを抱えている様だった。

 帰り道は凄く憂鬱だった。あの猫はいったいどうなったのかとそればかり考えていた。猫が転がっていた場所には、何もなかった。安心と後悔で、胸が苦しくなった。

 
オチも何もない話をしました。
 私は未だに何度も何度もこの出来事を思い出します。今もこうやってたまたま思い出して、たまたまnoteを開いていたので、こうやって文字に起こしてみました。
 もうこんな後悔は、したくないと思います。

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