私訳「将进酒」254章(抜粋) 既然、姚溫玉、喬天涯

3人の邂逅がとても美しく印象に残っています。例えるならウユニ湖のように空を映す湖の上に、3人が立っているかのようなイメージでした。

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彼はまだ子供の心を持っていて、骨津の後ろに続いて水たまりを飛び越え、自分の坊主頭が水に映り込んだのを見て、思わず大笑いした。

喬天涯は彼らを玄関で迎え、手を合わせて既然に
「小師父、どうぞお入りください。」と言った。

既然も礼を返した。この時木々の間で鳥たちが囀り、天気は穏やかで、彼は僧衣を着て、青空と白い雲が映り込む大小の水たまりの間に立って、まるで天と地が一体になったように感じた。

「施主、」既然は師父の様を真似て、喬天涯にゆっくりと頷いた。
「施主は仏縁があるようです。」

喬天涯は面白く感じて言った。
「私が年少の頃にもそう言われたことがありましたが、今日まで空門に入ったことはありません。」

既然は喬天涯を見つめた。彼は黙っていると超然とした雰囲気を持っており、それはいわゆる冷静さというものではなく、彼自身の天性のものだった。小僧侶は清らかで、一方で世界を静かに観察していた。

「緑水は憂いを知らず、風によって皺立つ。青山は年を取らず、雪が頭を白くする。施主の因はすでにあるのです、縁は遠いでしょうか?」

清風が既然の僧衣をなびかせ、衣の端が水に触れた。彼は静かに手を叩き、その純真さの中で、喬天涯の道を確信したかのようだった。


喬天涯は清風の中で屋根下の鉄馬が揺れる音を聞き、振り返ると、姚溫玉が座っているのが見えた。姚溫玉の衣服は風になびき、水たまりの中を歩く既然と奇妙な共通点を持っていた。

既然は階段の前に歩み寄り、姚溫玉に挨拶をしなかった。
彼は「私はあなたの脚を治せません。たとえ私の師父が生きていたとしても、あなたの脚を治すことはできないのです。」と言った。

姚溫玉は膝の上の虎奴を手で覆いながら言った。

  「一切有為法、如夢幻泡影,如露亦如電,應作如是觀。」


この世界の因縁(カルマ)は集まり、変化し、無常である。
姚溫玉はもはやこの脚に執着していなかった。彼が「私はまだ立っている」と言ったとき、個を超越したのだ。彼は座っていようが立っていようが同じである。
彼は自分でありまた他の存在でもある。

既然はため息をつき、「他の人々は私に仏教の言葉を求めますが、あなただけが私に仏教の言葉を語ります。死を前にして、あなたは終わりを見ています。なぜここに留まる必要がありますか?私と山に行きましょう。」と言った。

姚溫玉は答えた。
「私の心にはまだ万相(数え切れないほどの相)があります。」

既然は姚溫玉を見つめ、喬天涯を指さした。
「あなたの心には彼の相もまだあります。」

風が姚溫玉の袖をなびかせ、手首に巻かれた赤い紐が軽く揺れ、続けて言った。
「だから、私はまだ人間です。」


因縁は言葉では語り表せないもので、いつ起こるのかを知らず。それは糸を結んだ夜かもしれないし、あの「私はあなたを憎む」ことだったのかもしれないし、或いは、もっと早く、春の予兆のあった3月の日だったかもしれない。
喬天涯、喬松月、彼は軌跡を残す燕。

姚溫玉はこの世のすべてが幻想であることを理解しており、今日の行いも指を弾いて鳴るぱちんという音のように、一瞬にして無限の川の流れの中に消えゆくだけのものだと認識している。
姚溫玉、姚元琢、彼は泥に帰る葉だ。


既然は小首を傾げて言った。

  「私があなたに与えられるものは何もありません。」


姚溫玉は沈澤川の庭を見つめ、微笑みながら言った。

  「あなたは私を完全にしました。」


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※「一切有為法、如夢幻泡影,如露亦如電,應作如是觀」については こちらを参照。

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