時間が溶けてゆく恐怖に慄く自分への克己心

子供の頃、夏は楽しいシーズンであった。

夏休みは友達と自由研究を口実に集まったり、みんなで誘い合わせてプールへ出かけたり、花壇の水やりのために学校へ行ってそのまま遊び呆けたり、家族で海や山へ旅行したり・・・と、夏はまさに弾けるようなシーズンであった。

が、今。
もはや家から一歩出るだけでも億劫なほど、夏の日差しはやる気も体力も若さも奪うにっくき存在となってしまった。たった数分外出して用を済ませてきただけで、一日働いたような気だるさである。

そうなるともはや、エアコンを効かせた家の中で、ひたすら本を読んだりネットサーフィンしたり、動画を眺めるしかなく、ほぼほぼ動かないまま時間が溶けてゆく。

おかしい。

ほんの数年前まで「冬は停滞する季節だから」と言われたのに、今や夏こそが「停滞する時期」である。
夜が長くて、空が陰鬱で、木々も色褪せた冬であれば、外に出たいという気持ちも起こらないので、停滞期でもあまり苦にならない。

だけど、日照時間も長くて、晴れる日が多くて、窓から眺める外の様子はこんに晴れやかなのに、一歩も外に出られないというのは、理不尽極まりない感じがする。

良い時期を何もせず無為に過ごしてしまっていることに対する謎の罪悪感と、人生の時間が何もしないまま一日減ってしまったことへの恐怖心。
それらに打ち勝つ強い心が今、必要なのだ。

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