集中力のリミット

「最近の楽曲って、前奏がなくいきなり歌詞が始まるじゃない?」
40代前半の先輩からそんな言葉を投げかけられて、初めて気づいた。
確かに、再生して即、歌詞が始まる曲が多いことに。

「イントロドン!なんて、今の10代からしたらもはや意味不明なんでしょうかねぇ」なんて談笑しながらも、「すごい時代だ」と思ったのである。

じゃあ、30代の自分はどうなのかというと、広告がスキップできない動画配信にイライラし、Youtubeは1.25倍速に設定し、聞いてみたい楽曲も歌詞が始まるまでちょっと早送りしたい気分になっている。

そう、年代に関係なく、明らかに結果や中身を急いでしまっているのである。

話は変わるが、仕事を辞めてから、読書に凝っている。

小学生の時、図書室で年間100冊以上の本を借りて読んでいた自分が、ここ数年は一切本が読めなかった。
ごくたまに、ページ数が少なめで内容も軽めの本を「嗜む」程度に読むのと、ごくたまにゾーンに入って読み切れる奇跡を含めても、年間10冊も読めていなかった。

文字を目で追いながらも頭は別の思考に囚われて、気づいたら内容が全く入っておらず、数ページ戻って再度読み直し・・・を繰り返すうちに、面倒くさくなってしまうのである。

書店自体はずっと好きで、ついつい買ってしまったりもするけれど、いわゆる「積読」が増えていくばかり。

もう自分は本が読めない人種になってしまったのだなと、自分のアイデンティティの一つが失われたような一抹の哀しさを感じていた。

それがどうだろう。

仕事を辞めて時間に余裕が出ると、面白いくらい読書が進む。

難読漢字あふれる全5巻の歴史小説だって、感情移入がしやすいとは言い難いSF小説だって、皮肉たっぷりのエッセイだって、割と無双モードでサクサク読める。

今までは積んである本を手に取るのも億劫だったのに、今や家事などで中断しても「続きが気になる」とソワソワしてしまうほどだ。
心の底からあふれるワクワクとした好奇心は何者にも変え難い。

最初の話に戻るが、「前奏が待てない」「広告にイライラする」「1.25倍速で聞く」も全て、最終的には長時間集中できないことに起因しているのだろう。

思うに、今まで日々仕事をしている中で、心がすり減り、頭の中はデータ過多で、情報処理が全く追いついていなかったのだろう。完全なる処理能力不足=集中力不足だったような気がする。

今はとにかく自分の知りたいことやワクワクすることを中心にインプットを続けていきたい。


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