さらに周到になった中央指導部人選

 前回の第19回党大会後にも、「党的新一届中央领导机构产生纪实」で、どのように指導部の人選が行われたかが公表されたが、今回はどうか。前回と比較した。

 普段はあまりやらない原文との併記なので、誤訳があれば教えてください。 

習近平の全票当選

  在选举党的二十大代表时,习近平同志全票当选。在选举二十届中央委员会委员时,习近平同志全票当选。在二十届一中全会选举新一届中央领导机构时,习近平同志再次全票当选中央委员会总书记。
(第20回党大会の代表選挙で、習近平同志は全票で当選した。第20期中央委員会員選挙で、習近平同志は全票で当選した。第20期一中全会の新期中央指導機構選挙で、習近平同志は再度全票で中央委員会総書記に当選した)

 第18回党大会の後に発表された「党的新一届中央领导机构产生纪实」で、習近平の得票数についての言及はなかった。中央委員と総書記は公表されていないが、党代表は「高票」当選だったと報じられている。「高票」は高い得票数のこと。

 胡錦濤は第17回、第18回の党大会と「全票」で党代表に当選しているので、習近平が威張ることではない。令計画が第18回党大会の党代表に「全票」当選したのがトラウマになっていて、全党から支持を受けていると強調しているのだろうか。

四期目

  一张张选票、一次次掌声,凝聚了全体代表和委员的共同意愿,体现了9600多万名党员对习近平总书记的衷心爱戴,反映了亿万人民紧跟伟大复兴领路人开创更加美好未来的坚定信心。
(1票、1回の拍手は代表全体と委員が持つ共通の願いが凝縮されている。党員9600万人余りの習近平総書記に対する、衷心からの尊敬であり、10億人民が偉大な復興の先導役が切り開く、より美しい未来の断固たる信念を反映したものだ)

 前回は「这个党的核心、军队统帅、人民领袖,是党之大幸、军之大幸、民之大幸!」(党の核心、軍隊の統帥、人民の領袖であることは党の幸福、軍の幸福、人民の幸福である)だった。表現が後退していると取れなくもない。少なくとも軍への言及は無くなっている。

 ところが、「偉大な復興の先導役」というものすごいのが追加されているので、本当に四期行っちゃうねこれは。

圧迫面接

  在以习近平同志为核心的党中央统筹谋划下,新一届中央领导机构人选的酝酿提名工作有序展开。
  从2022年年初开始,习近平总书记就如何酝酿产生新一届中央领导机构人选问题,认真听取了中央政治局常委同志的意见。
  大家一致赞成,在总结党的十七大、十八大有关做法的基础上,坚持十九届中央领导机构人选酝酿和“两委”人选考察工作的好经验好做法,不搞“海推”“海选”,采取谈话调研的方式,就新一届中央政治局、常委会、书记处组成人选,国务院领导成员人选,中央军委组成人选,以及全国人大、全国政协党内新提拔人选等,在一定范围内面对面听取推荐意见和建议。
(習近平同志を核心とする党中央の統一的な計画の元、新しい中央領導機構人選の事前調整と指名工作は、秩序だって進められた。
 2022年年初、習近平総書記は新期中央指導機構の人選問題をどのように事前調整するか、中央政治局常務委員同志の意見を真剣に聞き取った。
 第17回党大会、第18回党大会の手法を総括したものをベースに、第19期中央領導機構の人選事前調整と、「両委」(中央委員会と中央紀律委)人選工作の良い経験・良い手法の堅持で一致をみた。
 「海推」(村民委員会候補者に対する直接的な推薦)「海選」(候補者を出さず直接投票するやり方)を行わず、会話とリサーチ方式を採用した。新期中央政治局、常務委員会、書記処の人選、国務院領導成員の人選、中央軍事委の人選、および全国人大、全国瀬強の党内における新しい抜擢など、一定の範囲内で、対面式で推薦意見と提案を聞き取った)

 第17回党大会、第18回党大会の手法が何なのかよくわからないが、第19期の時に推薦は止め、引き続き面談という本音が言えない方式で聞き取りを行なっている。

 海選で検索すると、懐かしの超女とかが出てくるので、超女が消えていったのも何となくうなづける気がする。選挙は結果がコントロール出来ないものと考えているのだ。

幹部選出の基準

  2022年3月24日,习近平总书记主持召开中央政治局常委会会议进行专门研究,讨论通过了《关于新一届中央领导机构人选酝酿工作谈话调研安排方案》。谈话调研和人选酝酿工作在习近平总书记直接领导下进行。主要遵循以下原则:
  坚持以习近平新时代中国特色社会主义思想为指导(後略)
  坚持党的领导核心地位(後略)
  坚持马克思主义政治家集团标(後略)
  坚持党管干部原则(後略)
(2022年3月24日、習近平総書記は中央政治局常務委員会を主催し、専門に検討、討論を行い、『新期中央領導機構の人選事前調整工作のリサーチ手配に関する提案』が承認された。
 談話、リサーチと人選の事前調整工作は、習近平総書記が直接領導し進めれられた。遵守すべき主な原則は以下の通り。
習近平新時代中国の特色ある社会主義思想を指導することの堅持。
党の領導・革新的地位の堅持。
マルクス主義政治家集団の水準堅持。
党管幹部の原則堅持)

 3つ目まではいつも言っているし、訳出するのが面倒なので割愛するとして、4つ目の「推薦人数を限定しない。推薦票の数は参考とし、安易に票で選ぶことはない」は、前回から引き継がれている。

お忙しいところどうも

  从2022年4月开始,习近平总书记在日理万机的情况下专门安排时间,分别与现任中央政治局委员、中央书记处书记、国家副主席、中央军委委员谈话,充分听取意见,前后谈了30人。
(2022年4月より、習近平総書記は政務が多忙な中時間を取った。現在の政治局委員、中央書記処書記、国家副主席、中央軍事委委員30人と個別に十分に意見を聞き取った。)

 前回は聞き取りの対象だった「党内老同志」が消えているので、現役だけで人選を調整したことになる。政治局委員18人+政治局委員以外の書記処書記1人+国家副主席1人+政治局委員以外の中央軍事委委員4人。

 足しても24人にしかならないので、足りない分は習近平以外の常務委員6人だろう。

 また、「日理万机的情况下专门安排时间」(政務が多忙な中時間を取った)という余計な一文が増えた。

 この後、中央委員や閣僚クラス、省長や省都の市委書記らからも聞き取りを行い、「海推」と「海選」はやらないことで一致したことになっている。

 「决不能简单以票取人」(安易に票数で人を選ぶことは決していない)という結論に達するのは、しつこいが令計画が予備選挙で最多票数を獲得したというトラウマからなのだろう。

 予備選挙が過去にどういう位置付けだったのかは、教養不足でわからないのだが、投票という行為で数字が出てしまうと無視できないのだろう。

胡春華への説明

  “党和国家领导职务不是‘铁椅子’,符合年龄的也不一定当然继续提名,要坚持事业为上,根据工作需要、人选条件、廉洁情况和形象口碑,能留能转、能上能下,树立新时代鲜明用人导向。”谈话调研中,许多谈话对象都表达了这样的意见。
(党と国家の領導職務は、「鉄の椅子」(永遠に座り続けられる椅子)ではない。年齢が適合したからといっても、必ず継続して指名を受けるわけではない。事業の最優先を堅持しなければならない。
 工作に必要かどうか、人選条件、クリーンであるか、イメージや周囲からの評判はどうかに基づく。留まれるか、他に行くか、昇進するか降格するか。新時代は、人を使う方向性をはっきりと樹立しなければならない)

 新時代怖え。

 前回よりイメージや周囲の評判が追加されている。胡春華の説明にはなっているが、王毅や張又侠ら年齢が適合していないケースの説明にはなっていない。

深読みしないほうがいいのか

  在新一届中央领导机构酝酿人选和征求意见时,一些党和国家领导同志以党和人民利益为重,以对国家发展和民族复兴高度负责的精神,主动表示退下来,让相对年轻的同志上来,表现出了共产党人的宽阔胸怀和高风亮节。
(新規中央領導機構の事前調整および、意見を募った際、一部の党と国家の領導同志は党と人民の利益を重視し、国家発展と民族復興の高度な責任ある精神で、自ら引退を表明し、比較的若い同志を昇格させた。これは共産党人の広い心と、素晴らしい品格、人格を表している)

 自ら引退は、胡錦濤が完全引退した10年前にも同じことを言っていたが、胡錦濤は江沢民のように総書記引退後も中央軍事委員会主席を続けないという文脈で言っただけと思っていた。

 しかし、前回も同じようなことが書いてあったので、これはお約束みたいなものなのだろう。前回ならさしずめ李源潮が相当するのではないか。

 胡錦濤の時にはなかった「『相对』年轻的同志」(『比較的』若い同志)というのも、常務委員が若返りした10年前の前々回と異なり、今回は前期より2歳平均年齢が上がっていることへの言い訳かとも考えたが、5年前の前には既に存在していたので、深読みしないほうがいいのかもしれない。

  综合各方面意见建议,习近平总书记就新一届中央领导机构的组成原则和组成方案,同中央政治局常委同志进行了认真沟通、反复酝酿。形成初步方案后,习近平总书记又再次听取了中央政治局常委、中央政治局委员、中央书记处书记的意见。在此基础上,提出了新一届中央领导机构的组成方案(中略)
  2022年9月28日,中央政治局常委会会议研究讨论了新一届中央领导机构人选建议名单。9月29日,中央政治局会议审议通过了这一建议名单,决定提请党的二十届一中全会和中央纪委一次全会分别进行选举、通过、决定。
(各方面の意見や提案を総合し、習近平総書記は新期中央領導機構を形成する際の原則と構想について、中央政治局常務委員の同志と真剣に意思疎通を行い、繰り返し事前調整した。
 一応の構想が出来上がったのち、習近平総書記は再度中央政治局常務委員、中央政治局委員、中央書記処書記の意見を聴取した。これを基礎に、新期中央領導機構の構成が提出された。
 2022年9月28日、中央政治局常務委員会会議は、この提案リストを審議し、承認した。
 9月29日、中央政治局会議は、このリストを審議、承認した。また、共産党第20期一中全会と中央紀律委第1回全体会議で、それぞれ選挙、承認、決定するよう要請した。)

 人事案をがっちり固めてから党大会の日程を決めるのかと思っていたが、最終案が固まったのは10月16日に開催される党大会の3週間前だったことがわかる。

 党大会の日程が公表されたのは8月30日なので、「新一届中央领导机构的组成方案」はその日に出されていたのかもしれないが。

 習近平が人事案を自ら作成し、他の常務委員とやりとりで最終案が作られるのだから、最初はもっと物凄いリストが出されていた可能性がある。

 また、政治局が常務委員会の人事案をたった1日の審議で承認してしまっている。政治局が常務委員の出してきたものには基本的にケチをつけないのがよくわかった。

==参考消息==
领航新时代的坚强领导集体——党的新一届中央领导机构产生纪实 (2022年)
领航新时代的坚强领导集体——党的新一届中央领导机构产生纪实 (2017年)
党的新一届中央领导机构产生纪实
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