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総書記と総理が日本の総理に送る祝電

 習近平、李克強が菅義偉さんの総理就任に祝電を送った。中国の総書記と総理が揃って日本の総理に祝電を出すのは20年ぶりのことだ。

 20年前というと2000年。中国側の総書記は江沢民、総理は朱鎔基。送られた日本の総理は森喜朗。隔世の感がある。

 森以降で、カウンターパートである中国の総理からも祝電を送られなかった総理は2人いる。

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 1人目は小泉純一郎だ。森の後任である小泉へ、江沢民、あるいは朱鎔基が祝電を送った形跡を国務院と人民網で探したが、ついに見つからなかった。

 小泉が総理に就任したのは2001年4月26日だが。4月3日につくる会の歴史、公民の教科書が文部科学省の検定を通過したことに、中国が抗議。

 4月20日には李登輝が病気治療を理由に訪日した報復として、中国は首脳往来の凍結を宣言するなど、一気に日中関係が悪化していた状況下で、祝電を送れるような雰囲気ではなかったのだろう。

 小泉が2005年に総理に再選された際、秦剛副報道官(当時)は「衆院選挙は日本の内政」との立場を崩さず、祝電を送るつもりはないのかとの問いにもグランドスルーしている。

 なお、中国語ソースが引っかからないのだが、駐日大使館のサイトで小泉が総理に再選した翌日の9月22日に、温家宝が祝電を送ったことが確認できた。

 小泉は毎年のように靖国神社に参拝した。2006年の参拝当日は、中国が打ち上げた有人宇宙船『神舟6号』の帰還と重なり、当時駐日大使だった王毅が、「中国人民が祝いの中にある時に参拝するなど、中国人民への挑戦」と無茶苦茶言ってたのを思い出す。

 そういう相手だったので、小泉に祝電を送るのかと聞かれれば躊躇せざるを得ないのもわかる。

 なお、日中国交正常化30周年のような時候の挨拶は交わしているので、絶縁とまではいかない。

 2人目は2012年12月26日に総理に再任された安倍晋三だ。

 2006年の一度目の総理就任に際し「小泉よりさらに小泉」と評されたこともあるように、警戒されていた安倍晋三だが、温家宝はちゃんと祝電を送った。

 以降、温家宝は1年ごとに、福田、麻生、鳩山、菅、野田と祝電を毎年送り続けた。

 民主党政権時代、下野していた自民党が与党に復帰すると、総裁に復帰していた安倍が総理に再任された。これまで就任当日に送られていた祝電は送られなかった。

 送られていないことが報じられ、日中関係がどん底であることを象徴する出来事として記憶に残っている。もちろん安倍への評価が6年の間に変わったからではなく、民主党政権時代に行われた尖閣諸島の国有化や、胡錦涛の警告を野田が無視したなどが原因だろう。

 それから8年後。20年ぶりの総書記、総理ダブル祝電となった。

 あくまでも序列第1位の総書記と序列第2位の総理の動向としての扱いであり、人民日報の一面を飾ったり、新聞聯播で二番目に報じられるのは、日本との関係を重視したわけではない。

 ないのだが、総書記がカウンターパートではない格下の総理に祝電を送ることはあまりない。ドイツやインドといった、総書記が祝電を送った国家との関係と、同等レベルにまで戻ってきたと見なすことはできよう。

==参考消息==
http://www.xinhuanet.com/politics/leaders/2020-09/16/c_1126502025.htm
http://dengxiaopingnet.com/GB/channel1/10/20000704/128751.html
http://www.china-embassy.or.jp/chn/zrgx/qqq900/t301903.htm
https://www.fmprc.gov.cn/web/gjhdq_676201/gj_676203/yz_676205/1206_676836/xgxw_676842/t5813.shtml
http://www.gov.cn/jrzg/2005-09/14/content_31337.htm
http://www.china-embassy.or.jp/jpn//zrdt/t213772.htm
http://www.gov.cn/jrzg/2005-10/17/content_78737.htm
http://www.gov.cn/gongbao/content/2006/content_453185.htm
http://www.gov.cn/ldhd/2007-09/25/content_761452.htm
http://www.gov.cn/ldhd/2008-09/24/content_1104790.htm
http://www.gov.cn/ldhd/2009-09/16/content_1419296.htm
http://www.gov.cn/ldhd/2010-06/04/content_1620870.htm
http://www.gov.cn/ldhd/2011-08/30/content_1936568.htm
https://news.163.com/12/1227/08/8JNHA0GD0001124J.html
http://www.chinaarabcf.org/chn/zagx/zgsd/t1001004.htm
https://www.fmprc.gov.cn/web/fyrbt_673021/t1815427.shtml

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