38.不都合な体とテクノロジー

思えば、病気になる前から、生きにくい体であった。
脚が太すぎるのだ。上半身は細めで、物によってはSサイズも着られるくらいなのに、脚が異常に太い。
それは子供の頃からずっとで、病気になって痩せても治らなかったので、単に太っているのではなく、体質や体型の問題があるのだと思う。

普通のMサイズのパンツやタイツ、ストッキングがきつくて履けなかったり、LサイズやXLサイズを選ばなければならなかったり、大きいサイズがなければあきらめなければならない。
見た目が悪いだけでなく、普通のサイズを着られないというのは非常に不便だし、きつくて苦しい思いをしなければならないのも多大なストレスだった。

さらに、足の幅も広すぎる。足長は25cmで、それも大きい方だけど、それだけだったらまだ履けるサイズはある。
それよりも足の幅が広すぎることの方が問題で、広めと言われている3Eでも、サイドの骨の部分や小指が痛くなってしまうことが多い。

いわゆる開張足なのだ。子供の頃、無知な母親に「お前は偏平足だ」と言われ、そうなのか?と思っていたけれど、それはまったくの間違いであった。偏平足と開張足はまったく違う。縦のアーチがつぶれているのが偏平足、横のアーチがつぶれているのが開張足。
私は開張足だから、足裏前方、中指の下あたりのエリアに魚の目もたくさんできてしまう。
よく「タオルを足指でたぐり寄せるタオルギャザーというエクササイズをして足裏の筋肉を鍛える」という対処法が紹介されているので、以前やっていたけれど、そんなことをしても治らなかった。これも、体ができあがってしまうと治せないものなのかもしれない。
足幅が広すぎるも、脚が太いのと同様、多大なストレスであった。痛いし、不便だし、地味に生きるのがつらい。

靴も、サイズ選びに困らなければ、服を選ぶのと同じように楽しいことなのかもしれないけれど、
そもそも履ける靴があまりない、大丈夫そうかと思って買っても長時間履いていると痛くなる、デザインで選べないといった問題があるから、靴というもの自体、嫌いになってしまった。
元々は足を守るために作られたものなのに、靴のせいで痛い思いをさせられるなんて、本来の機能を果たしていないし、本末転倒で許しがたい。駄目な靴に、体も心も傷つけられていて悲しい。

廉価で、素材が固かったり、形が悪かったりする、質の悪いものが横行している。
靴の歴史なんて、紀元前からもう数千年あるんじゃないかと思うけど、いまだにそんなレベルの低いものを作っているなんて、恥ではないか?靴業界は猛省して、改善しなければならないと思う。

どこかで、“病気や障害で不便や不都合を感じるのはテクノロジーの敗北”といったようなことを見たことがあるけれど、服や靴もそうだと思う。
人を傷つけない、優しく、着心地が良く、美しい服や靴があれば、私のように体に悩みがある人も、不都合を感じずに生きられるかもしれない。

そうすれば、たまたま悪い体質や体型を持ってしまっても、自分の体を嫌ったり、悩んだりしなくて済むかもしれない。
それは、ボディポジティブのような「気持ちの問題」なんかじゃない。
実際、痛かったり、つらかったりするのだから、「気の持ちよう」みたいな扱いをされたら、見当違いが甚だしくて腹立たしい。
そういった実際の苦痛が解消されなければ、楽な気持ちになれないし、それを目指すのが人間じゃないかと思う。

2021年になっても、至らないところだらけの人間社会。人を幸せにするのは、くだらない精神論なんかじゃなく、テクノロジーを良い方向に進化させていくことだろうなぁと思った。

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