出会えてよかった          映画『夜明けのすべて』

藤沢さん、最近も山添くんの髪を切ってあげたかな
山添くん、自転車で少し遠くへ出かけるようになってるかな
栗田科学の社員のみんな、おやつ休憩とりながら仕事してるころかな
映画の延長線上の世界に思いをめぐらしてしまう、映画の中の人たちの
ささやかな日常がつつがなく続くことを願う
そんな愛すべき映画にであいました

職場の20代同僚に恋愛という設定(めくらまし)をしない脚本が素敵でした
(藤沢さんの)おせっかいに近い親切心、行動力(自転車をあげたり、髪を切ってあげたり)、(山添くんの)元コンサルらしい好奇心、観察力(書物から学び、アドバイスをする)、できることをする関係
抑えられない症状を抱えている重さが少し軽くなったり、ほぐれるような
その過程の描かれよう、二人を見守る世界に感動しました

夜は一様にやってきて、逃れられない。飲みこまれ連れさられる人もいて
でも誰にでも夜明けはくるし、夜も夜明けもめぐっている

画面に寄り添っているのは過剰に演出をもり上げない音楽、
明るすぎない光、ぬくもりが感じられるフィルム撮りも最高でした
演技も素晴らしいものでした
辛いシーン、転機になるシーンで過度に演技させない演出、主演二人の空気感、二人以外の役者の演技も溶けあっていました
小説ももちろん読んでいてよかったけれど、小説への敬意、小説の核を大切にしながら映画としての企みも試みも、クリエイションもしていたのが素敵でした

PMSの症状とはいえ当たり散らしてしまってそのお詫びにお菓子を買ってきた藤沢さんに、気を遣わないように言いながら本人がほっとするようなお礼の言いかたをする住川さん、ああなりたい、素直に思いました

私的傑作☆☆☆☆+

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