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本当の個別レッスン

あの週は、私のメンタルもボロボロになるほどだった。
待ちに待った約束の日曜日、海空先生の家の近くの駅で10時に待ち合わせだった。
10分前に着いたら、海空先生はいつもの愛車で待っていてくれた。

「稀琳に早く会いたくて、15分前から来てたんだよ。
 ちゃんと勉強道具は持ってきた?」

助手席に乗り込むと、私のトートバッグを受け取って後部座席へ置いてくれた。
「ちゃんと持ってきたよ。
 お勉強、よろしくお願いします!」

海空先生は、また私の頭をポンポンしてくれた。
勉強する場所が見つからなかったとのことで、海空先生の大学院の研究室へ行くことになった。
部外者が日曜日に研究室に入っても大丈夫か心配だったけど、海空先生は
「今日は俺1人で実験やることになってるから、
 誰もいないよ!」

とニッコリしてくれた。
途中のコンビニで、飲み物とランチ用のサンドイッチを買って大学院へ。

部屋に入って、いろいろな機械や実験道具があってキョロキョロする私。
「いろんなものが珍しいだろ~」
って自慢するように、誇らしげに話す。
研究室の窓際で、数学を教えてもらった。
高校の授業よりわかりやすくて、目から鱗が落ちるとは、こう言うこと?という状況だった。
「稀琳は、もともと数学が得意だから
 呑み込みが早いな~
 教え甲斐があるよ!」

中学の時のように褒めまくってくれる。
正しい解答に辿り着けると、頭をポンポンしてくれた。

2時間ほど勉強して、13時近くなっていた。
2人でランチとしてサンドイッチを食べた。
そして、心臓のこと、眼の手術をしないといけなくなったことを伝えた。
「そういえば塾の授業中に、
 眼の向きがヘンだなと思ったことはあったよ。
 それって外斜視って言うんだ。」

海空先生は自分のノートのすみに『外斜視』とメモをしていた。
「稀琳、痛みに弱い方だから、
 絶対に全身麻酔の方が良いよ~
 心臓に問題が無くて、ホッとしたよ!」

この前のことを引きずっているようで、ちょっと恥ずかしかった。
海空先生の一言のおかげで、手術の決心が出来た。
海空先生はバックハグで
「俺が応援してるから、大丈夫だよ!」
と、また耳もとで囁く。
椅子に座っていなかったら、腰が砕けて崩れてしまってかもしれない。

午後も1時間ほど勉強をしたところで、
「今日はおしまい!」
と海空先生に教科書とノートを閉じられてしまった。
「えぇ~、私、水曜日の数学の小テストなの!
 大丈夫かなぁ~」

と、頬を膨らませて言うと、頬にキスされた。
「イヤァ、俺が我慢の限界だよ」
海空先生に強く抱き締められた。
「研究室の隣に、俺がよく使ってる仮眠室があるんだ。
 そこじゃイヤかな?」

私は静かに首を横に振った。
そして仮眠室で私は抱かれた。

これは1993年5月末のエピソード。
体育の授業中に見た、海空先生と同じタイプの車を見たことを聞けないまま、海空先生の腕の中にいた。

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