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愛人になってよ

イケちゃんから誘われた飲み会に参加した。
カラオケのバイト先の他の女の子は誰も誘わず、私だけに声をかけたとの事だった。
野球部のメンバーが5人、その友達という女の子3人と私の9人での宴。
女の子たちの分は、男性たちが支払っているから気にしなくて大丈夫だとイケちゃんに耳もとで囁かれた。
この時の囁き方と声の感じが海空先生とソックリで、危うくその場に座り込んでしまいそうになったところを、イケちゃんが支えてくれた。
いつもみたいにニヤッとして、
「稀琳ちゃん、耳が性感帯なんでしょ~」
と、また囁く。
私は慌てて
「たまたまだよ~
 あんまりいじめないでよね!」

と逃げようとしたら、腕を引っ張られキスされた。
唇が離れて、放心状態の私に
「ご無沙汰だったんでしょ、キス!
 エッチしたくなったら、ちゃんと言うんだよ!」

と言いながら、私の手を握って宴の会場へ入っていった。

いろいろな人に声をかけられたが、私は上の空。
イケちゃんは、別の女の子とかと楽しそうにお喋りしていた。
イケちゃんと仲が良いという、ヒカル君とパソコンの話で盛り上がった。
ヒカル君は5歳年上の、笑顔がカワイイ人だった。
やっと上の空だった状態から脱け出した。
ヒカル君はイケちゃんの事をたくさん教えてくれた。
イケちゃんの年齢は、また私より9歳年上
結婚していて、2歳の男の子のパパだけど、共働きで通勤に2時間ほどかかる所に住んでいるから、会社周辺で遊びまくっているとのこと。
実家が会社の近くだから、残業で実家に泊まると言えば遊び放題なんだと。

ヒカル君に教えてもらっていなかったら、勝手に恋しちゃうとこだった。
危険なとこを助けてもらったと思いつつ、何も言わずにいた。
その日の飲み会が解散となり駅までの帰り道、イケちゃんと2人だけ。
またもや突然バックハグをされてしまった。
周りには誰もいない。
「稀琳ちゃん、ホテルに行こうよ~」
「ダメだよ!
 イケちゃん、奥さんと息子がいるんでしょ!」
「そんなの関係ないよ~
 俺は稀琳ちゃんとSEXしたいんだよ~」
「ハイハイ、酔っぱらいはおウチに帰りましょ。」
「じゃあ、酔いがさめるまで一緒にいてよ!」

私は駅近くのコインパーキングに停めていたので、実家まで送っていく約束をして歩いた。
(私はお酒好きですが、飲酒運転はしていません)

車に乗り込むと、助手席のシートを倒して寝てしまったイケちゃん。
「ねぇ、実家はどの辺なのよ?」
全く起きる気配のないイケちゃん。
仕方ないので、近くの公園の駐車場に停めて起こすことにした。

30分くらいして、やっと目が覚めたイケちゃん。
突然私を抱きしめて、
「今までツラかったよな・・・
 俺が稀琳ちゃんを幸せに出来そうなヤツ
 探してやるからな。
 だから俺の傍にずっといて、ニコニコ笑ってろよ」

私はまたキョトンとするだけ。
「稀琳ちゃん、今まで会った女の中で
 1番守ってあげたくなる子なんだよ。
 ストーカー野郎に殺されなくて良かった。
 借金も、俺のヘソクリから支払いを
 手伝ってあげたいけど、どうかな?」

よくよく話を聞くと、お金を援助する変わりに愛人になれと言うことだった。
そしてあわよくば、自分の知人と結婚して、自分との関係は継続したいと。
私は、あまりにも突然のこと過ぎて頭が真っ白状態。
こんなこと即答できないから、少し時間を欲しいと答えた。
イケちゃんも納得してくれて、1週間待ってくれると約束して、イケちゃんを実家マンションまで送り届けた。

これは1999年7月頃のエピソード。
私は1週間“愛人”問題で悩むことになった。
確かに借金の援助をしてもらえれば、昼夜続けて仕事をしなくてもよくなる。
でも、身体は海空先生のために他の人には抱かれたくないという気持ちが強かった。
実はイケちゃんからは、海空先生と同じ香りがしていたので、葛藤していました。

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