【書物復権2024】備忘

春に本屋で見かけて気になっていた書物復権という企画。来年も開催されるようなので、今回は自分もリクエストしてみた。

「書物復権」とは、複数の学術出版社が共同して主に人文・社会科学系の学術書の復刊を行う企画である。毎年、各分野の重要書でありながら惜しくも品切れになってしまった本がこの企画を通して復刊されているようだ。

私は『ロールズ哲学史講義』、鹿島茂『馬車が買いたい!』、ジョン・C. トーピー『パスポートの発明:監視・シティズンシップ・国家』の3冊をリクエストした。

最終的な復刊の判断は出版社に委ねられるようだが、『ロールズ哲学史講義』については是非とも復刊してほしい。「哲学史」とあるが実際には道徳哲学史についての本だ。どうやら去年も復刊候補に上がっていたようだが、残念ながら実現しなかったようである。

本邦では学術分野としての倫理学、道徳哲学はやや影がうすいようにも見える。しかし現実に目を向けると、倫理や道徳についての見解の違いから論争が起きている問題は多くある。互いに何が倫理的であるかの見解がずれているのに、そこのずれを認識せずに、ただ相手を非倫理的だと糾弾するような不毛な論争が交わされていることも多い。そのような問題に対して見通しを得る上でも、欧米における倫理学の議論の蓄積はもっと参照されるべきだ。

特にロールズはリベラリズムの最重要論者の一人であり、『正義論』をはじめとしたその著作を日本語で読むことができるようにすることは高い意義を持つ。さらに言えば、『政治哲学史講義』の方は岩波現代文庫で文庫化までしているのだから、『(道徳)哲学史講義』の方もできれば文庫化してほしいものである。

私がリクエストした本以外にも面白そうな本が多く候補に上がっており、これらが絶版のまま埋もれてしまうのは大変残念なことだと思うので、可能な限り多くの本が復刊されることを願う。