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私立大学公募の勘所

公募で採用されるのは1名である。
つまり、応募者の中でNO.1にならなければ採用されない。
採用する側の視点を知っておくことは大事なことだと思う。

私立大学の教員公募は書類審査・模擬授業・面接の三本柱である。

書類審査

研究業績書・教育業績書・採用後の抱負(教育に関する抱負)の3点の提出を求められる場合が多い。

「研究業績書」は主観を排し、他領域の人でも審査できるようにポイント制になっている。イメージとしては、海外学術雑誌が2点、日本学術会議協力学術団体(日本○○学会など)学術雑誌が1~2点、その他の学術雑誌(紀要など)0.5~1点、資料紹介や翻訳が0~0.5点といった感じである(具体的なポイントは分野や大学によって異なる)。著書は単著の研究書は5点、それ以外の著書は0点と考えるといいだろう。

私立大学の場合、「教育業績書」も重要である。私立大学の公募では「大学などで○年以上の教歴があること」「教員免許状を取得していること」「小学校・中学校・高等学校での指導経験があることが望ましい」といった条件が課されていることが多い。当然、これらの条件を満たしている応募者の方が優位に立つし、「望ましい」と書かれている条件であっても条件を満たす応募者が優位に立つ。教歴や教員免許状は小手先ではどうすることもできないため、ここでふるい落とされる応募者も多い。

さて、意外と悩むのが「採用後の抱負」である。これは民間企業で言うところのエントリーシートである。採用後に自分がやりたいことを書くのではなく、自分がどのように採用校に貢献できるかを書かなければならない。

当然、エントリーシートを書くためには企業研究が必要である。私立大学は数十年、百数十年にわたり歴史を持ち、それぞれの大学に強みと売りがある。私立大学の公式HPや予備校のHPには各大学の特色や売りがまとめられているので、大いに活用すべきだ。

この書類審査で、応募者はだいたい5人程度に絞られる。

模擬授業

私立大学では採用時に模擬授業を課す大学が一般的になりつつある。理由は単純で、「自分の学生に見合ったレベルの授業ができるか」を見るためである。意外とこれができない応募者は多い。

一般的に、大学教員を目指す応募者はそれなりの大学の出身である。一方、採用校の多くは応募者の出身校よりも学力が低く、学修意欲が必ずしも高いわけではない。したがって、自分の出身校で使っていた教材や授業内容では「うちの学生には難しすぎる」と思われる可能性が高い。
自分が受けてきた教育と目の前にいる学生に必要な教育というズレを上手く埋められるかどうか。ここが模擬授業での腕の見せ所になる。

最近はYouTubeで模擬授業を公開したり、HPやInstagramで普段の授業の様子を公開したりしている大学も多い。採用校で普段どのような授業を行っているかは把握しておくといいだろう。

なお、一般教養系の教員として模擬授業を行う場合、「授業内容に興味はないが、単位のために仕方なく履修した学生」を想定しておくといいだろう。彼らが興味を持つような教材や内容を扱えれば、模擬授業の評価はおのずから高くなるに違いない。

さて、この模擬授業で起こるのは次のような事例である。
 A:研究・教育業績は1位だが、模擬授業が上手くいかなかった。
 B:研究・教育業績は2位だが、模擬授業は上手くいった。
私立大学は極々一部の大学を除いて、研究よりも教育を重視している。したがって、上記の場合はBが採用される可能性が高い。
もし、研究業績や教育業績で誰にも負けないのに不採用が続くという時は、模擬授業に改善の余地があるかもしれない。

面接

面接は聞かれたことに素直に答えればよい。やったこともない仕事を「やったことがあります」などと見栄を張る必要はない。採用後にドッと仕事が舞い込んで苦労することになる(ただし、「やったことはありませんが、任された仕事は頑張ります」程度の意欲は見せておこう)
ここでやってはいけないのが「採用後の抱負」と矛盾する回答である。これをやってしまうと、「書類と面接で言っていることが違う。うわべだけの人だな」と心証が著しく悪くなる。面接前に自分が提出した「採用後の抱負」はきちんと読み直しておこう。

最後に

大学教員の公募において、たった1回の応募だけでテニュアなしの専任に採用されることはほとんどない。少なくとも十数校は落とされるであろう。当然、不採用になれば落ち込む。それが何回も続けば心が折れそうになる。
だが、応募すること自体を辞めてはいけない。

実際、あるのだ。「Aさんが応募してくると思ったけど、応募してこなくて。だから、Aさんよりは業績が劣るけど、応募者の中で一番よかったBさんを採ったよ」というパターンが。

あなたが応募しなければ、あなた以外の人が採用される。
応募しない人には採用されるチャンスさえない。

このことは忘れないでほしい。

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