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『WICKED』(後編)

オズの魔法使いの策略を知り、エルファバは独りで権力に立ち向かう道を、グリンダは"善い魔女"として国民の象徴的存在になる道を選ぶ。

時は流れ、パーティーが始まる。グリンダとフィエロの婚約パーティーだが、フィエロは初耳だ。オズの報道官となったモリブル(元先生)は、ここぞとばかりにエルファバを"悪い魔女"として群衆に知らしめる。

邪悪な魔女は水に溶けるぞ!

群衆の一人がそう叫んだことで、噂があっという間に広まる。これを聞いたフィエロは、馬鹿げた噂のこと、そしてエルファバが悪い魔女扱いされていることに憤ってその場を去った。フィエロはグリンダの彼氏だが、自分の本質を見抜いたエルファバに心が揺れていた。

美人でちょっとおばかさんなグリンダだが、愛するフィエロの心が離れていくことに気づき、このとき初めて虚しさを覚える。
しかし、みんなに愛されているのだから、きっと幸せに違いないと自分に言い聞かせるのだった。

その頃ネッサ(エルファバの妹)は亡き父である総督の座を引き継ぎ、愛するボックと共に暮らしていた。ネッサは親しみを込めてボックの名を呼ぶが、ボックはよそよそしい態度を貫く。
ボックが別の部屋へ去ったその時、エルファバが現れた。 

独りで戦ってきた自分を匿ってほしいと頼むエルファバに対して、ネッサは苛立ちをぶつける。動物たちのことは救うくせに、私のことは助けてくれやしない。歩くことさえできれば、私は幸せになれるのに。

そこで、エルファバはネッサの銀の靴に魔法をかける。魔法がかかって赤くなった靴を履いたネッサは歩けるようになると、すぐにボックを呼んだ。ボックはエルファバを見て身構えるが、歩けるようになったネッサ見て、その手を取って喜ぶ。

『これで僕は自由だ、愛するグリンダの元へ行くよ』
取り乱したネッサはエルファバから魔法の本を奪い、ボックを行かせまいと必死にデタラメの呪文を唱え始める。するとボックは急に心臓を抑えて苦しみだしたのだ。

早く呪文を解いて!とネッサはエルファバに助けを求める。しかし、一度かけた呪文を解くことはできない。エルファバは『彼の心臓が二度と痛まないように』と別の魔法をかけて去っていった。

荒かった呼吸が落ち着いた雰囲気を感じ取ったネッサは、後ろ向きで椅子に腰掛けていたボックの様子を見にいく。なんとそこにいたのは、ブリキ男となったボックだったのだ(『オズの魔法使い』に出て来る『ブリキ男』の誕生)。 

Wonderful

フィエロやグリンダに会えることを期待したのか、エルファバはオズの城にこっそり潜入する。そこに現れたオズに対してエルファバは敵意をむき出しにするが、『独りで戦ってきて辛かったろう、こっち側においで』とオズは甘く囁く。

エルファバは心が揺らぐが、囚われ言葉を奪われたディラモンド先生(ヤギの先生)を目にし、徹底抗戦を宣言する。オズが慌てて護衛兵を呼んだところ、その先頭にいたのは、なんと護衛兵の隊長となったフィエロだった。

I'm Not that girl 私じゃない(リプ)

フィエロはエルファバに銃を向けるが、オズの隙をついて彼女と共に城から脱出する。それを見たグリンダは、フィエロの心が自分から完全に離れたことを知った。

失意のどん底にあるグリンダを前に、モリブルとオズはどうやってエルファバを連れ戻すか策を練る。彼女の何か大切なものを奪えば、囮にできるのではないか。天候を操る魔女・モリブルは、ネッサに呪いをかけるのだった。

城から逃げ出したエルファバとフィエロは愛を誓う。私がもっと綺麗だったら良かったのにと自嘲するエルファバに対して、大切なのは中身だとフィエロは優しく伝える。

生まれて初めて幸せにひたるエルファバだったが、ふと嫌な予感がして空を見上げる。見えたのは、竜巻に乗って飛ばされていく家だった(『オズの魔法使い』に出てくる『ドロシーの家』)。ネッサに危険を感じて助けに行こうとするエルファバに対して、フィエロは無事を願い、後で落ち合う約束をする。

エルファバの悪い予感は的中し、ネッサは家の下敷きとなって亡くなっていた。ネッサは総督として独裁を敷いていたので"東の悪い魔女"と呼ばれており、家から出てきたドロシーはわけが分からないまま国中から感謝されるのだった。 

そこに現れたグリンダにドロシーは『家に帰りたい』と言うと、グリンダはネッサが履いていた赤い靴を渡して、黄色いレンガの道をまっすぐ行ってオズに行くよう指示する。そして、ドロシーや国民が去ると、人知れずネッサの死を悼んだ。

エルファバが現れ、グリンダ憤りをぶつける。ネッサの死は自分の誘き寄せるための罠だったのではないか。対するグリンダは、濡れ衣だと驚き、フィエロを奪ったことについて怒りをぶちまける。2人の喧嘩がヒートアップした矢先、オズの兵士たちが現れてエルファバを捉える。

やっぱり罠だったのね!と憤るエルファバに対して、グリンダは違う!と必死に否定する。
そこに現れた救世主・フィエロは、エルファバを逃がすべくグリンダに銃を向けた。
エルファバは無事に逃げることができたが、フィエロはかつての恋人だったグリンダにそれ以上銃を向けることができず、力なく銃を取り落とし、兵士に捉えられてしまうのだった。

No Good Deed 闇に生きる

フィエロが袋叩きの刑に処されていることを知ったエルファバは彼が死なないように、必死で祈りの呪文を唱える。正義のために戦ってきた彼女だが、ディラモンド先生、ネッサ、そして愛するフィエロすら失ってしまったかもしれない苦しみに心が引き裂かれる。

これまでの善意がすべて報われてこなかった彼女は、『No good deed will I do again!』(二度と善い行いはしない!)と叫び、『I'm WICKED!』と宣言するのだった。

その頃ドロシーはエメラルドシティに向かう道すがら、心を求めるブリキ男(ボック)、勇敢さを求めるライオン(前編で登場)、そして脳を求めるカカシと出会い、共にオズに謁見していた。オズは魔法は、"西の悪い魔女"(エルファバ)を倒したら願いを叶えてやると交換条件を出してきたので、魔女狩りに向かう。

ボックはエルファバにブリキ男にされた怒りから、群衆を魔女狩りに煽り立てる。猛り狂う群衆を見て、いくらなんでもやり過ぎだとグリンダはモリブルに事態の収束を懇願するが、
『人気者になりたいと望んだのはあなたでしょう?あなたはただ笑って、手を振っていればいいのよ!』と逆に凄まれてしまう。

一方、ドロシーがネッサの靴を履いていることを知って憤ったエルファバは、ドロシーたちを捕らえた。靴を返せと脅すエルファバだが、メンタルはボロボロだった。ドロシーを別の部屋に閉じ込めた時、グリンダが現れる。

For Good あなたを忘れない

時の流れは、二人の諍いを水に流してくれていた。エルファバは降伏し、オズに平和をもたらすという夢をグリンダに託すと伝える。

I'm limited
Just look at me - I'm limited 
私はもう限界よ
And just look at you - 
You can do all I couldn't do, Glinda
グリンダ、あなたには私が成し得なかったことをできるわ
So now it's up to you For both of us 
Now it's up to you
あなた次第よ 
I've heard it said That people come into our lives for a reason
人との出会いには理由があるの
Bringing something we must learn
かけがえのない学びを与えてくれるのよ
And we are led 
To those who help us most to grow
もっとも成長させてくれる人に導かれるの
If we let them 
And we help them in return 
もし互いに助け合うことができたならば
Well, I don't know if I believe that's true 
これが本当かは分からない
But I know I'm who I am today 
Because I knew you
でも、今の私がいるのは、あなたと出会えたから。 
Like a comet pulled from orbit 
As it passes a sun 
太陽の軌道に引き寄せられる惑星のように
Like a stream that meets a boulder
Halfway through the wood
森の途中で大きな石に出会う小川のように
Who can say if I've been changed for the better? 
私がよい方に変わったかどうかわからないけれど
But because I knew you 
I have been changed for good
あなたと出会えて、私は変わったの。 

『My future is unlimited!』『Together we're unlimited』、『I'm limited So now it's up to you』

『unlimited』と『I'm limited』の響きが似ていて余計切ないが、エルファバはグリンダに夢を託したのだ。

Good News‼︎悪い魔女は死んだ‼︎

このあとエルファバはドロシーの元へ行き、水をかけられて消えて無くなる。群衆は狂喜乱舞し、ここで一番初めの場面に戻るのだ。

大切な親友を失ったグリンダは、悲しみの中、国を背負う決意を新たにして、オズの元へ向かう。そして、動物の言葉を奪った元凶としてオズとモリブルを追放し、群集の前で国の平和を誓った。

ドロシーと旅をしたカカシが、地下室のドアを叩いている。そこから出てきたのはなんと、、エルファバだった。彼女は噂通り水に溶けて死んだふりをしていたが、実は生きていたのだ。そして、このカカシこそがフィエロだ。

『袋叩きの刑にあっても死なないように』というエルファバの願いが、彼をカカシに変えていたのだ。前編で『頭空っぽにして、人生踊り明かそうよ!』と謳っていたフィエロが、脳のないカカシになってしまったのだから、ちょっと皮肉だ。『僕がもっと綺麗だったら良かったのに』と自嘲するフィエロに対して、大切なのは中身だと今度はエルファバが優しく伝える。

グリンダだけには、自分が生きていることを知っていてほしいと願うエルファバだが、誰にも知られてはいけないとフィエロは言い、二人でオズの国から去っていった。

完。

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