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【梶谷真司先生】レポートの書き方講座〜ちょっとしたまとめ〜

先日は7月17日開催【大学生のためのレポート講座】には本当にたくさんの方が来てくださり、配信におけるテック面でサポートをさせていただいたのですが色々と手こずってしまい申し訳ありませでした。今回の講座がみなさまにとって少しでも役にたったことを願います。

また、私自身も今回の講座を受け、色々と考えることがあり、文字にしてまとめさせていただきました。
自身が高校3年生の時に(6年前だなんて・・・)に論文を書く課題の際にもらった参考書を引っ張りだし、そこからヒントを得ながら文章・レポートの書き方を私なりにまとめ直してみました。

まずはいくつか質問をピックアップしてから、具体的な「書き方」のところを掘り下げてみたいと思います。


(ヘッダーの画像は、私が立ち上げた「学問や研究をクリエティブに伝える団体」OFF LABELのキービジュアルを拝借しました!
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論文とレポートの違いは?

客観的な情報をまとめた(まとめる手段として論理的・批判的に)事実の集まりがレポート、客観的事実を根拠として自分の意見を展開するのが論文です。

レポート:課題・問い⇄客観的事実
論文:問い→仮説・客観的事実→持論→検証→結論

だと考えて良いのではないでしょうか。

自明の事象に対しても注釈、参考文献として明記する必要があるのか?

この問いに対して、とても参考になるYouTube映像を見つけたので、ぜひ視聴していただきたい。この動画の中では、「アメリカ合衆国は日本よりも大きい」という事象に対して、具体的に数値をもってくることであえて注釈が必要な材料として扱う、そうすることで具体的に、正確なデータをもってこれるだけ出なく字数も稼げる。ということを述べています。一方で字数制限があるレポートの場合主要な論点ではなく、こういったところで字数を使ってしまっては勿体無い、というのとこういった書き方に慣れてしまうと、問い立て、組み立て方といったレポートを書く上で本当に重要なことがおざなりになってしまうというのも感じたのでそれを頭に入れた上で必要な場合は使っても良いテクニックなのではないかと感じました。

ネット上信憑性の高い先行研究はどのように見つけたらいいのか?

まずここでいう信憑性というのは、その内容の責任の所在が明確かいなかです。例えば著書の場合、その内容を出版社がある程度訂正なりしたうえで発行しているので間違った情報を流すことは会社的にもネガティブです。インターネット上の情報でも、その情報を提供している情報源によって変わってきます。また、ネット上の論文の場合、ジャーナルに掲載されている論文の多くは「査読」といって著者と同じ分野の研究者に論文の内容を評価してから出ないとのらないものが多いです。このように、その内容の責任の所在をどこが請け負っているのか、またはどれくらいのプロセスを経てそこに掲載されているのか判断すれば良いかと思います。

後半で探し方というところでは詳しく書いているのですが、図書館にいけない今、インターネット上に頼ることが多くなった状況で以下の方法を二つ紹介します。

●グーグルから探す場合、
●ジャーナルから探す場合、
と大きく二つに分けてみました。

前者のグールグルから探す、の場合、政府をはじめとする公的機関が制作している統計データなどは信頼に値するデータなので積極的に活用することが適切かと思います。この時は自分の探したいデータがある程度定まっている場合がいいかと思います。また、同じデータでも日英の両方を提供していることが多いので英語のレポート課題が出された際も活用できます。ただ、このデータも古すぎるものだと、適切なデータとは言い切れないのでなるべく新しいものにしましょう。

Google等で自分の調べたいキーワードをただ入力するだけではまとめサイトやwikipediaといったあまり信憑性のないデータばかりになってしまうので探し方や検索の仕方は工夫をする必要があります。行き着いたデータがどこのデータかはっきりとわからない場合、URL のドメイン名から情報の元を知ることができるので参考になるかと思います。

co.jp:企業等 
ac.jp:教育機関 
go.jp:政府機関⇒比較的信頼性が高い
.com:商業組織 
.org:非営利組織⇒誰もが取得可能なため、事実に基づいた内容のみが書かれているとは限らない

出展:
学習院大学「押さえておこう!情報の特徴と信頼性の見極め方」

後者のジャーナルから探す、ですが探し方は後半で詳しく記しているのでぜひこのまま読み進めてみてください。このジャーナル内で探す上での信憑性を担保する上で、限定条件として査読付きの学術誌を選ぶという手法があります。査読は、著者と同じ分野の研究者に論文の内容を評価してもらうことなので、あまりにも論理に飛躍があるものなどはその学会やジャーナルの面子(言い方があれですが)もあるので載せることはないと思われます。

一般的に図書は、研究者や専門家によって書かれ、編集者や出版社の手を経て発行されるので内容についての責任の所在は明確です。しかし「図書館にあった本」だからといって信憑性が高いとも言えません。本だとしても、ビジネス書や小説など(描写から推測したデータなど、その文学作品自体が研究対象ではない場合)は適切な参考文献とは言えません。

また、集めた資料が散逸しないように、ミスなく参考文献として記載できるように文献・資料目 録を作っておくことも大切です。分類項目で整理を して、著者、タイトル、雑誌名(巻・号)、出版社、ページ数などを記入し、エクセルやノートなど、自分が管理しやすい媒体で保存しておくようにしてください。Evernoteで論文PDFを管理する方法は私の友人もとてもおすすめしていたのでリンクを貼っておきます。

体裁はどれくら気をつけるべき?

教授から何らかの指示がある場合、それはまずとことん守ってください。
字数、書式等。それを守らなければ容赦無く減点されてしまうと思います。それがない場合の体裁ですが、基本的に文章スタイルは「ですます調」ではなく、「である調」で統一するのが望ましいと言えます。その他

タイトルや名前、学籍番号等の相手が自分を特定し評価しやすいような情報入れておくようにしましょう。タイトルももし課題がかなり限定された内容の場合、その限定された内容にどれだけそくして書いたのか一目でわかるもの、もし特に条件等がない場合は文章の大まかな内容がわかるようにしてみるといいかと思います。

序論やまとめって必要?何書くの?

序論、まとめ、などには字数が少ないレポートであればあるほど分ける必要はないかと思いますが、明確に記載せずと内容としては「序論的なもの」「まとめ的なもの」はあったに越したことはないのではないかと思います。

序論は本文で言いたいことにいきなり言及するのではなく、相手を引き込ませるための潤滑油だと考えてください。身近な社会問題や比較的とっつきやすい、内容から徐々に具体的に、本題に入っていきます。構造としては逆三角形型を想像してみるとわかりやすいかと思います。


最後に質問の多かった参考文献の書き方や脚注の付け方ですが、ここで説明するよりも調べた方が早いかと思うので割愛させていただきます。

先生によっては書式が決まっている場合もあるのでここは要チェックです。
立命館大学国際関係学部「レポート/卒業論文執筆の心得」が個人的にはとても詳しく書いてあると思ったので一応のせておきます。このnote全体を書く上でもとても参考にさせていただきました!


私流、レポート・文章の書き方

POINT まずは課題を解釈するところから始めよ

例えば、
その学期に取り扱った歴史的人物を一人あげた上で、日本国に与えた影響について考察しなさい。 
という課題が出されたとします。(割と適当に選んだ)

まずはこの課題を切り分けた上で、どの切り口から攻めていくのか考えることから始めます。つまり課題を自分なりに再解釈するのです。
この解釈を行っている段階でよくわからなかったりする場合は先生にメールなどで問い合わせてください。(この時のメールのマナーにも気をつけよう!なるべく学校のメールから、件名は名前と要件を端的に、本文は自分の所属などを明記した上で質問をする等)

では「解釈」をより噛み砕いてみましょう・・・
①その学期に取り扱った歴史的人物→その学期の授業で、新島八重が扱われていた場合、その人に絞る。

②日本国に与えた影響→ここでいう影響がレポートを書くうえでの切り口となります。そしてここに独自性や論理性を見出していくのがポイントです。おそらく授業で扱ったのであれば、その人物に関する何らかの基礎知識はあるはずなので、その基礎知識を元に先行研究を探す手立てにできるはずです。


例えば 新島八重×女子教育 に与えた影響 (切り口:教育)
▶︎隠れた問い:新島八重が教育といっても女子教育に何らかの影響は与えたのだろうか?
新島八重×地位の確立 に与えた影響 (切り口:フェミニズム)
▶︎隠れた問い:新島八重は女性の地位の向上・・現代でいうとフェミニズムに何らかの貢献をしたのだろうか?

と言ったように取り上げたい題材に対してキーワードを切り口としてかけ合わせていきます。Google Scholarなどで先行研究を探す場合なども、このように二つのキーワードで絞ることでグッと探したいものが探しやすくなります。

また、教授の方にその専門分野を検索する上で適切なジャーナルなどを聞いてみるといいかもしれません。ちょっと話題が逸れてしまうのですが、「適切な参考文献の探し方を教えてください」という問いに対して、インターネット上でアクセスできる文献の場合の探し方を少し説明させていただきます。

東京大学の場合、本学の学生は、学校のWIFI、またはSSL-VPN Gatewayサービスを使うことで様々なジャーナルの論文にアクセスする権利を得られる。おそらく他の大学でも学校のアカウントを取得していれば、ジャーナルの中でも全文にアクセスする権利は大幅に上がるのではないでしょうか。

東大が契約しているジャーナルの例

このジャーナルの数が半端なく多いので、教授の方におすすめのジャーナルやサイトを聞いておくというのがポイントになってきます。そしてジャーナルを定めた上で、上記で説明をした査読つきのもののみ限定することもできるのでそのようにして、信頼できる先行文献を集めることができるかと思います。

そして話は戻りますが、▶︎の後に述べた隠れた問いがいわば仮説です。
仮に、新島八重×LGBTQと切り口を設定し、問いを新島八重は幕末のLGBTQに何らかの影響を与えたのだろうか?としたします。確かに切り口はとても斬新で面白そうですが、そもそも論じる余地があるかどうかも検討することがとても重要になってきます。おそらくこの切り口からでは先行研究が少なすぎるためなかなか客観的な争点を見いだすことができない事象です。

また、梶谷先生は色々と書いてから削っていく手法をおすすめされていました。この「絞る」という行為はかなり難しく、せっかく考えたのだからといって全部詰め込みたい系の私にとってもとても難しいです。
そんな時に、量的に減らすのではなく、似通っているテーマはまとめて、一つのテーマとして語るのです。つまり、何らかの共通している観点に基づいてグルーピングし、類似事項を抽出した結果を研究対象とします。抽象的用語にまとめ、それらの積み重ねによって結論を導きだしていきます。

先ほどの新島八重の場合、女性の地位向上、女性の教育、など総括すると例えば、フェミニズムという枠組みの中にまとめることができます。あまり字数の多くないレポートでも、質の良いものにするには、この抽出した大きなテーマがより学術的であると短くても質の良いレポートが書けるのではないでしょうか。一方で、研究の大きな枠組みについて知る機会というのはなかなかありません。この関心のある分野のジャンルの名前がわからない!といった現象にぶちあった大学3年生の頃の私は、とにかく図書館の著書検索に関心のあるキーワードを書き場所を調べ、大体似ているセクションのところに調べた本が全て集まっているので、そのセクションの本を複数読み、これはこの分野から研究されていることが多いテーマなのか!と自力で導き出していました。今となっては例えば「メディア」という割と誰でも知っている大きな枠組みをより小さな学術的枠組みに分けて掲載している著書なども出版されているため、とても参考になるかと思います。

↑私が大学院受験時代に買っていた本
木村涼子・ほか編(2017)『よくわかるメディア・スタディーズ』ミネルバ書房

最後に「書いてから考えるというのは、自分に色々問いかけをして材料を出していく」と梶谷先生は答えていましたが私は「出す」というよりも「自分の中から紡ぎ出す」行為であると考えています。つまり、自分の中にまず材料をたくさんもっていないといけません。さらに、その材料が客観的に語れるだけの材料である必要があり、言うなれば、好き・関心がある、だけでは成り立たないのではないかと思っています。

つまり材料をパズルの一つ一つのピースに例えると、レポート課題というのはパズルのピースをたくさんもっている状態にあることが前提で、そのピースの中からあれでもない、これでもないと組み合わせていく作業です。
先生のおっしゃっていた「取捨選択したら減っていくから多めに用意する」というのは具体的にパズルのピースをたくさんもっておくということでになります。

しかし、大学1年生にとってパズルの組み立て方もわからなければパズルのピースさえも潤沢にない。と思う方も多いかと思いますが少し工夫をすることとでグッと材料を集めやすい思考に変えることができると思います。
まず、レポートというのは、その授業の内容について書くことが指示されていることがほとんです。つまり、レポート課題を出された授業こそがそのパズルを集めるためのとても重要な場であると意識して授業を履修してみると全く違う需要の仕方ができるかもしれません。

そしてパズルを一つ一つ回収することに慣れてきたらそこから派生するパズルを自分で生成できるようになります。その生成の過程として、他の授業で聞いたあれがもしかしたらこう組み合わせることで新たなパズルピースになるのではないか、常に頭をフル回転させて授業を受け身になり聞くだけでなく常に能動的に情報のインプットとアウトプットを行ってみてください。

私の場合、ADHD気質の強く、一度思考の派生が始まると次々とアイディアが湧き、収束がつかなくなってしまいます。その思考の癖を逆手にとり、とにかくアイディアとして浮かんできてきたことはとことんポストイットに書き記していました。このように、パズルのピースになり得るアイディア、考えたことをはしっかり忘れないように書き記すということがとても重要だったと今でも思います。

↑大学4年生のときのノート 

この思考を繰り返すと、自分の思考パターンが明白になるだけでなく、生成されたピース(アイディア)の中で全然違う授業でも似通ったものが出てくることに気づきます。今振替ってみると、その似通ったピースから抽出された考え、思考が私の今の大学院での研究の原点となっていて、さらに私の長いキャリアプランの中での軸になっています。授業では、授業内容を学ぶだけでなく、それを学ぶ自分という存在そのものから本当にたくさんのことを知ることできたと考えています。


追記:こんな形だから得られる学びって?

どんなにつまらない授業でもレポートでも、ちゃんと一つ一つ丁寧に扱っていけばいつか実になるかと思います。社会に出て行った大人たちの多くが「あの時00をもっとちゃんと勉強しておけばよかった、00の授業を聞いておけばよかった」と嘆くのは勉強の内容だけでなく、そこから派生して学べたであろう言語化できないような様々なことを踏まえていると思っています。

一度しかない大学生活、このような形で始まって辛い方も本当に多いかと思います。私自身、学生として最後の1年、さらには論文を書かなければいけないこの時に図書館にもいけず、ゼミにもいけず本当に辛いことばかりでした。そんな中で心がけたことは、画面越しに提供されている学問を精一杯に楽しむこと。大学をかえして得られる様々な娯楽がなくなってしまった今、正直学問に楽しみを見出さないとやってられなかったです。教室移動など、物理的なインターバルがない分、ちょっとした会話の中で出せていた自分らしさというのはなかなか出せず、会話のきっかけも作りづらく教授との関係性構築や友人作りなどにおいてとてももどかしかったです。
幸いにも東京大学はオンライン教育という点に関してはとても恵まれていたと思います。なので、5月あたりからはきっぱりと切り替えて、オンラインの中でいかにして自分が楽しむのかが重要でした。片っ端からシラバスを調べて、興味のある分野の中でもなるべく少人数のオンラインでも対話がしやすいような授業をとってみたり、プレゼンをする機会の多いもの選んでみたり、プレゼンの機会があれば必ず挑戦してみたり、(家からのプレゼンであるからこそ発表のテーマに剃って自分自身もプレゼンの橋がけとなるような服装やものをたくさん用意してみたり)、疲れるくらい楽しもうと努力してみました。
その結果、オンラインでしかあったことの無い友人もたくさんできたので、少しは後悔のないオンライン一学期になったのかなと思います。

今でもCOVID-19には恨みつらみですが、人生できっとここでしか学べない何かは得られたと思って、大切にしていきたいと思っています。

長く脈略のない文章ですが、何かためになったことを願っています。



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