強がる私はひとりで旅をする

時々ひとりで旅をする。
コロナもあったから
最近は近場ばかりだったけど
学生の頃は東京とかよく行ってたな。
せっかく来たしと思って、
ひとりでスカイツリーも東京タワーも登った。
カップルまみれだったので
恥ずかしくてたまらなかったぜ。

「ひとり旅が好きなんです」
自己紹介をするたびに何度もそう口にした。
たしかに好きだよ。
ひとり旅は気楽でいいもんね。
ノープランでも誰にも怒られたりしない。
ひたすら歩いて食べて、
ひたすら食べて歩いて。
そして、
この場所でしか見られないであろう風景に
やっとの思いでたどり着いたら、
いつまでもいつまでも
たったひとりでその風景を眺め続ける。
私はたぶん、
なんだか泣けてきてしまうようなその時間が
どうしようもなく好きなのだと思う。
だから、寂しがりのくせに
ひとりで旅に出るんだと思う。



詳しいことは書かないけれど、
怖い経験をした。
"どうしてこんなことになったんだろう"
そんなことを思いながら私は、
旅行へ行く予定があることを思い出した。

その場所は、
昔家族旅行で行ったことがあって、
とてもいい思い出として私の中に
ずっと残り続けている。
いつかまた必ず行こうと思い続けてきた場所。
"こっち来るなら運転するよ"って
貴方がそう言ってくれたから、
たまにはひとりじゃなくてもいいかなと思って、
その言葉を信じてみることにした。
誰かと行く旅行なんて久しぶりだから、
好きだなと思える人と行く旅行なんて
初めてだから、楽しみで楽しみで、
仕方がなかった。

怖い思いをしながら、
私はその旅行のことを思い出していた。
元彼の厄介な呪いから私を解放してくれた
優しい彼にまた会いたいと思った。
そんな私は、とにかく運がいいのだろうな。
取り返しのつかないことにはならずに済んだ。

自分の身に起きたことは、
私が思っていたよりも大変なことらしく、
私はどうしていいかわからなくて、
彼に相談することにした。
彼は、私を責める言葉は口にしなかった。
そして、私を慰める言葉も口にしなかった。


私は、彼と旅行に行くのはやめようと決めた。
私の話を聞いた彼が、
静かに私から離れていくのがわかったから。
私から離れようとする彼を引き止めることは
絶対にしてはいけないこと。
こじらせた私にだって、それくらいは、わかる。

たぶん心のどこかで、
「怖かったね。」って言ってくれると
期待してたんだろうな。
そんなの甘えでしかない。
自分のそういうところが本当に本当に嫌いだよ。
"私には女子としての魅力はないから
怖い思いをすることなんて絶対にない"
そんなしょーもなくて弱い
こじらせ女子特有の言い訳が
こんなことを招いたのだから、
同情なんてしてもらえるわけがないのにね。

彼との予定がなくなったことは悲しいけど、
もっともっと悲しいのは、
自分が本当はひとり旅が好きじゃないってことに
気づいてしまったこと。
ひとり旅は好きだよ、
なんだか泣けてきてしまうあの時間は、
たまらなく大好きだよ。
でもやっぱり、ホントのホントは、
誰かと一緒に行きたかった。
私がその場所を旅したということを、
誰かに覚えていて欲しかった。
だけど、ひとりで生きていくには、
そんな思いを消してなかったことにして
ひとり旅を好きになるしかなかった。
「ひとり旅が好きなんです」
_____そんな強がりを
私は何度も何度も繰り返し口にして、
寂しがりの自分を押し殺してきたんだった。



でももう
自分がひとり旅を好きでも嫌いでも
どっちでもいいや。
好きなのもホントだし
嫌いなのもホントだから。
そんなよくわからない自分だからこそ
書ける文章がきっとあると信じたくて、
この記事を書いてみたのでした。

また恋愛失敗しちゃったなぁ。

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