ヘルタースケルター（2012年）

ヘルタースケルターは岡崎京子原作の漫画を、写真家の蜷川実花が映画化した作品。

りりこはなりたい顔No.1に選ばれるような、女性が憧れる完璧な美貌とプロポーションの持ち主。誰もが魅了され、彼女の顔を見ない日はないくらい売れに売れているトップスターだが…。

実は彼女の容姿は度重なる全身整形で作り上げられたものだった。

事務所の社長である多田が、りりこを見出し、全身整形して売り出した。「あの子はさー、元のまんまのもんは目ん玉と耳と爪とアソコくらいのもんでさ…あとは全部作り物なんだ」

全身整形の事実を知るのは社長とメイク担当のみ。マネージャーの羽田ちゃんも何も知らされておらず、気づいていない。

マネージャーの羽田ちゃんを演じるのは寺島しのぶ。そして剛くんは羽田ちゃんの同棲している彼氏（ヒモ）役で登場します。

りりこに仕事のストレスを八つ当たりされたり、コキ使われたりして萎縮しているけど、心底りりこにのめり込んでいる羽田ちゃん。ついに彼氏まで寝とられてしまいますが、何も言えない…。

どの役を演じる時もいつも入り込む集中力が半端なく、まず髪型や容姿から完璧に役作りしていく剛くん、今回は短髪です。同年に黒髪ロン毛パーマで出演した作品があるかと思えば、その何ヶ月後かには金髪になっている（笑）

2人のラブシーン、美しいです。でもこの2人、プライベートでも仲が良いみたい。鶴瓶さんもトーク番組で沢尻はええ奴ゃねん！と言っていたので、友人としても意外と男前でサバサバしてるのかも？

りりこには恋人がいました。大企業の御曹司で彼との関係は順調かと思いきや…彼は突然大物政治家の娘と婚約。りりこは捨てられてしまいます。

事務所の後輩のこずえが現れ、りりこは自分が今いる立ち位置が彼女に取って替えられてしまうんじゃないかと焦ります。こずえの自然なままの美しさは、りりこがいくら望んでも手に入らないモノだから。

美しさを失ったら、みんな自分から離れて行ってしまう。もうこんな仕事したくない。子供のように泣きじゃくるりりこ。手術の後遺症や免疫抑制剤などの副作用、崩れていく容姿への不安、恋愛や仕事からのストレスで精神が崩壊していきます。

外見は完璧な虚構の美と、本当は醜い自分との間で彷徨い続けるりりこ。薬物で身を滅ぼしてしまった沢尻エリカ本人も、本当の自分の性質と演じている自分の狭間で揺れていたのかもしれませんね。新宿スワン公開の時期にラジオ出演していた剛くんが、沢尻エリカと生電話で会話していました。その時の素の話し方が気取らず素朴だったのがとても印象的でした。ヘルタースケルター撮影後に体調を崩してしまったのも、そんな彼女のアンバランスさゆえなのかなと思わずにはいられません。