武曲 MUKOKU(2017年)

画像1 武曲は藤沢周原作の小説を、熊切和嘉監督が映画化した作品。海が見える風光明媚な鎌倉が舞台で、ゆったりとした時間の中で物語は進みます。
画像2 剛くんは剣術に長けた父・矢田部将造(小林薫)からスパルタを受けて育つ青年・矢田部研吾を演じている。その厳しい稽古を見ていた亡き母は「辛いならやめてもいい」と逃げ場を与えるが、研吾は決してやめると言わない。腕は一流になったものの、幼い頃に親から英才教育を受けた人によくあるように、心から楽しめずプレッシャーに苦しむ感じ。愛されたい、認められたい気持ちと、殺したいくらい憎い気持ちは紙一重なのかもしれない。ある日研吾は父から本気でかかって来いと言われて、父の頭をかち割って植物状態で寝たきりにさせてしまう。
画像3 ヒップホップに心酔する北鎌倉学園高校2年の羽田融を演じるのは、村上虹郎。ずっとお母さんのUA似だと思っていたけれど、最近ふとした瞬間にお父さんの村上淳にそっくりな時があってドキッとします。村ジュンを見てもその影に虹郎が見える時もあり、さすが親子だなとw
画像4 羽田は剣道部員たちが道端でたむろする横を通りかかるときに竹刀に触れてしまい、因縁をつけられて小競り合いとなるが、それがきっかけで道場に出入りするようになる。竹刀を持たされて嫌々ながらも稽古をつけてもらうのだが、剣の師であり僧侶の光邑(柄本明)は、羽田の脚力の強さに類稀な才能を見出し、剣の道に誘うのだった。
画像5 光邑は殺人刀の使い手として地元で名を馳せた研吾の父・将造の師でもあった。光邑は羽田に興味を持ち、寺の掃除やちょっとした遣いを申し付けるようになる。ヒップホップ以外は興味が無さそうな羽田だが、まんざらでもなさげに言われた通りに動くところがなんか素直で可愛い笑。
画像6 光邑から研吾に手紙と木刀を渡すように言付かった羽田は、家まで届けに行く。しかし、玄関先に出てきたのはTシャツ1枚の下はパンツ一丁で、ラリったようないかにも頭の弱そうな女・カズノ(前田敦子)。管を巻いた研吾も外に出てきて、羽田を一喝するが、カズノを部屋の中へ連れ込んで昼間から酒とセックス三昧の自堕落な生活っぷりであった。キョトンとした羽田は、手紙と竹刀を置いて退散するw あっちゃんはいつまでも子供みたいな印象だったけど、案外こういうだらしないビッチな役ハマるといいかも?と思いました。
画像7 羽田は光邑に竹刀と道着を与えられ、道場に通って稽古に励むようになる。そして光邑は、研吾にも指導者としてやり直してみないかと打診していた。父のことで気を病み、自暴自棄になって酒浸りの研吾を剣の道に連れ戻し、救ってやりたかったのである。
画像8 手紙を受け取り、光邑の前に現れた研吾は今日も泥酔している。羽田と稽古を合わせるように言われて余裕をかましていた研吾だが、羽田から面を一本取られて憤慨する。屈辱感から怒鳴り散らし、周囲に絡んでは暴力的に振る舞う。そんな光邑は研吾を哀れに思いながらも喝を入れる。今のお前なぞ羽田に面を取られて当然。酒を断ち、甘えや慢心から身を改めよと諭すが、研吾は未だ目を覚まさない。
画像9 剣道から完全に身を引き、警備員の仕事をしながらふらふらと気ままなアル中生活を送っている研吾。しかし、病院で寝たきりの父を思うたびに自らを責め続け、立ち直ることができない。
画像10 研吾はしばしば行きつけの小料理屋「きさらぎ」を訪れる。遠い過去に父が女将の三津子(風吹ジュン)と仲睦まじく海岸を歩いているシーンが回想でよく出てくる。父は愛人だった三津子といる時はいつも、優しかった。厳しい手ほどきから逃げ出さなかったのは、認めてもらえば父の優しい笑顔がまた見れると思っていたからかもしれない。矢田部家の事情を全て知っている三津子は、いつも研吾の話にじっと耳を傾けている。甘えか救いを求めてか、研吾は三津子を襲おうしたところを三津子に制され、我に帰る。
画像11 自主練をするまでの向上心を見せた羽田は、自分よりはるかに強い研吾に勝負を挑む。父の呪縛から解き放たれい研吾は、羽田に父の顔を重ねて本気で殺る。研吾の刀は羽田の喉元を突き、羽田は泡を吹いて倒れた。羽田の回想シーンから、過去に被災して溺死寸前の経験があることが分かります。羽田が無謀な闘いを挑むのは、若者特有の危険や死に対する憧れや好奇心からかもしれませんが、このシーンは2人が過去のトラウマから解放され、未来に進むことの暗示かもしれません。豪雨の決闘シーンは幻想的で美しく、時空が歪んだような感覚に陥ります。
画像12 羽田は幸い助かったが、一時的に声を失い、喉元にはひどいアザができていた。羽田との真剣勝負で研吾が呪縛から解き放たれた瞬間、父は他界する。身から出た狂気が一歩間違えば羽田を殺していたかもしれなかったことに震え慄き、錯乱した研吾は今度こそ身を正そうと、光邑の元で生活を改め始める。そして父から自分への手紙を渡される。「息子がこの手紙を読むのは自分を倒した時であり、それこそ我が本望。」息子を光邑に託し、身を引いた父の知られざる深い愛と揺るがない信念に研吾は涙を流し、再び剣を手に生きていくことを決意する。
画像13 剛くんのこの背中、すごいです笑。元々時代物やるろうに剣心などにも出ていて、殺陣ができる役者さんではありましたが、撮影時期にはお酒も飲まず、肉体改造と剣道の練習で体脂肪率が7%になったというから驚き!役に入り込むために妥協は許さない、本当にストイックな人ですね。虹郎くんも引き締まってシュッとしています。まだまだこれから無限なる才能を秘めた若者、神秘的で綺麗な顔立ちは、羽田というキャラクターにしっかりハマっていたと思います。
画像14 ラストの2人が向き合ってパリッとした緊迫感の中で討ち合うシーンがめちゃくちゃカッコ良かったです。過去と決別して自分を取り戻した研吾と、ますます剣の道に精進する羽田の今後がどうなるのか。続編があったら見てみたいです。

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