5月とわたし(台湾旅行)

長らく一緒にいたキャノンの相棒が逝ってしまってから、新しいフィルムカメラはお迎えしていない。
シャッターが切れなくなってしまったから、まちの写真屋さんへ持って行っていつものおじさんに見てもらったが、また少しなおってからすぐにダメになったりを繰り返した。

まるでポンコツの、書いたりまたすぐに手が止まって書けなくなったりする自分のようだった。フィルムカメラの起死回生は果たしてあるのだろうか。

数年前にTwitterで、田舎に引っ越したい…と呟いたが、この5月はやっと念願叶っての緑の多い街に引っ越すことに成功した。
前のお気に入りの街や部屋とお別れするときはすごく寂しかったが、辛かった時の思い出も、楽しかった時の思い出もたくさんあったから、またいつか時が来たら戻って来れたら良いなとも思う。
がらんと片付いたフローリングを見てそんなふうに思った。
ずっとお世話になっていた大家さんとのお別れの日、いつものように電話をして大家さんは相変わらずニコニコした表情で、わざわざ忙しい中出てきてくれた。大家さんは町の議員さんもされていて、ちょうど選挙中とかぶってしまった。
引越し先の街で食べて美味しかったモナカを渡した。握手をして、6年間住んだお家にお別れをした。なんだかんだ10年近く、この街にいた。

昔一緒に暮らした恋人、勇気をだして1人飲みした時に声をかけてくれて仲良くしてくれたご夫婦、居酒屋のおじいちゃん、美味しいピカピカのシャリを握ってくれるお寿司屋のおじさん、カメラや写真を見てくれたカメラ屋さん、色んなお話をした喫茶店の女店主さん、写真展にも来てくださったお店のご夫婦…。もらった自転車で仕事へ通った通り道、以前の職場、夜な夜な話した年下の友人。
職場の店長も入れて3人で飲んだ。
夜に呼び出されて新人の悩み相談を聞かされたり。
先輩と語りながらコンビニまでお昼ご飯を買いにいった道。
新しい恋人との思い出も。
いつも遅くまで明るかったスーパー。
夜に陽気に歌いながら自転車で走っている人。
ふいにいろんな記憶が思い出された。
何より、ベランダから見える景色が大好きだったんだ。
何もないだだっぴろい敷地の向こう側に、以前の職場が見えた。

新しい部屋は、例えば今までの部屋をミニチュアにすると、片手に乗せられるくらいの広さだけれど、今度は両手で包めるくらいの広さになった。でも、前と少ししか賃料は変わらないから、内心はちょっとホッとしている。

山の方なので、自然豊かで風が涼しい。
坂道が急で必然的にしっかり歩く。
足が鍛えられる場所になった。
前の家は駅近5分、平坦な道をまっすぐ歩けばすぐに家に辿り着くことが出来たのに、今度は山道、坂道、階段を登ったり下ったり倍歩く。

特にここが良いと特別に意識しないで決めた土地だったけれど、中学に上がる前までに暮らしていた街と同じ市に引越したのも、不思議なご縁だった。
もう22年ぶりですね、なんて坂道を登りながら山や広い空や自然に心の中で語りかけてみたり、遠くに小さな富士山も見えたりで、暮らす前までは少し不安だったけれど、すぐにお気に入りの街になってしまった。

5月はなんだか慌ただしく、引越しの他にも初めての台湾旅行にも行ってきた。
ハワイぶりの家族旅行だった。

台湾で見つけたワンコ
狭い路地
路地裏を歩く傘をさした女性
じっと見つめてきた黒猫
映画ファン
ノスタルジー
雨の中
ぼやけた写真①
ぼやけた写真②
霧の中の九份
九份
九份からの景色

フィルムカメラの相棒を連れて行けなかったのは残念だけど、この旅ではiPhoneが活躍してくれた。

(思い出として数枚だけ載せておきます。)

私は路面店がたくさん並ぶ場所がすごく気に入った。路地を見つけるといつもわくわくするが、お気に入りの漫画『九龍ジェネリックロマンス』を前から読んでいたので、舞台は香港だが、なんとなくイメージでは台湾ぽい雰囲気もしていたので、あぁ九龍の世界みたい…なんて足取り軽く浮かれて歩いた。

街で傘を刺している女性を見つけただけで、これが台湾の日常の風景なんだ、なんて思ったり、どこか日本と似ているお店や、人。
夜のネオンが煌めいていること。
私の中の台湾像がちょっとずつできあがっていった。

3日間、あいにくのくもりや雨が多かったけれど、雨宿りしている黒猫、怯えてるわんこ、街を駆け抜ける喧騒バイク。
まるで千と千尋のような「九份」の世界観。
霧がかったノスタルジックな目の前に広がる風景すべて、何か異国の地なのに似たものを感じる。でもちがう。でもどこかが似ている。

車の中で地図を広げながら「十份もあるんだよ」という台湾旅行経験者の妹と母が口を揃えて言うので、「それじゃあ八份や七份もあるの?」とわたしが聞くと、ふたりとも首を傾げてさぁと言っていた。「昔はあったのかもしれないね。」

妹が予約してとってくれたホテルには、朝食が律儀についていて、わたしは毎朝朝食と、晩ご飯を欠かさず食べた後も、寝る前に食べる夜食の文化、宵夜(シャオイエ)のあたたかなスープ麺もしっかりすすった。
写真にはいつも食べてるところばかりで、いけない、いけないと思いつつ美味しいご飯は楽しい旅の醍醐味なのだから、しょうがない。

中でもぷるぷるのコラーゲンのついたお肉と、(台湾の家庭料理)朝たべるとろとろホカホカのお粥が美味しすぎた。
美味しい中華、小籠包が食べれる鼎泰豐(ディンタイフォン)にも連れて行ってもらったけれど、ホテルの朝のお粥が想像以上に美味しすぎた。
あと、雨の中並んで食べた牛肉麺、屋台で食べた豆腐花(トウファ)も美味しかった。豆腐花には白いキクラゲが入っていて、黒蜜寒天、甘いお団子入りの豆腐花にコリコリとしたキクラゲの食感が意外にも合っている。サラリとヘルシーな、お茶の時間だった。
 今回の旅行で食べられなかった臭豆腐はいつか挑戦してみたい台湾料理の一つになった。

ここまで書いて、食べてばかりの旅だったけれど、帰ったらすぐに引越しのダンボールを片付ける続きが待っているし、坂道で足を鍛えて、今までのぶんも痩せてやるんだなんて悠長に考えていたから、体重計に乗った後のメモリを見て罪悪感しか生まれなかった。

5月後半、真剣にダイエットしようと決めて、なるべく白いご飯を減らして野菜を多めに摂るようにした。
でもやっぱり台湾のお粥が忘れられなくて、今度日本にある台湾のお粥のお店へ行ってみたい。

まだ書きたいことはたくさんあるけれど、溢れているのでまた次回にもちこします。


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