教員の給食
給食の概略については、「教員の休憩」で語ったので、給食にまつわる四方山話を。
(1)給食のうまさについて
今時の給食、美味いです。
一食あたり300円でおつりが来る価格でこの内容、最強です。
都会では、ローソン100という最強コンビニがあって、「ウィンナー弁当(税込み216円)」なるこれまた最強の弁当が存在するらしいですが、それと価格面でも勝負できるほどだと思います。
ガッツリ系ではありませんが(小学校だからw)、必要にして十分な内容。
昔は、「マジ?これ食べるの?」とドン引きする内容やお味の給食に週に数回出会ったりしましたが、今はほぼありません。
「利益」なしで、「人件費、設備費、電気水道ガス費用」「運搬費」の全てが税金から出ているので、一食300円未満で食べられるわけで、その利益に教員も乗っかってるわけです。
こりゃ、「給食なんて短時間で栄養補給する戦場飯」「児童の生存本能(食欲)が解放される修羅場」とか、ブラックだ!宣言ありますが、こんなにコスパいいメシ食わせてもらっているのだから、文句は言えないな、と。
民間で働いてる同級生の話を聞くと、昼飯を外食にするとワンコイン(500円)では難しいとか、栄養的にも偏るとか。
弁当にすると、「奥様にかかる負担が半端ない(奥様孝行が大変になる)」「弁当も結構コストがかかる」とか。
仮に、給食一食300円、一ヶ月20食と仮定すると、年間の昼食(給食)費は300×20×12=72,000円。
毎日ワンコインで昼食にすると、500×20×12=120,000円。
その差、48,000円。
30年働くと、48,000×30=1,440,000円の差。
給食だけでこれだけ儲かっている(?)!!と、今計算してみて、改めて感動しました。
(2)栄養士について
栄養士(栄養教諭)によって、給食内容は大幅に変わります。
定番メニューであっても、味付けや素材が変わったり、おかずの組み合わせが変わったりします。
全体的に和食系の栄養士、洋食系の栄養士、中華大好きな栄養士などなど。
かなり昔、減塩大好きな栄養士に遭遇しました。
薄味。
かなりの薄味。
関西の人でも「薄くね?」と言われるのではないかというくらいの薄味。
職員室組(管理職、養教、事務、校務員)のテーブルには、ちゃっかり塩の瓶が!
お前らばっかり不公平だ!と愚痴りつつ、教室で児童達の「先生、これ、味ついていません!」という苦情をいなしつつ、薄味を味わう毎日でした。
その薄味になれてしまうと、家庭の食事が「味がっつり!美味い!」と感動できるようになりました。
奥様は「そう?」と喜んでいましたが、絶対的おいしさではなく、相対的おいしさであったことは、今でも秘密です。
ラーメンが圧巻で、生まれて初めて「小麦の味」を実感しました。
「ラーメンの麺って、こんな小麦の味がするんだ!」と、新たな発見に感動しました。
・・・「せめて出汁はしっかりと入れてね」「これ(スープ)、お湯としか感じられないけど」と心では泣きましたが。
さすがに薄味過ぎて苦情が殺到したらしく、その年の後半には「ちょっと薄め?」程度に味をつけてくれるようになりましたが。
あと、パイナップルの「皮付き」、これは低学年では修羅場でした。
皆さんは、「皮付き」パイナップル、食べたことありますか?
缶詰ではなく生の・・・という意味ではなく、皮がついた状態での生のパイナップルです。
私は、生のパイナップル大好きでよく母も奥様も食卓に出してくれていましたが、「皮付き」は生まれて初めてでした。
スイカとメロンは「皮付き」が「通常運転」だと思いますが、パイナップルは「皮なし」が通常運転だと思います、そうじゃないですか?
私は高学年の担任だったので、別に問題もなくその日の給食は終了しましたが、低学年では・・・。
保健室に大量の低学年児童が!
・・・私と同様、生まれて初めて「皮付き」のパイナップルを前にした低学年児童達、かなりの数の児童が「そのまま食べた」のです。
担任が気づいたときには、数名の口から血が・・・。
幸い、保健室に送り込まれた低学年児童達は、全員無事で、その後の健康被害(皮を飲み込んじゃった児童多数)もなかったのでよかったのですが。
低学年の担任は、「まさか皮ごと食べるなんて・・・。最悪の事態(その日起こった事態)を予測して、食べる前に指導すべきでした。」と反省していました。
まぁ、その通りなんですが、一般社会で「皮付きパイナップル」を食する機会がどれだけあるか、それをよく考慮して給食メニューを出してほしいと栄養士に要望しました(学校ぐるみでの要望)。
以後、二度と皮付きのパイナップルには出会っていません。
(3)自己満足
給食にもコンクールがあるようで、「見た目」「味」「栄養」「食べやすさ」「コスト」などを競う場があるそうです。
私が昔所属していた自治体で、そこの給食センターがコンクールの金賞を取ったそうで、校長先生が誇らしげに集会でお話しされました。
それからしばらくして、「コンクールで金賞を受賞したおかずが、実際に出る!」という告知がされました。
その当日、みんな目を疑いました(悪い方向で)。
金賞を受賞したおかずは、肉巻きのような感じのもので、中の具がきれいに配置され、確かに美味しそうに見えました。
が、目を疑ったのはそれ以外の内容。
通常、「主食(ごはん)」「汁」「主の副食(肉系)」「副の副食(野菜系)」「デザート、牛乳」なのですが、その日は「副の副食(野菜)」がキュウリ。
半分にぶった切っただけのキュウリ(ちなみに、塩もなし)。
「汁」は、少々のネギが浮くだけのコンソメスープ(これ絶対に固形コンソメを湯で溶いただけのやつ)。
さらに、デザートなし。
どうやら、コンクールで金賞受賞した「主の副食(肉系)」たる肉巻きが、相当な手間がかかるものらしく、他の調理に手を回せなかったとか。
肝心の肉巻きの方は、美味かったけど、他のおかずに悪影響が出ても仕方ないと思えるほどの美味さではなかったです。
給食センターの自己満足に文句は言いませんが、固形コンソメ溶かしただけの汁や、切っただけのキュウリって、悲しいですよ。
(4)嘔吐
長く小学校で担任をしていると、嘔吐場面に出会います。
私の場合は、幸いにして、嫌いなものを無理に食べようとした場合や、配膳で余った分をおかわりしようと食べるに焦りすぎた場合など、感染症や食中毒風味のケースはなく、面倒な事態には遭遇していません。
が、それは過去のお話で、今の時代は理由には関係なく、嘔吐があった場合は、次のようにルーチーンが決まっています。
1 嘔吐児童以外、全員教室外へ避難(感染症対策)、職員室組へ応援要請。養教が嘔吐児童を保健室へ誘導。
2 嘔吐対策キット(各教室配備)から防疫エプロン、防疫手袋、マスクを出して担任が装着。
3 嘔吐場所に消毒薬を散布、固形化薬剤散布、それらをビニール袋へ回収(二重で)。
4 消毒液で、嘔吐場所および飛び散った可能性のある場所を全て消毒。
5 他の児童の残った給食は、全て破棄(感染症原因の場合、すでに汚染されている可能性あり)。
6 管理職が他の児童に事情を説明し、一人一人の健康状態を確認し、その日の給食を諦めるよう説得。ただし、ほとんど給食を食べていない状況だったら、代替措置を給食センターに要請。
7 担任は、嘔吐児童宅へ連絡し、すぐに迎えに来るよう要請し、医者へ行くように強く依頼する(嘔吐児童の状態が悪い場合は、救急車対応)。
8 担任は、事の次第説明、対処報告、給食を食べきれなかったことのお詫びの臨時通信をすぐに作成し、その日のうちに全員に持って帰らせる。
9 養教は嘔吐児童の経過観察と所見をまとめ、担任は事の経緯をまとめ、教頭がこれらをまとめて校長に提出、校長が教育委員会へ報告。
・・はぁぁ。
感染症(O-157等)であった場合、児童の命が危険にさらされるので、上記のルーチンは必須です。
しかし、「感染症原因であった」場合でも、それが分かるのは嘔吐児童が医師の診断を受けた後のことなので、その報告がない限り、安心はできません。
嫌いなものを無理に食べようとした場合や、配膳で余った分をおかわりしようと食べるに焦りすぎた場合でも、全く同じルーチンになります。
担任が「大丈夫だと思いますよ。食べるのを焦りすぎたんですよ。」と説明したところで、それに意味はなく、上記手順が黙々と進むようになっています。
昨年度からはこれにコロナも加わり、嘔吐は「大事件」です。
クラスメイトの嘔吐によって、自身の食事中に嘔吐場面を間近で目撃し、加えてその日の給食が食べきれなかった児童達。
クラスメイト達を、そんな目に遭わせたと自分を責める嘔吐児童。
頼むからみんな、給食で嫌いなものを無理に食べようとしたり、お替わりのために焦って食べたり、体調が悪いのに無理に食べたりしないでくれ。
ちなみに私は「給食で食べられなければ、残せばいい」「無理に食べる必要はない」「お替わりできる量を残さない」派です。
配膳で全員に同じ量で全てを配り、その後「調整タイム」。
食べられないと思う分は食缶に戻し、もっと食べられる場合は追加し(よく喧嘩になって、私を楽しませてくれるw)、万が一食べられなかったら「残していいよ!?遠慮するな!!」。
まぁ、これでも嘔吐は出てしまいましたが。
(5)アレルギー
怖い。マジで怖いです、これ。
え?そんなものまで?と思うような食品でもアレルギーがあり、場合によっては命に関わるものなので、毎日真剣に警戒しています。
幸い私はエピペンが必要な児童がいる学校には勤務したことがないのですが、それでも恐ろしいです。
私の先輩の自治体で起きた事件をお話しします。
その先輩は教務主任なので、職員室で給食を食べていました。
教頭がふと「あれ?今日の給食、里芋が入っているの?え?」と、汁の中から里芋の一かけを箸でつまんで叫んだそうです、
その学校でも、アレルギーへの警戒度は高く、職員全員が「どの食品はだめ」と記憶していたそうです。
その学校には、里芋アレルギーの児童がいましたが、その日の給食では里芋は使われていないはず。
校長や養教も、教頭が汁からつまみ上げた物体を「里芋」と確認し、全員走った!
教頭は、里芋アレルギーのある児童がいる教室へ校内電話し「〜さんに給食を食べさせるな!」と指示、養教はその教室へダッシュ。
教頭は次に給食センターに連絡し、事の顛末を伝え、即刻の調査を指示。
校長は教育委員会へ第一報報告。
教務主任(先輩)は校内放送で、「汁をこれ以上食べないで」と告知(他に入っていないかの確認のため)。
まず、里芋アレルギーの児童は、すでに汁の半分を食べてしまっていた。
すぐに保健室へ連れて行き、養教が観察と体調確認。
担任が家庭へ連絡し、すぐに病院の手配を依頼。
結論。
児童は健康的に問題なし(よかった!)。
里芋混入の顛末は、その日の汁に入っていたジャガイモの調理の際、調理員の一人が調理室に余っていた里芋を見つけ、「もったいないから」と皮をむいて入れてしまった・・・というものだったそうです。
入れたのは1〜2個程度で、大量の汁の中で里芋成分は薄まったようで、アレルギーのある児童に健康被害は出なかったようです。
アレルギーのある児童の残り汁にも、里芋は入っていなかったそうです。
たまたま教頭が「里芋アレルギーのある児童がいる」と記憶していたので、汁に混入していた里芋に気づいたおかげで、大事に至らず、本当によかったと、私も自分のことのように喜びました。
明日の給食、何が食べられるかな?・・・あ、今、夏休み中だ(涙)
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