教員の放課後

中学校勤務の時は、ただひたすら「部活動」でした、放課後。
だから、中学校の放課後=部活動というのが中学校での経験でした。
私は小学校勤務の方が長いので、小学校での放課後について語ります。

私が現在所属している自治体での教員の勤務終了時刻は、16:45。
16:20が児童の最終下校なので、放課後の時間は25分間。

この25分間にすべき仕事は、主に次の5種類があります。
 1 会議
 2 担任学習業務:本日の反省と明日の準備(修正)
 3 担任生活業務:生徒指導、安全管理(ほとんどが家庭連絡)
 4 担当に伴う業務:対外対応、会議関係
 5 特別行事の手配

「1 会議」は通常2時間程度。
第1週は「部会会議(学習部会、生活部会、安全部会)」。
第2週は「教科会議(低学年部、中学年部、高学年部)」。
第3週は「企画会議(職員会のプレ会議)」。
第4週は「職員会議」。
毎週決まった曜日に会議があります。
この各種会議は、運がよければ2時間未満、運が悪ければ4時間過ぎても終わらず、管理職の「続きは日を改めましょう」。
過去、最長の会議は7時間。
「来年度の校内研究テーマと対象教科の選択」の部分で6時間以上。
とにかく腹が減って腹が減って・・・しか覚えていません(働けよ!!)。

「2 担任学習業務:本日の反省と明日の準備(修正)」は、会議の有無に関わらず「その日の分をやりきらなきゃ帰れません」。
「2」以降の「5」までが全て「帰れません」となります。
「国語は順調に進んでいるが、今日の授業ではまだ重要場面の意味が分かっていない子が多かった。明日の授業では、進むのではなく、別の角度から、今日の授業のやり直しにしよう。ここを疎かにすると、最終場面でお手上げになる子が出るから。」
「理科は、直列と並列の違いと意味が分かったのかどうか、不確かな子が多かった。明日の授業の初めに、今日の振り返りの問題量を増やして、確実に押さえてから、次へ進もう。」
「音楽では、あの子に大太鼓はまずかった。みんな、必死について行こうとしてたけど、あれはないわぁ。本人は大満足してるが、みんなから不安が噴出する前に、なんとか別パートへの転属を、本人から願い出るように仕向けなきゃ。孔明モードに遷移・・・」
などなど、単純に計画通り次の日に授業を進めるのではなく、一日の振り返りを元に、明日の授業を修正していきます。
車を運転しているとき、「あ、ちょっと左に寄りすぎかな?」とか、常に考えて微調整をする、そんな感じです。
毎週土日を使って、最低でも一週間分の授業準備はしてあるので、本来なら毎日の準備は不要なのですが、微調整が毎日出るために、準備に対しても微調整が必要になります。
準備していたプリントの問題数を増やしたり、追加のヒントカードを作ったり、補修用のプリントを作ったり。
毎日、最低でも1時間、この仕事に必要です。
たまに、全ての授業が幸運値100%補正で進み、事前準備の修正が必要ないという奇跡の週もありますが、当然、その逆で、水曜日あたりにその週の全ての準備を破棄、再作成という週もあります(2〜3時間/日コース)。

「3 担任生活業務:生徒指導、安全管理(ほとんどが家庭連絡連絡)」は、児童個々の対応となりますので、基本、家庭連絡タイムとなります。
「〜さん、ずっと忘れ物が続いています。おうちで何かあったのでしょうか。」
「〜さん、最近仲良しグループから離れて、休み時間に独りでいることがあります。本人に聞いても何も答えてもらえません。心配なのですが。」
「〜さん、今日の給食で○○が食べられませんでした。今後、残させるのか、食べさせるのか、ご家庭の判断を頂きたいのですが。」
連絡ノートで済む場合は電話連絡しませんが、こうしたちょっとしたことの連絡で、家庭との連携が深められ、信頼も築けます。
だから、重要な時間です。
場合によっては、この電話連絡のために、会議が別の日にずれることもあります(夜7時までが連絡タイムのリミットby社会常識)。

「4 担当に伴う業務:対外対応、会議関係」は、中堅以上に任命された「生徒指導主事、保健主事、体育主任、各部部長、教科長」などにもれなく付いてくるお仕事です。
市教委や県教委から発せられる各種通達を、全職員へ効率的に周知させることが各担当に求められます。
単に、「プリント、置いておきました♡」ではだめで、各種会議や打ち合わせで全員に注意を向けさせ、確実に伝えた!という状況を作ることが要求されます。
緊急性に応じて、臨時打ち合わせの時間を手配する必要もあり(めんどくさいルーチン+結構皆さんの怒りを買う)、「なんか自分、会社っぽい仕事してる」と、若い頃はわくわくしたりしましたが。
正直面倒で「通達、出過ぎw」とか心の底で思ってたりしますが、これが仕事なのでがんばってやります。
さらに、市教委や県教委から来る各種調査への回答。
もはや季節恒例行事と化しているこれらの調査、Excelの計算式や参照先にバグがあったり(しかもパスワードロックがかかってて修正不能だったり)、Excelの入力支援マクロが「入力阻害マクロ」になっていたりして、ストレスがピークに達したり、そんな調子で数時間かかってしまったりします。
しかも、発令元違いで、同じような時期に同じような調査が重なります。
加えて、各種会議での提案資料・・・運動会担当なら、「原案」「係運営案」「児童会運営案」「学級の取り組み案」「各種競技準備案」「外部関係案(調整、告知、参加要請、割り振り等)」「安全措置案」「コロナ対策案」など、各種必要資料の準備があります。

「5 特別行事の手配」は、社会見学へ行く、地域行事に参加するなどの場合です。
今の時代は、バスが必要な場合は年度当初に学校がまとめて予算申請し、あとは事務職員がやってくれますが、以前はバスの手配も担任の仕事でした。
見学先への打診、挨拶、打ち合わせ、学校への計画報告、家庭への周知などなど。
参加する地域行事の責任者(地元に人)に挨拶に行って、お願いして、打ち合わせて・・・。

これら以外にも仕事はありますが、以上の仕事が「日常的」な「放課後にすべき仕事」です。
16:20が最終下校なので、放課後の時間は25分間。
16:45を過ぎたら、以降は残業です。
しかし、25分間で「2時間以上の会議、1時間程度の振り返りと修正、1時間程度の担当業務などなど」をこなすのは、物理的に不可能です。
会議がない日でも、最低でも2時間程度の「職員室での業務」量があります。
60分×2時間-25分=95分間の残業、これが定常運転です。
「残業なくして、教員の仕事はこなせない」そうなっているのです。
教員には遺伝子レベルでそう刻み込まれているのです!!(ハァハァ興奮してすみません)

でも大丈夫です。
我々には残業手当があります。
1時間の残業につき○○円という支給の仕方ではなく、残業の有無にかかわらず、毎月決まった金額が支給されているのです!!
しかも、一生!!
おお、なんて素晴らしいんだ!!
3,000円以上、5,000円未満の、毎月支給される残業手当(あ、これ、時給じゃなくて、一ヶ月の支給総額です)。

昔、病院勤務の検査技師、中堅商社のサラリーマン、土建業の中間管理職の友人たちと久しぶりに会って話していたとき、不思議に思う言葉がありました。
「残業手当」という言葉です。
なにそれおいしいの?と不思議がって詳しく聞いていると、「3年間残業手当を貯めて、車買った」「早く家帰ると『残業手当稼いできて!』と嫁に叱られる」と、残業手当自慢が広がりました。
不思議そうな表情の私に友人達が「先生ってのも残業あるんだろう?儲かってるか?」と聞かれて私が答えた言葉が先ほどの「なにそれおいしいの?」。
毎日帰宅する平均時間が22時前後なのに、残業手当がない?
いえいえ、毎月3,000円以上、5,000円未満出ています!!フンス!と反撃したら、「よし、計算してみよう」と。
月20日勤務として、1日につき5時間残業、20×5=100時間残業。
残業手当が中間値の月4,000円とすると、4,000÷100=40。
「ほらね!教員にだって残業手当は出てるんだ!!1時間に40円、ちゃんと出てるんだ!!まいったか!」と叫んで、でも涙で前が見えなくて、みんなに謝られて(「なんか、すまん。」と)、励まされて(「そのうち、いいことあるさ!」と)、その場はみんながおごってくれました。

学校で残業やらないで、自宅へ持ち帰ってやっている人もいます(ベテラン勢)。
でも、学校でやろうが自宅でやろうが、結局仕事量は同じなわけで・・・皆労働量は同じ、平等です!!

「教員ごときが!分を弁えろ!!」と叱られるでしょうが、でもそこを曲げてお願いしたいことがあります。
「せめて、1時間100円は残業手当がほしいです。1時間100円が無理なら、1時間90円でもいいです。1時間40円は、悲しすぎます。」
・・・やっぱ「ばかやろう!教員に残業手当など、1時間40円で十分だ!!」と叱られるのでしょうね。
ごめんなさい、調子こきました。

あ、今日は夏休みだから、定時(16:45)に学校を出られました。
でも夕食後、自室で10月分の教材研究やってます(今夜は5時間程度の予定)。
夏休みでも残業手当が出てるのですから、1時間40円分は働かないと。

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